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サイエンサーズ!!   作者: よしけい
4/5

能力判明

「紹介するわ、私の仲間、研究者(サイエンサー)のみんなよ!! もちろん、全員能力者よ。じゃ、一人ずつ自己紹介していきましょ。まずは私からね。」


 一気にまくしたて、二ノ宮さんは自己紹介を始める。


 「私は二ノ宮 零。 まぁ、それは知ってるわよね。研究所(ラボ)での役割は戦闘と勧誘。年齢は16歳、能力は<積分(せきぶん)>よ。」


 俺の目を見る彼女の瞳は澄んでいた。

 分かってはいたが、改めて見ると二ノ宮さんはかなり美人だ。

 大きな二重の目、筋がしっかりとした鼻、小さな口、雪のように白い肌。

 長い黒髪も相まってまるで深窓の令嬢のようだ。

 もっとも、言動はあまりお嬢様らしくないが。


 「次は三島(みしま)さんね。」


 自分の紹介が終わると、彼女は横にいた長身で眼鏡の男に話を振った。

 男は言われた通り話始める。

 

「もう二ノ宮に言われちゃったけど改めて。僕の名前は三島 (あおい)

 一応研究所(ラボ)の局長を任されていて、年齢は26歳です。能力は <軌跡(きせき)> よろしくね。」


 軽い自己紹介の後、三島と名乗った男は手を差し伸べてきた。

 俺はその手を握って握手をし、自分も名乗った。


「一ノ瀬 京です。よろしくお願いします。」

「君のことは二ノ宮と七尾(ななお)から聞いているよ。まぁ、そんなに固くならなくていいからね。リラックスして。」


 なんていい人なんだ。年下の俺にも敬意をもって話してくれている。

 しかも、かなりイケメンだ。

 所長って言ってたから多分ここのリーダーなんだろう。

 きっと、リーダーシップもあるんだろうな。

 俺が早くも三島さんに対して尊敬の念を抱いていると、彼は慌てて言葉を付け足した。


「あ、七尾って言っても誰か分からないよね。七尾っていうのは……」

「は~い。七尾っていうのはウチのことだよ。一ノ瀬君、()()会うのは初めてだね。」


 三島さんが言い終わらないうちに女性の声が乱入してきた。

 声の方を見ると、長い金髪のギャルが立っていた。

 派手なネイルで露出が多い服装に白い肌と軽めの口調。いわゆる白ギャルというものだろうか。

 顔立ちはかなり整っていて、二ノ宮さんとは違ったタイプの美人だ。


「あ、この声はもしかしてイヤホンの人ですか?」

「せいか~い。流石いっちー、よく覚えてるね。あ、いっちーていうのは一ノ瀬君だからね。

 ウチ、人のことあだ名で呼ぶ癖あるんだ。嫌だったら言ってね。」

「だ、大丈夫です。」


 勢いに押されてつい了承してしまった。でもギャルにあだ名で呼ばれるのも悪くないかも……


「あの時とは口調が違いますね。」

「あの時は緊急事態だったからね。普通じゃないといっちー混乱するかなって。 

 てか、いっちーよく見るとかわいい顔してるじゃん。もっとよく見せてよ。」


 急に引力が働いたかのように顔を急接近させてくる。


(うわぁぁぁ 近い近い。距離感がバグってる。)


 生まれてこの方女性経験のない俺には刺激的すぎる。


「ほら一ノ瀬君も困ってるし、そこらへんにしてちゃんと自己紹介して。」

「おっけー」

 

 今にもキスしてしまうのではないかという距離まで顔が近づいたが、三島さんの一言で俺から顔を離すと、今度はちゃんと話し始めた。

 ほっとした反面、ちょっと残念な気もする。


「ウチの名前は七尾 麗奈(れいな)。担当は情報収集とメカニックだよ。年齢は18歳で、能力は <解答速報(かいとうそくほう)> だよ。よろしくね~。」

「よろしくお願いします。」


 18歳か。16歳の俺と意外と年齢が近いんだな。

 俺がそう思っていると、七尾さんの横にいた男が言葉を発した。


「ん? 七尾嬢は確か23歳ではなかったか?」

「ちょっとクズリー、言わないでよ~。」

「おや、これは失敬。女性の年齢に口出しするのは野暮であったな。」


 クズリーと呼ばれた男は謝ると、俺の方に体を向けた。

 そこで俺は初めてその男をちゃんと見たが、とんでもないマッチョだ。

 まるで熊のような体格に、これでもかと盛られた筋肉。比喩(ひゆ)抜きに背中に冷蔵庫乗っけてんのかい! といった感じだ。

 腕なんか俺のウエストぐらいあるんじゃないか?


「吾輩は九頭竜(くずりゅう) 慎之介(しんのすけ)。役割は戦闘と筋肉、年齢は35だ。

 能力は <膨張(ぼうちょう)> だ。よろしくな。

 それはそうと一ノ瀬君、ちょっと失礼するぞ」


 そう言うや否や、九頭竜と名乗ったマッチョはおれの二の腕を触ってきた。

 そのままモミモミと力こぶを揉みしだく。


「!? な、なんですかいきなり!」

「吾輩は人の筋肉を触るとその人の人となりが分かるのだ。」

「そんな馬鹿な……」

「本当だぞ。筋肉が吾輩に語りかけてくるのだ。

 そうだな、君は一見明るいが、何か闇を抱えているな。」

 

 そう言われればそんな気もするし、違う気もする。

 そもそも、人間生きていたら何かしら闇を抱えているんじゃないか?

