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外れ者共は今を生きる  作者: 春夏 フユ
第二章 報復せよ、勝利の顔したあいつを
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6:不運



 採集祭ーーーーそれは、世間では採集クエストが軽視されがちな実態を悲しく思ったかつての【イズリラ】の町長だった[イズル]という人物が採集クエストへの認識を変えたいと思い誕生したイベント。


 『祭』という名が付いてはいるが、屋台が並んだり飯を囲みながらどんちゃん騒ぎしたりもしない。

 実際は冒険者達が町の近くに存在する自然豊かな【赤みがかった森】で採集し、その採り集めた物の質や量を競い合う一種の競技の様なもの。

  

 賞金も出る上、優勝者は町で一目置かれる存在になれる・・・・そんな理由で参加する人が数多く集まる。


 けど、この僕[ナンバー6]改め、自分で考えた偽名・・・・[シクス]がこのイベントに参加したかった理由は違うっす。

 それは単純明快で至極簡単な一つの理由・・・・『楽しい記憶が欲しいから』。


 僕が僕として誕生してからの人生・・・・お世辞にも良いものではなかったっす。


 狭苦しい培養槽の中で実験(苦痛)繰り返す(与えられる)日々。

 博士の曖昧な指示を理解しようとしても、あまりにも抽象的だから何も出来ない。

 結果、罰として激痛の電撃を流される。


 だけど、それだけならまだマシな方っす。


 実験によっては。

 四肢がもげたり。 四肢が潰れたり。 四肢が溶けたり。 目がくり抜かれたり。

 血液を大量に抜かれたり。 燃やされたり。 溺れさせられたり。 斬られたり。

 刻まれたり。 毒を飲まされたり。 削られたり。 穴だらけにさせたり。

 ・・・・・・たり。

 ・・・たり・・・・たり・・・・たり・・・たり。

 ・・・・・たり・・・・たり・・・・・たり・・・・・・たり。


 ・・・・・・・・・・・・・・・


 でも、どんな目にあっても、どれだけ痛んでも、どれほど傷んでも、最終的に僕の体は全て元通り。

 〔異常級回復薬〕とかいうよく分からない青紫色の液体をかけられれば、どんなに悲惨で凄惨な姿になっていても僕の体は瞬く間に修復されるっす。

 当然、その修復も実験の痛みにも引けを取らないほど激痛を伴うんすけどね。

 それに綺麗な体の状態に修復されるって事はまた別の実験(苦痛)が始まるって意味でもあるっす。


 ・・・・絶対に逆らえない刻印の命令の1つ『外に出て三ヶ月以内に研究室への帰還』。

 『魔人の回収』という過程の指定も明記もされて無いアバウトなものと違い、こちらは解釈次第で受け流せる命令ではないっす。

 僕はこの命令に逆らえない、どれ程抵抗しようが僕はあの研究室(地獄)へ自分の足で帰還してしまうっす、絶対に。

 

 だからその前に楽しい、幸せな記憶が欲しいっす。

 そうすればきっと、僕はまだあの無限地獄を耐えられるっす。

 全てリセットされた空っぽな僕を、少しだけ満たせるっす。

 何も無い空虚な状態で、呆気なく死ぬのは嫌っす。

 

 ・・・・・故に。

 この3ヶ月間の内にあるイベント、採集祭。

 参加する理由は、楽しい記憶が欲しいから。


 ・・・・・でも、参加には3人必要という事実を知り僕は驚愕したっすね。

 何でパンフレットの3人1組の説明がこんな端っこに書いてるんすか!

 僕はソロ冒険者になったばかり、組んでくれる人なんていないっす。

 僕がその事実をギルドに参加申し込みした時に伝えられて、どうしたものか『ぐぬぬ・・・・』となっていた時、後ろから声をかけられたっす。


 僕に話しかけてきたのは、後ろには銀髪女性が隠れている金髪イケメンの[エルガント]という人だったっす。

 その人も採集祭参加したかったけど2人パーティだから出来ず、もう1人欲しかったそうっす。


 「僕で良ければ、こちらこそ組んで欲しいっす!」


 「本当かい! いやぁ、良かった。 ケナも感謝してるよ」


 「・・・・・!(無言で頷いている)」


 僕は運が良かったと、この時は思ってたっす。

 これで採集祭に参加出来るようになったっすし。

 エルガントさんも性格までイケメンの超優しい人だったすし。

 大体エルガントさんの後ろに隠れていた銀髪ジト目の女性、[ケナ]さんは完全に無口で一回も会話自体はしなかったっすけど行動の節々に性格の良さが滲み出ている、エルガントさんと同じ優しい人だったっすし。 

 採集祭限定の一時的なパーティだったすけど居心地が良く『楽しい記憶』になったっす。


 ・・・・でも、僕は運が悪かったっす。

 運が良かったと思っていたけど全くの真逆だったんすね。


 採集祭では何故か夜行性の魔物が大量に動き出すアクシデントが起きたっす。

 その話を実際に遭遇し逃げてきた他参加者から聞いた性格イケメンなエルガントさんが、『まだ夜行性魔物の徘徊に気づいていない参加者もいるはずだ。 せっかくのイベント、みんな楽しく終わらせる為にも注意喚起しよう!』

 と言ったので、三手に分かれて注意喚起する事になったっす。

 エルガントさんは優しいっすね!


 別にこれで『運が悪かった』というわけでは無いっす。

 こういうアクシデントも含めて、最終的に『楽しい記憶』になるっす。

 

 ・・・・・運が悪かったのは、採集祭優勝者発表の時。


 「クロイ、ラスイ、テクル・・・この3人のチームが優勝じゃ、おめでとう!!!」


 あ。


 ギルドで鑑定するお爺さんであり、今回採集祭の司会をしているカンテが優勝者を発表したっす。

 途中から注意喚起で植物を集めていなかった僕達はあまりポイント稼げなかったけどちゃんと『楽しい記憶』にはなったっす。

 でも、肝心の優勝者が問題だったっす。


 僕は『魔人の回収』を『魔人に出会える可能性は未知数、なのでこの街の普通の人と同じ行動をとり自然と接触出来るようにする』という解釈をする事で今までこの命令を実質無視する事に成功していたっす。

 ・・・・この街に[ラスイ]と[テクル]という魔人の存在がいるらしいと街の人から偶然聞いてしまった時も、この解釈をしっかりと自分の中で確立させていたから、積極的に動かなくても刻印の命令強制力は働かなかったっす。

 

 でも、僕はその今まで避けていた魔人の存在を、今この場でハッキリと認識して『出会って』しまったっんす。

 ここまで認識してしまっては、もう避けられないっす。

 確立させた解釈は、もう捻じ曲げられないっす。


 【絶対命令刻印】には逆らえないっす。

 もう魔人と出会ってしまった僕は、『魔人の回収』という命令を遂行し始めてしまっていたっす。


 ・・・もっと解釈を捻っていれば。

 ・・・・採集祭に参加しようとしなければ。

 ・・・・・エルガントさん達と出会わなければ。

 ・・・・・・・・エルガントさんの誘いに乗らなければ。

 ・・・・・・・・・・・・

 『楽しい記憶』なんて、欲さなければ。

 

 魔人と出会わずに済んだのに。

 命令を遂行せずに済んだのに。


 ・・・・・あぁ、僕は、運が悪いっす。

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