6, 王太子妃になった長女ともうすぐ嫁ぐ予定の次女の証言
【王太子に嫁いだ長女の証言】
私は父が連れて来た若い女の子が母親になるなんて信じられなかったのです。
しかも!とびっきり可愛くって、すっごく賢いのよ?どうしてこんなおじいさんになりかけの父に嫁ぐのか全くもって分からなかったわ。
兄たちと違ってすぐには懐けなかったの。基本的に話さないようにしていたわ。しつこくミレイユは話しかけてきたけれど。
そしてある日、私はミレイユに言っちゃったの。
『あなたを一生母とは認めない』って。ミレイユはそれでも困ったように微笑んでいたわ。でもねその晩の夜更け、流石に謝ろうとミレイユの部屋に行ったらすすり泣く声が聞こえたの。
扉の隙間から見たのは声を押し殺して本を読むふりをしながら懸命に泣くまいとする彼女の姿!
細い肩が揺れるのを見て、私はどうしようもなく切なくなった。それが私の初恋なのよ。
ミレイユは私にはいろいろなことを相談してくれるわ。兄たちには出来ない話だって、ね。一番頼りにされていると思うと、たまらないの。
ミレイユの為に王太子の妃になり、政務も精力的に関わっているわ。ミレイユの悩みは全部解決できるようにね。夫ともまあまあ上手くやっているわね。里帰りが多すぎるとは言うけれどそんな理由で外交に長けた私を離縁するほど愚かではないと思うわ。
私に抱き締められて慰められているミレイユは最高に可愛いわ。女に生まれてよかった!って心から思うもの。......嗚呼でも、私が男性だったらミレイユとの子供が欲しかった。それだけが残念ね。
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【婚姻を控えた末娘の次女の証言】
私の実の母は生まれた日に死んだんだって。だから私の母は彼女だけなの。父親が誰かなんてどうでもいいわ。とにかく私はあの人に育てられたのだから。
幼い頃から私は甘え上手だって姉様にも兄様にも可愛がられた。けれどそれは本当は全部全部、あの人の目を引きたかったから。私だけのものにはならないって知って泣いたこともあった。
その度、あの人は『どうしたの、いらっしゃい可愛い可愛い私の子』ってあの大きな胸で抱きしめてくれた。
私は20歳になった今でもあの人と一緒にお風呂に入るわ。
『もう大きいのに甘えん坊さんね』っていうけど、許してくれる。あの人の真っ白でつやつやで、泡でぬるっとした肌の色んな所を撫でると時々、我慢しきれずに素敵な声を聞かせてくれるわ。.....あんな声、兄様も姉様もまだ知らないでしょうね?
私は知っているのよ。
子供が全員巣立つ予定のあの人に求婚する男がいかに多いか!
あの美しくまだ誰も知らない柔らかな身体を持て余して、夜更けにひとりで部屋で慰めていることも!
出来るなら手伝って差し上げたいくらい拙い様子のソレを、私たち家族以外がするなんて考えるだけで気色悪いしムカつくわ。
だからね、私はあの人のために心に決めたの。兄たちをそそのかし、誰かに彼女を娶らせて守らせるって。やがて私は離縁して舞い戻り、再びあの人のそばで暮らすのよ。
この執着と愛の鳥籠を守るのは私よ。
『母上』とじゃなくて『ミレイユ』と私たちは幸せになるの。
大丈夫。私がこの屋敷を出る前に必ず兄姉を焚きつけてあげるからね、ミレイユ。




