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7.銀と真珠の冠

 丸い宿り木の枝の中は案外と広く、細かなすき間から差し込む光で金の枝そのものが鈍く光り明るかった。

 ベル=エスターは黒い瞳をわずかに伏せて、穏やかに語るサリオンの話を聞いていた。その手はまるで無意識のように、ルクレチアの明るい煉瓦色の背を撫で続けていた。


「──これが、その真珠です」


 サリオンが華奢な白い箱を開くと、ベル=エスターは大粒の真珠をひとつ取り出して、差し込む陽光にかざした。


「蔓草で飾ろうとでも言うの? (わたくし)に作れるのは、花冠だけよ」


 言って、真珠をそっと箱に戻す。


「銀の冠を作ろうと思うんです。ヴァニーは以前から、私の髪を気に入っていたので」

「髪ですって!?」


 ベル=エスターに負けないくらい、アンリも驚いた。


「ひどいわ、サリオン! あなたの髪を(わたくし)が切ったと知ったら、ほかの姫たち、向こう百年は私に恨み言を言って過ごすわ」

「銀って、サリオンの髪の毛のことだったの……?」


 恨みがましい目を向けるベル=エスターと、目を見開いて驚くアンリとを見比べて、サリオンは小さくため息をついた。


「では、ベル=エスター、ヴァニーを呼び出してくださいますか?」


 するとベル=エスターは、怒ったように唇を噛んだ。


「意地悪ね。そんなこと、できるわけないって知っているくせに」


 言って、膝の上のルクレチアに目を落とす。ルクレチアは低く喉を鳴らしながら、目を開けようともしなかった。


「ヴァニーを私の前に呼び出すには、よほど彼の気を惹くものが必要なんです」

「分かっています!」


 言いざま、ベル=エスターは勢いよく立ち上がった。まるで予想していたように、間際でルクレチアは膝から飛び下りていた。


「──いいわ。クレア=ムーシュのためですもの。五十年分くらいは、クレア=ムーシュが恨み言を引き受けてくれるでしょうし」


 そのまま、ベル=エスターが出口に向かって歩き出したので、アンリは慌てて道を開けた。サリオンも立ち上がる。

 出口のすぐそばにいたアンリの脇を通るとき、ふとベル=エスターは立ち止まった。


「大丈夫よ、エルデンのアンリ。妹君はきっと助かるわ」


 咄嗟に応えられずにいるアンリに微笑んで、ベル=エスターは緑の髪とガウンの裾とを翻して出て行った。すぐ後ろにサリオンが続く。


「ほら、果報者の王子様。行きますよ」


 尻尾をぴんと立てたルクレチアに急かされて、ようやくアンリは立ち上がった。


 ベル=エスターは、まるでリスか何かのように、瞬く間に巨木を滑り下りていった。身長の数倍はありそうな緑の髪が、たなびくベールのようにあとを追って流れ落ちていく。

 枝の間からベル=エスターが姿を見せると、集まっていた人や動物たちがざわめいた。やっと追いついたアンリがよく見ると、中には、人とも動物とも判断できないような姿の者も多くいるようだった。


「サリをここへ」


 地面の一番近くに張り出している太い枝に、ベル=エスターは腰掛けた。緑の髪は地面にまで流れ落ちて、草地でゆるく渦を巻いている。赤い髪の少年が、頷いて駆けていった。


 サリオンはベル=エスターの隣に腰掛けて、三角帽子を脱ぐと、背後で編んだ髪をほどき始めた。するすると解けていく髪に癖はなく、明るい日差しを浴びて、それは銀糸の束のように輝いていた。

 そこここから、憧れにも似たため息が聞こえる。


「ヴァニーでなくとも焦がれるわ……」


 ベル=エスターも、流れるひと房を手に取ってため息をついた。


「姫様──サリでございます」

「上がってきて、サリ」


 躊躇うような細い声を見下ろして、アンリは息を飲んだ。

 不安そうな顔をした小柄な娘が、巨木の根元で見上げていた。細かく波打つ蜂蜜色の髪に縁どられた肌は艶やかな褐色で──腰から下は茶色の和毛(にこげ)に覆われて、蹄のある華奢な脚に花を編んだ飾りを付けていた。

