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サイエンサーズ!!   作者: よしけい
3/5

ラボへ

 八木に襲われてから3日が経った。

  あれ以来、他の奴に襲われてはいない。

 八木の襲撃後二ノ宮さんがいた場所に戻ると、彼女の姿はなく、割れていたはずの窓ガラスや壊れた廊下の壁は元通りになっていた。

 正直驚いたが、能力という不思議な力を説明された後だったので、きっとこれも誰かの能力なんだろうということで自分を納得させた。

 ちなみに、八木がどうなったのかは知らない。

 イヤホンからの声が言うには

 

「こいつはウチらで対処するから、一ノ瀬君は気にしなくていいよ~。じゃ、お疲れ~。」


 とのことだった。

 気にはなるが、どうすることもできないので俺は八木について考えるのをやめた。

 それからもう1つ、不思議なことが現在進行形で起こっている。

 あれ以来、集中すると人の頭の上に数字が見えるようになったのだ。

 そして、この数字は俺以外の人間には見えていないらしい。

 最初は、


「経験人数が見えるようになったのか? これは恐ろしい能力だ……!」


 などと思っていたが、鏡に映る自分の頭の上に2と書いてあるのを見て違うと確信した。

 誠に遺憾だが、俺の仮説が正しいなら俺の頭上には0がないとおかしいからだ。

 それに周りの人間のほぼ全員が1だったことも、俺の仮説が間違っていると裏付ける大きな要因だ。

 結局、数字が何を表すのかは分からないまま今日に至る。

 まぁ、分からないものを考えても仕方がない。

 

 そんなことより、心配なのは二ノ宮さんだ。あれから学校を休んでいる。

 風邪で休みということになっているが、あの重傷だ。しばらくは学校に来れないだろう。

 人気者の欠席により、クラスの雰囲気はなんとなく暗い。

 特に、二ノ宮さんガチ恋勢の男子の狂乱ぶりは相当だ。


「どうして二ノ宮さんなんだ。風邪なんて俺がいくらでもかかってやるのに。」

「おのれ風邪めぇ、二ノ宮さんを苦しめるなんて俺が許さん!!成敗してくれる!!」

「僕は二ノ宮さんを見ることでしか得られない養分で生きているんだ。3日も姿を見れないなんて死んでしまう……」


 など各々が悲痛な叫びをあげている。


「静かに。ほな、朝のHR始めるで。日直、挨拶よろしゅう。」


 担任の捌幡先生が無精ひげを触りながら言う。


 「出席確認の点呼はめんどくさいので、俺が目視で確認するで。

  えっと、おらへんのは二ノ宮だけか。」


 今日も休みか。いつになったら登校できるようになるのだろう。

 そう思った矢先、


 ガララ

 教室の前の扉が開き、二ノ宮さんが入ってきた。


「二ノ宮、風邪は治ったんか?」

「はい、もう平気です。ご心配おかけしました。」


 捌幡先生の問いかけに、丁寧に答えた二ノ宮さんは軽く頭を下げ、自分の席に向かった。


「それじゃあこれでHRは終わりや。1限の準備しとけよ。」


 捌幡先生が教室から出て行った途端、二ノ宮さんの席の周りに人だかりができる。


「零、もう大丈夫なの?」 

「治ってよかったな二ノ宮!」

「あぁ、養分が体に染み渡る。ありがとう、これで僕はまだ生きられる。」

「みんなありがとう。もう平気だよ。」


 クラスのみんながそれぞれの言葉を二ノ宮さんに投げかけ、彼女は笑顔で返事をする。

 

 (やっぱ人気者は違うなぁ。暗かった雰囲気が嘘みたいだ。)


 少し羨ましさを感じたが、俺は二ノ宮さんの席から目を外し1限の準備を始める。

 それにしても、ケガの治りが速すぎないか? これも何かの能力なのだろうか。

 そんな考え事をしていると、二ノ宮さんが俺の席に来て話しかけてきた。


「一ノ瀬君、ちょっといい?お願いがあるんだけど。」

「え、うん。」

「放課後、この前のことで話があるの。校門前で待ってくれる?」

「わ、分かった。」

「ありがとう。じゃ、また放課後ね。」


 この前のことというのは八木の襲撃の件で間違いないだろう。一体何の話をされるんだろう。

 

「一ノ瀬が二ノ宮さんと話してたぞ。」

「放課後に校門とか聞こえたぞ。どういうことだ。」

「場合によっては武力解決もやむを得ない。監視を怠るな。」


 ガチ恋勢の会話が聞こえてくる。


(これはリアルメタルギアソリッドだな。)


 放課後への覚悟を決め、俺は一限の準備を再開した。




 ――放課後


 ガチ恋勢の監視の目を潜り抜け校門に向かうと、そこにはすでに二ノ宮さんの姿があった。


「ごめん、遅くなった。」

「いいわよ。私も今来たところだし。監視の目はうまくまけた?」

「スネーク顔負けの匍匐前進(ほふくぜんしん)で抜け出してきたよ。

 というか、こうなるの知ってたならもう少し目立たないように伝えてよ。」

「アハハ。ごめん、ついやっちゃった。」

 

