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5, 四男、五男、六男の証言

【中央祭殿に仕える聖職者の四男の証言】

 私の父は前公爵ではありません。それは皆が知っていることです。兄弟と髪色も違いますし。


だから教会へ入った。


 そう、思われています。でも、本当は違うのです。


 青年の頃、家族で出かけだ領地の保養地、そこの泉で彼女が水浴びをしていました。


 濡れた布の下に隠れているはずの形に、目が吸い寄せられて、嗚呼罪深い私をお許し下さい!

 

 それからずっと祈りました。祈れば消えると思ったのに、かえってはっきり残ってしまったので神学校に入って、いつの間にかこのような役職に。

 罪深い我が身を、無邪気に彼女は抱きしめます。肉欲から生まれた身、そして自らも罪深き身を、抱きしめるのが母上なのです。母のためにずっと口を閉ざしてきました。母と呼んできました。


 それなのにあの、艶めかしく濡れた肢体が、今でも夢にまで出て思い出してしまうのです。


【商人で既婚者の五男の証言】

 下の弟と一緒に店を出したのはまだ若い頃だった。


 今や、この国一番の婦人服の専門商社になっているのは、母上のおかげだろうな。彼女が纏ってくれたドレスは、色を変えて飛ぶように売れる。


 妻もよくやってくれている。隣国の商家からやってきて、俺に求婚したのはビジネスパートナーとして有望だと思ってくれたからだろう。

 最初っから俺が誰を見ているかなんてお見通しさ……自分が誰を愛しているのかなんて、誤魔化しようがない。妻ですら母上が好きなんだから困ったもんだよな。


 いつの日か、黒以外の母上のドレスを作りたいって俺たちはずっと願っているんだよ。



【画家兼デザイナーの六男の証言】


 僕は一個上の兄さんとは父親が違うんだよ。年子なのにさ。父上もどうかしてるよな。

 それで、思春期は荒れたもんだったよ。母上にもたくさん迷惑かけた。

 

 でもある日怪我をして帰った僕を、母上は泣きながら引っぱたいた。

 いや、びっくりしたよ。母上ってば非力だから痛くはなかったけどね。


 『私だって血のつながりはないのだから、あなたも家族よ』って泣きながらと彼女に叱られて、長く胸に刺さっていたものが抜けた。血の話は僕にとってはそれで終わりだった。


 僕はデザイナーとして服を描き、画家として女を描く。でもどうしても彼女に似合う服しか描けないし、彼女に似てしまうんだよ。似せたくないと思うときほど、似てしまう。


 画家としてもデザイナーとしても成功したさ。だけど、ずっと結婚はできないだろうなって思う。結婚してる兄さんたちみたいに器用には出来そうにないからね。



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