 半獣の娘サリは蹄で地面を蹴り、慣れた様子で草に覆われた幹を駆け登ると、アンリたちの座っている枝の付け根の窪みで跪いた。


「こちらへ──あなたに、お願いがあるのよ」


 アンリが立ち上がって場所を空けると、サリは躊躇いながら近づき、サリオンの側に跪いた。


「クレア=ムーシュのことは、もう知っているわね?」


 戸惑った表情で頷くサリに、ベル=エスターは手短に説明をした。


「──だから、この真珠をサリオンの髪の毛で編み込んで、冠を作って欲しいの」


 少し離れて見つめるアンリにも、サリの顔色が変わるのがはっきりと分かった。


「できません……!」


 青ざめて、それは悲鳴に近かった。


「ああ──お願いです、姫様! そんなことを、私にお命じにならないでください……! 銀のサリオンの、その銀の髪を──私にはできません……!」

「あなたの指で編めないものはないわ、サリ。(わたくし)の冠を編むあなた以上の上手が、いると思って?」


 しかし、サリは激しく首を振り、涙を浮かべて黒い枝に額を押し付けた。蜂蜜色の髪が乱れて広がる。


「私からもお願いです、サリ──クレア=ムーシュと、エルデンの少女のために」


 サリオンが言って褐色の手に触れると、サリはようやく顔を上げたが、その頬は濡れていた。サリオンの緑色の瞳を見つめ、振り返ってアンリを見つめ──濡れた瞳は再び黒い樹皮に落ちた。


「……わかりました」

「ありがとう」


 サリオンが微笑んでそっと褐色の頬から涙を拭うと、閉じた瞳から、もうひと筋だけ涙がこぼれた。


 サリはまず骨の櫛を取り出して、サリオンの解いた髪を丹念に()いた。

 ほどいた銀髪は踵に届くほど長く、ずっと編んでいたのに癖ひとつない。さらさらと音がしそうなほどまっすぐに整えて、それからサリは、意を決したように銀のナイフを握りしめた。

 きらめく刃が輝く銀髪に触れた瞬間、辺りから、押し殺した悲鳴とため息が上がった。

 サリの手はもはや躊躇うことなく、銀の糸を切っていく。

 ため息はかすかな泣き声となり、最後のひと房が切り離されたときには、まるで葬列のように泣き声は高まって、(こら)きれない嗚咽までが聞こえていた。


「大げさなんですよ──髪なんていくらでも伸びるっていうのに」


 アンリの傍らで、ルクレチアが呆れたように呟く。

 腰の辺りで切りそろえられた髪を、サリオンが一つにまとめようとすると、ベル=エスターがその手に触れて制した。


「編んではだめよ、サリオン」


 陽に灼けた華奢な手が、銀のひと房に触れて名残惜しそうに弄ぶ。

 アンリはじっと、サリの褐色の指先を見つめていた。

 束ねた銀糸からひと房を取り、細かく編んでは、大粒の真珠をその中に編み込んでいく。ごく細い三つ編みが彫刻のように形を持ち、髪が継ぎ足されて、やがて美しい円い冠になるまでに、それほどの時間はかからなかった。

