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恋をした。突然の出来事だった。もはや何を投げだしてもいいと思ったし、払えるものは何でも払って今いたいとオレは思った。彼女の愛が買えるのならいくらでも払う。もし金でそれが買えるのなら……と、オレはマジ心から思った。身だしなみを整えるために金を使い。贈り物を送るために大枚をはたいた。金はいくらでも消えていった。オレには、それが心地よかった。一歩一歩、自分は彼女の心に近づいているのだという気がしていた。どれだけ陰口をたたかれようと、どれだけ贈り物を突っ返されようと、オレは平気だった。やがて金だけでは何もかもが足りないということにオレは気づいた。何もかも捧げなくてはならないのだ。けれど彼女はそれを欲してはいなかったし、そんなことをされることを望んでもいなかった。オレがそうしたいのだ。オレはこうして独りよがり、相手のことを見ず、独断で、自分の良かれと思うことばかりを推し進めていった。