 

「そんな君には筋トレがおすすめだ。筋肉はすべてを解決してくれるからな。

 おすすめのトレーニングは……」

「はいはい、筋肉占いはそこまでにしましょう。それっぽいこと言って結局いつも筋トレ勧めて終わるんだから。」


 三島さんが場を納める。

 きっと普段からこんな感じなのだろう。


「じゃあ最後に四季(しき)さん、自己紹介してくれるかな?」

「は、はい。えっと、四季 (さくら)です。担当は救護です……16歳です。能力は……<救いの小問集合(サンタマリア)> です。よろしくお願いします……」


 四季と名乗った少女はうつむきながら小さい声で自己紹介をした。

 肩ほどまでの黒髪のせいで顔はよく見えなかったが、小動物のような雰囲気を持つ女の子だ。


「ガハハハッ 四季嬢は人見知りだからな。大丈夫だ、一ノ瀬君は悪い人ではないぞ。彼の筋肉から聞いたから間違いない。」 


 俺の筋肉は一体何を九頭竜さんに教えているんだ。

 突っ込みたいのを我慢して、四季さんに挨拶する。


「一ノ瀬です。よろしく。」

「は、はい。」


 返事をもらえたので良しとしよう。

 そして、四季さんでこの場にいる全員も自己紹介が終わったようだ。


「次は能力についてだけど、みんなに言ってもらったように、能力者は一人一つ能力を持っているんだ。

 そうだな、例えば僕の能力<軌跡>は物の軌跡を操れるんだ。こんな風に。」


 三島さんは机の上に会った紙を丸めると、少し離れたところにあるゴミ箱に向かって投げた。

 投げられた紙は、通常ではありえない蛇行した軌跡を描いた後、ゴミ箱に吸い込まれた。


「す、すごい……」


 思わず感嘆の言葉が漏れる。


「ハハ、ありがとう。他のみんなの能力も、1回見てみれば理解できると思うよ。

 四季や七尾みたいに、名前からは想像しにくいのもあるけどね。」

「私の能力は特別だけどね。説明されても分からないかも。」


 二ノ宮さんが口をはさむ。少しドヤ顔だ。


「確かに君の言う()()は僕らには見えないし、分からないからね。

 それは置いといて、ここからが本題だ。」


 三島さんの顔つきが真剣なものに変わる。

 それから、三島さんは説明を始めた。

 要約すると、


・俺にも能力が発現している可能性が高い。

・普通は発現したら自分で分かるが、俺は分かっていないので呼ばれた。

・今から七尾さんの能力で能力を明らかにする。


 とのことだった。


「ということで、後は頼む。」


 七尾さんとバトンタッチする三島さん。


「オッケー。ウチの能力は対象の情報が分かるんだ~。

 能力だけは相手が発動するか、ウチが直接触るかしないと分からないんだけどね。」

 

 だからこの前も八木の情報が分かったのか。

 もし敵だったら嫌な能力だ。


「この前はいっちーを分析する時間がなかったからね、今日はじっくり分析させてもらうよ~。

 ちょっと腕触るね。」


 七尾さんが俺の腕を触る。

 ひんやりとした指の感触が腕から伝わってくる。

 

 「お、反応した。やっぱり能力があるみたいだね。」


 彼女はPCを取り出し、器用にも片手で操作を始める。


(俺の能力ってどんなのなんだろう。)


 期待と不安が入りまじった気持ちでいると、三島さんが声をかけてきた。


「一ノ瀬君、あの日から何か変わったことは起こってないかい?」

「そういえばあの日から、集中すると人の頭の上に数字が見えるんです。他の人には見えていないみたいですけど。」


 言った途端、二ノ宮さん以外のホールにいた全員が一斉に俺の方を向いた。


「頭上に数字? まさか、ついに現れたのか? 二ノ宮と対をなすあの能力が。七尾、分析まだか!?」


 今まで温厚だった三島さんが声を荒げる。


「ちょい待ち…… 分析完了! いっちーの能力は……」


 全員が固唾をのんで次の言葉を待つ。

 その雰囲気に、俺の鼓動も早くなる。

 

 「いっちーの能力は……<微分(びぶん)>!!」


 瞬間、その場にいた全員が歓声を上げた。


「やったぞ!」


 三島さんを筆頭としてみんなが歓声を上げる中、状況を呑み込めていない俺に向かって二ノ宮さんが歩いてきた。


「やっぱりそうだったのね。一ノ瀬君、あなたの能力、<微分>はみんなが待ち望んでいた能力なの。そして、私に必要な能力でもある。」

「私に必要って……」

「私の能力<積分>はあなたの<微分>と対をなす能力。あなたにも私が必要なはずよ。」

「ごめん、理解が追い付かない。」

「大丈夫よ。そのうち分かるわ。私たち、これから長い付き合いになると思うから。よろしくね。」


 差し伸べられた手を、俺は握り返した。

 状況は何も理解できなかったが、この握手が俺の人生の大きなターニングポイントになるということだけははっきりと確信することができた。









 


 





 



 

 

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