 サリオンが微笑む。


「見事ですね」

「自慢の娘ですもの」


 労うように微笑んで、ベル=エスターは華奢な作りの冠を受け取った。いつの間にか静まり返っていた木の下のあちこちから、ため息が漏れる。


 それは銀の冠だった。

 動きを持たせた細い三つ編みが複雑な透かし模様を作り、散りばめられた五つの真珠は、きらめく銀を引き立てる飾りに過ぎなかった。


「きれい……」


 アンリはただ呆然と冠を見つめていた。


「何かを編ませて、サリの右に出る者なんていませんからね」


 ルクレチアの声は、少し誇らしげだった。

 ベル=エスターは、ちょっとした悪戯を企む少女のように笑った。


「さあ、ヴァニーに見せびらかすとしましょうか」




 巨木の下に、年若い少年少女が集められた。羽の塔から呼ばれた翼のある者や、サリのような半獣の者など姿は様々で、皆、白か白に近い金色の髪をしている。

 ベル=エスターは、腰掛けていた枝から身軽に飛び下りた。緑の髪が滝のようにあとを追って滑り落ちる。


「あなたたちには、これから夢の世界へ行ってもらいます」


 小柄なベル=エスターの澄んだ声は、楽士の奏でる笛の()のようによく通った。

 枝の上で、サリオンは小さな鉢の中に乾いた何かの木片を入れて、細長い石でそれを砕き始めていた。


「何してるの?」

「あの子たちに眠ってもらうんですよ」


 ほのかに甘い香りがアンリの鼻をくすぐる。


「この冠をご覧なさい」


 ベル=エスターは輝く銀の冠を両手で掲げて、少年少女たちの間をゆっくりと歩いている。

 サリオンは火種を取り出して、砕いた木片に火を移した。ほどもなく、眠気を誘う甘い香りが煙に乗って漂い始める。淡い煙は風もないのにまっすぐに流れていき、居並ぶ少年少女たちを包んで漂った。


「サリオンの銀とシィラ=ドリーの真珠で、ベル=エスターの花冠を編むサリが編み上げた冠です。イストにもエルデンにも、これほど美しい冠はありますまい。この美しさを、さあ胸に刻みつけて──お眠りなさい。さあ、愛しい子供たち──この冠をご覧なさい。そしてお眠りなさい……」


 一人、またひとりと、子供たちは芝草の上に伏していく。

 最後のひとりがその身を横たえると、ベル=エスターは足早に戻ってきた。根方に座り込んでいたキャンベルローズの象牙色の鼻先を撫で、軽く唇づける。


「何が起こるの?」


 音を立ててはいけない気がして、アンリはそっと囁いた。サリオンが膝に置いた鉢からは、まだ薄く煙が漂っている。


「夢を見てもらっています。夢の中であの子たちは口々に、銀と真珠の冠について語るでしょう。これだけの妖精たちがいっせいに話せば、どんな遊びに熱中しているヴァニーでも気づくはずです」

「ふうん……」

「クレア=ムーシュと似た髪色の子ばかり集めたから、それでなくともヴァニーは気になるはずよ」


 ベル=エスターが上がってきて、サリオンのすぐ隣に腰を下ろした。誰もが成り行きを見守って、辺りは静まり返っている。

 アンリも期待して眠る子供たちを見つめていたが、しばらく待っても、何も起こる気配はなかった。


「あなたはどうだか知りませんけどね、サリオン」


 急に煉瓦色のルクレチアが、アンリの膝を踏み越えてサリオンに近づいた。


「あたしはお腹がすきましたよ。あの馬たちみたいに、そこいらの草を食べてるってわけにはいかないんですから」


 途端にキャンベルローズが顔を上げたが、こちらを睨んだだけで何も言わなかった。その傍らでメイアッシュは、不思議そうに首を傾げて草を()んでいる。

 ベル=エスターが運ばせた果物と飲み物を前にしてようやく、アンリも自分がひどく空腹だったことに気がついた。そういえば、イストへ来てから何も口にしていない。


 蔓を編んだ籠いっぱいに盛られた果物の半分以上は、アンリには見たこともないものだったが、どれも瑞々しく色鮮やかで、爽やかな香りが空腹を刺激する。

 ルクレチアはさっそく、小さな赤い果実を器用に爪で取り出して食べ始めた。サリオン越しに身を乗り出したベル=エスターも、黄色い実のブドウのような房をひとつ手に取り、房のまま齧っている。

