4月2日
この物語は約1年前に黄緑楓が書いた詩 「4月21日」 https://ncode.syosetu.com/n5704ie/
に、しろかえでが言葉を足したものです。
電車に乗り込む前、左手にうっちゃっていたヘアゴムで髪を結わえた。
ホームに滑り込んで来た電車の窓を頼りない鏡にして、一瞬ポニテの具合を確かめる。
今日、あの子はいるのだろうか?
ボクの行く手を阻んでいたホームドアが開き、にび色アルミの車体に足を踏み入れる。
人々が起こす騒めきと電車を送り出すアナウンスとメロディ、
緩やかに電車が動き出すと
ボクは
名前を知らない“顔見知り”の中にあの子の姿を探す。
昨日まで居た筈の人が
突然いなくなるのはさもない事。
そうやってボクも
いつかは消えてゆくのだから
そんな風に
大した事が起こる訳はないと
なんだか高を括ってるけど
あの子が居ないのが気掛かり!
もしかして……
あり得ないけど!!
でも
もしかして……
あの子が
ホームドアや踏切から逃れて
あのハンス・ギーベンラートみたいに
線路にピノ・ノワールの様な血痕を残してしまったのでは?
と考えてしまって
泣きそうになる。
そんな酷い空想を振り切る為に、次の駅で電車を抜け出したら
隣の車両にあの子の姿を見つけて
ボクは慌てて舞い戻る。
偏差値60オーバーの進学校のリボンを着けているあの子は、
私とは違うサラサラ重い黒髪だけど、まるで刃物で切り付けられた様に何本か白髪が混じっている。
きっとあの子は
置いて行かれないように隣の誰かと肘で押し合い、前ばかり見ているから
この“傷跡”の事も
誰からも教えられてはいないのだろう。
でもこんな事は……あの子に聞いた事もないし 聞けもしない。
なんかずいぶん偉そうなんだけど
そう考えるボクは……
ひょっとしてひょっとして今このマスカラのこちら側から
少しずつ少しずつキミに歩み寄ってみたい?!
ヤバいヤツと
キミは思うかな?
でも今!
ボクたちは お互いを見てる。
キミの白い刃跡はボクが染めるよ。
キミがずっと前に置き去りにした色に代えて
例え何回置き去りにして行っても
何回色褪せてしまっても
キミにとって大事な物をいつかその手にするまで……
ひょっとしてひょっとして、手の持ったその教科書の向こう側から
少しずつ少しずつボクに歩み寄ってくれるの?!
この大勢の中で、ボクにとってはたったひとりだけの
かけがえのないキミの声さえ
聞けてないボクの事、
キミどう思ってるのかしら?
ボクは自分の襟元へ目を伏せて
キラキラネイルで
キミには不釣り合いな学校のリボンを摘まむ。
でも恐る恐る上げた視線の先にはキミの笑顔があったから
せめてキミと逢える電車の中では
スカートの丈は合わせるね。
と、いうわけで、byしろきみどり となりました。
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