 今まで話したことなんてほとんどないのに、普通に会話ができる。これが人気者のコミュ力ってやつか……

 謎に関心しつつ、本題について尋ねる。


「それで、話ってのは?」

「それは帰りながら話すわ。さ、行きましょ。」


 彼女は俺の前に立ち歩き始めた。

 長い黒髪が風で揺れる。

 ほんのりといい香りが、少し離れて歩く俺のところまで届く。

 


「私は気絶しちゃってたから見てないんだけど、あなたがあの男を倒してくれたんでしょ? 本当は私があなたを助けないとダメだったのに……」


 顔をこちらに向けることなく二宮さんが俺に話しかける。

 声のトーンは少し暗く、自分を責めているかのような口調である。

 顔をこちらに見せないのは、表情を見られたくないからだろうか。


「いや、あれは偶然だよ。俺はただイヤホンの指示に従っただけだし。」

「それでも十分すごいわ。それに、一撃だったんでしょ?」

「俺もそれにはびっくりしたよ。俺には能力なんてないはずなのに。」


 そう言った途端、二ノ宮さんの表情が少し険しくなる。


「あなた、まさか自覚がないの?」

「え、なんの自覚?」

「自分の能力のよ。」

「もしかしたら……とは思っていたけど。」


そんなはず……と彼女の表情がさらに険しくなる。

 

「あれから何か変わったことはない? 体のサイズを変更できるようになったとか、急に強くなったとか。」


  少し早口に二ノ宮さんが俺に尋ねる。


「そういえば、人の頭の上に数字が見えるようになったよ。集中しないと見えないけど。もしかして、これが俺の能力?」

 

 返事はない。

 彼女は目を大きく開き立ち止まっていた。

 様子から見るに、かなり驚いているようだ。


「頭上に数字って…… まさか、私と同じ……」

「どうしたの?」

「……なんでもないわ。すぐに分かるし。」


一体何が分かるというのだろうか。

 疑問に思い尋ねようとしたが、俺より早く二ノ宮さんが口を開く。


「着いたわ。ここが目的地よ。」


 二ノ宮さんは今にも崩れそうな一軒家の廃墟を指さしている。

 建物の周りには<立ち入り禁止>と書かれた黄色のテープが張り巡らされている。


「え? 着いたって…… ここ廃墟だよ? 周りにも何もないし」

「いいから付いてきて。」


 それだけ言うと彼女はテープをくぐり、廃墟の玄関を開けて中へ入っていく。

 俺も慌てて付いていくと、中には地下に続く階段があり、二ノ宮さんはその階段を下っている。


「ほら、早く。」

 

 階段を下っていくと、キーパッドが付いた頑丈な扉があった。


「パスワード打つからちょっと待ってて。」


 二ノ宮さんはそう言って慣れた手つきでキーパッドを押していく。


「パスワード認証。お帰りなさい。」


 キーパッドから自動音声が聞こえると同時に、ウィィィンと音を立て扉が両側に開く。


「さ、入って。」

「お、お邪魔します?」


 果たしてお邪魔しますという言葉が正しいのかは分からないが、とりあえず形式的に呟く。

 遠慮がちに中に入り、短い廊下を抜けると、そこには外の廃墟からは想像もつかない光景が広がっていた。

 

 正面には超巨大なモニターが設置してある。

 その左右には天井まで伸びる本棚が備え付けてあり、たくさんの本が並べられている。

 モニターの少し手前にはこれまた巨大な長方形のテーブルがあり、周りには椅子が等間隔に並べてある。

 そして、今俺が立っている入口近くの左右の壁には大量の薬品と実験器具が並んでいる。

 部屋の左右の壁の真ん中にはそれぞれ扉があり、この部屋以外にもまだこの施設が広がっていることを証明している。

 部屋の高さも地下とは思えないほどだ。

 思わずあっけにとられていると、二ノ宮さんが声をかけてきた。


「驚いた? ここが()()()が拠点にしている研究所(ラボ)よ。

 今、私とあなたがいるのはホールって言って、研究所(ラボ)で一番広い空間よ。 

 広さは大体体育館の3分の2ぐらいかしら。」

「ちょっと待って、ラボって何? それに私たちってことは……」

 

 理解が追い付かない。


「そうね、一気に説明しすぎたかも。もう一回ちゃんと説明するから、あそこのテーブルにある椅子に座ってくれる?」

 

 言われるがまま椅子に座ると、彼女は大声で呼びかけた。


「みんな、一ノ瀬君が来たからホールに来て!」


途端、ホールと呼ばれているらしい部屋の左右の扉から男女が数名入ってきて、そのまま俺の近くまで来た。


「紹介するわ。私の仲間、研究者(サイエンサー)のみんなよ!!」 


 勢いよく言うと、彼女は仲間たちの紹介を始めたのだった。



 


 






 


 

 

 

初投稿作品です。拙い部分が多々ありますが、応援していただけると嬉しいです。

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