 梨に似た緑色の果実を手に取ってみたものの、アンリは少し躊躇った。


「これ──僕、食べても大丈夫かな……?」


 乳母の語る怖い昔話では、どこか違う世界へ迷いこんだ時にそこの食べ物を口にしてしまうと、二度と戻って来られないか、戻れても大きな代償を払うことになっていた。

 サリオンとルクレチアには故郷かもしれないが、アンリにとってイストは、明らかに『違う世界』だ。たとえクララを助けられたとしても、自分がエルデンに帰れなくなってしまっては──


 ふいにサリオンの手が伸びて、籠から綺麗なオレンジに似た果実を取った。


「夕べと今朝、あなたも食べた干し果物は、これですよ」

「──え!?」


 呆然と、サリオンの手のオレンジ色と自分の手の中の緑色とを見比べ、途方に暮れてサリオンを見上げる。サリオンは小さく微笑っていた。その隣で、ベル=エスターは明らかに笑っている。


「もしもそれを食べて帰れなくなってしまったら、(わたくし)がいばらで可愛いお城を建ててさしあげるわ、王子様」


 黒い瞳がいたずらっぽくきらめいている。からかわれているのだろうとは思ったものの、まだ迷っていると、ルクレチアが琥珀色の目を細めてアンリを見上げた。


「あなた、呪われているんですから。嫌でも帰れるに決まってるじゃありませんか」

「……それもそうだね」


 ルクレチアの呆れたような高い声を聞くと、なんだか悩むのが馬鹿らしくなってきて、思い切って梨のような果実を齧ってみると──びっくりするほど美味しかった。




「あの、姫様……」


 夢中で果実を頬張っていると、蜂蜜色の髪のサリが枝の下に来て、躊躇いがちに声をかけた。


「アーデルとユーンが、来ているのですが……」


 途端に顔を曇らせたのは、サリオンだった。アンリの隣でルクレチアが、声を殺して笑う。


「仕方がないわ、サリオン。遅かれ早かれ彼らは来たはずだもの──通して、サリ」


 ベル=エスターの言葉に、サリは頷いて(きびす)を返した。


「法螺貝が鳴らなければ、来なかったはずですよ」

「あら、そう? まあ──気づかなかったわ」


 少しだけ恨みがましい口調でサリオンは言ったが、ベル=エスターは悪びれたふうもなく微笑んだ。

 わけが分からないアンリはルクレチアを見下ろしてみたが、ルクレチアは食後の毛づくろいに余念がない。


「まあ、見ていてごらんなさい」


 投げやりにそう言ったきり、顔を上げようともしない。

 仕方なく、また一つ熟れた果実を齧っていると、再びサリが駆けてきた。大事そうに腕に抱えていたものを、草で柔らかい幹の窪みにそっと置く。


「──ちょっと! 危ないじゃないですか!」


 指の間から滑り落ちた果実が、ルクレチアの髭の先をかすめたらしかったが、アンリはその甲高い苦情をろくに聞いていなかった。

 窪みにできた小さな草地が彼ら二人にはよほど深いらしく、ひどく苦心してよじ登ってくる──その身長は、アンリの膝ほどもなかった。


 ようやく枝までたどり着くと、二人はまずは(うやうや)しくベル=エスターに(こうべ)を垂れた。


「ベル=エスター ──我らが姫君」

「ご苦労でした」


 ベル=エスターが鷹揚に頷いて応えると、二人はすぐにサリオンに駆け寄った。


「我らが王サリオンよ──お久しゅうございます」


 灰色の髭を長く垂らした年配らしい男が、恭しく言う。サリオンは大きくため息をついた。


「アーデル──何度も言うようですが、私はあなたたちの王ではありませんよ」

「いや、サリオン殿。貴殿は確かにお約束くださった。貴殿こそ、我らが侏儒(しゅじゅ)の王です」


 短いあご髭の若者が、甲高い声を張り上げる。

 ルクレチアは肩を震わせて笑い声を殺していた。


「約束は確かにしましたが──条件が揃っていない以上、私はあなたたちの王となるわけにはいきません」

