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4,騎士の次男、文官の三男の証言

【騎士であり既婚者の次男の証言】

 実は昔はひ弱で、小さかったんだ。同年代にはもちろんいじめられてさ。

 しかも泣き虫だった俺に、ミレイユはいつも言っていた。


『公爵様に一番そっくりだもの、鍛えれば立派になれるわ』


 血の味がしても稽古をやめなかったのは、彼女に胸を張りたかったからだよ。

 兄上へのコンプレックスも騎士団に入ってからは薄れた。

 でも俺の願いは騎士になっても変わらない。勲章を貰った時に褒められたい相手は、妻ではなくミレイユだ。正直、夫婦仲はうまくない。口論のあとは決まって里帰りをする。


 石段を上がりきったところでミレイユが玄関先から駆けてきて、小さかった頃と同じように抱き締めてくれるんだ。


『おかえり』


と鈴の鳴る声で迎えられると緊張していた全身の力が抜ける。誰のために強くなったのかいやでも自覚するさ。兄上に嵌められて結婚したけど、未だにあきらめきれない。



【王城の文官で既婚者の三男の証言】

 『貴方は公爵様に似て賢いのね』と彼女はよく言っていた。

 

 私は元々兄たちに比べ引っ込み思案で、よくからかわれたものだった。母上だけが私と対等に議論をしてくれた。だから、その言葉に従い文官になった。

 

 充実した気持ちで王城から帰路につくとき、いつも最初に思い出すのは彼女の横顔だ。

 

 落ち着いた黒い瞳、口元のほくろ、そして....。


 妻との生活は静かで、互いに敬意もある。それでも妻の所作を、無意識に彼女と比べてしまう。比べること自体が失礼だとわかっているのに。最低なことなのだが、やめられない。


 青年の頃は領地運営を手伝っていた。その頃、彼女がたまにに疲れを隠しきれない夜、私の肩でうたた寝をしていた。あの温もりがどうしても忘れられない....。

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