「しかし、サリオン殿──」


 灰色の髪のアーデルは、嘆かわしげに眉をひそめてみせた。


「何度掛け合っても、お許しくださるのは我らが姫ベル=エスターのみ──先日も歎願に行った長老が、ミステラ=リリアの不興を買って大火傷を負いました」

「お願いです、サリオン殿──我らには、王が必要なのです。どうか……!」


 いくらか背の高いユーンも歎願するように跪いたが、サリオンはため息をついて首を振った。


「私の返事は同じです。五人の姫全員のお許しがなくては、このイストで何かの王となることなどできません」

「ですが、サリオン殿──ベル=エスター、姫様からもお願いしてはくださいませんか。王を持たず、互いにいがみ合った我ら侏儒は、サリオン殿の力なくしては、いつまた戦を始めるとも分かりません……!」


 灰色のアーデルは、硬い石のようなサリオンの瞳から、微笑んで成り行きを眺めているベル=エスターへと、懇願する視線を移した。


「ですから、(わたくし)は構わないと言ったでしょう? あとはほかの姫が決めることよ」

「サリオン殿……」


 わずかな望みにすがりつくように見上げる二人を、サリオンは変わらない硬い色の瞳で見つめている。


「ああ、我ら侏儒四百年の願いが──こうして何度足を運んでも、聞き入れられぬとは……」


 うずくまるようにして嘆いてみせる。


「何度来られても、何百年経とうとも、私の返事(こたえ)は変わりません。すべての姫がお許しくださったならその時は、喜んで王にもなりましょう」


 大げさに嘆いても効果がないことに気づいたのか、二人は渋々の様子で顔を上げた。ベル=エスターが澄まして微笑む。


「用が済んだら下がっておいでなさい、アーデル、ユーン──もうじきヴァニーが来るのよ」


 その名を聞いた途端、二人の顔色がさっと変わった。


「童子ヴァニーですと!?」


 慌てて立ち上がると、樹皮や窪みにつまずきながら、転がるように駆け下りていく。


「どうしたの……?」

「ヴァニーは悪戯好きな子供ですからね──特に小さな侏儒には、容赦がないのよ」


 ベル=エスターが答えてくれた。


「良かったですね、小人が見られて。人の肉が好きかどうかも、せっかくだから訊いておいたらいかがです?」


 明らかに笑いを噛み殺しているルクレチアの言葉を、アンリは無視することに決めた。


「サリオン、王様だったの?」

「違いますよ。聞いていたでしょう?」

「うん、でも……」

「永遠に果たされない約束なのよ」


 ベル=エスターは穏やかに微笑んだ。


「幾つもの部族に分かれて争ってばかりいた侏儒たちが、サリオンを王に迎えたい一心で、ようやくひとつに力を合わせたの。サリオンのおかげで、彼らは平和に暮らせるようになったのよ」

「じゃあ、わざと王様にならないように……?」


 アンリは感動すら覚えて、陽に灼けた美しい顔を見つめた。すると途端に、ベル=エスターは声をあげて笑った。


「わざとする必要なんてないわ。サリオンが王になって侏儒だけのものになるなんて、ほかの姫たちが許すはずないもの」

「だから許したんですか、ベル=エスター? あなただけは、決して許さない約束だったのに」


 サリオンが眉をひそめると、ベル=エスターは無邪気そうに小首を傾げてみせた。


「少しくらい希望を持たせないと、諦めてしまうでしょう? 大丈夫よ。少なくともミステラ=リリアは、脅したって許しはしないわ。あなたに夢中なんですもの」


 サリオンは、ため息をついたきり答えなかった。

 見下ろすと、彼らにとてはひどく丈高い草になかば埋もれながら、アーデルとユーンはじっとサリオンを見上げていた。


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