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外れ者共は今を生きる  作者: 春夏 フユ
第二章 報復せよ、勝利の顔したあいつを
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撤退せよ、その化け物の前から



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー【テクルが声の元に単独で向かった直後】


 私ことテクルは、只今1人で先生と思わしき声の元へとダッシュで進んでいる。


 悪くいえば・・・・というか、これはどう考えても私の独断専行だ。

 クロイは一度撤退するべきと言っていて、それが正論という事は私でも分かっている。


 でも、孤児院の子供達が頼みに来るなんて、きっと良い先生なのだろう。

 そんな良い先生は早く助けたい、だから声を聞いた瞬間私は他の皆を置いて速攻そちらに向かったのだ。

 後で勝手に向かった事を皆に謝ろう・・・・でも、この勝手な行動に危険はないはずだ。


 クロイ曰くこのダンジョンには金鮫という金の中に潜む鮫の魔物がいるらしいが、大体の魔物は力でねじ伏せれる私なら大丈夫だろう。

 尚いきなり張り付いてきて殴れなかったあのスライムは例外とする。


 戦闘力自体はほとんど無いラスイ達も入り口のゲート近くだから何かあってもすぐ逃げれるだろうし・・・・うん、私1人で向かってもやっぱり大丈夫だ!

 

 そう思いながらしばらく進んでいると、声が聞こえる場所が凄く近くなってきた。

 助けを求める声は10秒おきぐらいに何度も聞こえてくるので、その声を辿ればほんの少しだけだが存在していた分かれ道でも迷わなかった。


 いや、10秒()()()っていうかきっかりピッタリ10秒おきだ。


 ・・・・・んん?


 待てよ?

 先生は数日間ダンジョンでなんらかの要因で出られなかったんだよな?

 ・・・・じゃあこんな元気に声を出せるだろうか?

 それだけならまだしも、こんな延々とまるで機械のように正確に10秒置きに同じような言葉を叫び続けている。


 ・・・・・何だか急に、この声が不気味なものに感じてきた。


 そういえば私が駆け出した時に、クロイが何か言って引き留めようとしていた気がする。

 ちゃんと話を聞いてから慎重に動くべきだったかも。

 ・・・・今更か。


 ・・・・しかしここまで来てしまったのなら、不気味に感じても声の主が誰なのかだけは見ておきたい。


 だからもうだけ少し歩き、私は声の主の所に辿り着く。

 辿り着いた結果・・・・次からは単独行動は控えようと思った。


 数歩ほど前に居たのは、金色の大蛇。

 金色が完全な保護色になっていて、スライムの件で意識していたにも関わらず、かなり接近してから存在を認識した。

 かなりの巨体であり、頭部分のデカさだけでも大の大人2人分ぐらいある。

 一応体も大きいのだが、何だか胴体は太っていて短く・・・・蛇と言っても、正しくはツチノコのような体型をしていた。

 不思議な事に、尾の先っぽはこのダンジョンの地面に突き刺さって固定されているように見える。


 そしてその蛇はダンジョンをこれ以上先に進ませなくする意図があるのかは分からないが、まるで壁のように短いながらも巨大な胴体を少しだけとぐろを巻き横たわっていた。

 蛇の三角形の頭と壁に僅かな隙間があるが、人1人通れる隙間ではない。

 しかしその隙間の向こう側に人がいるのは見える。

 どうやら蛇の向こうの人はぶっ倒れているようだ。

 ・・・・・あ、もしかしてあれが先生?

 あの蛇に襲われたのだろうか。


 私が巨体に驚きつつ、急いで様々な視覚情報を集めていると・・・・蛇の目が私の方にギョロッと向き、頭を上げ威嚇してくる。 

 そして巨大な頭に見合う大口を、これでもかというぐらい開ける。


 『おぉォぉォい!! 誰カ助けテくれぇェェぇ!!!』 


 私が単独行動を控えようと思った何よりの理由。

 蛇の口の中には小さな“人の口”が大量にあった。

 その蛇の口内の人の口から、先程から聞こえていた助けを求める声が聞こえてくる。


 『誰かぁァァぁァぁァァぁぁァ!!!』


 その口の中の口を見た瞬間、私は多量の冷や汗をかいたと思う。

 人の器官を持っている、魔物かも分からない・・・・化け物。


 人に似た部位を持つ魔物は確かにいる。

 それこそ猿系の魔物は全体的に形が人っぽい。

 だが、こんな不自然な部位に後から貼り付けた様な不気味な存在、コイツは普通の魔物ではない。


 正に化け物・・・・・その蛇に感じたのは、そんな感想。

 そして悪寒、追加で既視感も感じた。

 人の手を持った魚もどきの化け物、私の本能はそれと似た何かを感じとった。


 今の私は、頭では冷静に分析していたが、体の方は動揺して少し動きが止まっていた。

 

 その停止した私の事を見ている蛇は、人の口の一つから金色の液体を銃弾の如き速度でいきなり吐き、飛ばしてきた!


 動揺を無理矢理押さえ、反射神経で触手を自分の前に出して防御を取る。

 金色の液体は触手に小さな穴を開けたが、それで勢いを失い貫通はしてこなかった。


 私の触手に痛覚が無い。

 だから穴が空いても平気・・・・・あれ?


 触手の液体が入ってきた中央部分が金色になっているように見える・・・・

 いやコレ触ったら分かる、本当にきんになってる!!


 そこから侵食し広がるように、触手はどんどん金になっていく・・・・マズイぃ!


 私は蛇が再び何かする前に、急いでこの場から離脱してクロイ達の元に向かった。


 ・・・・蛇は追撃をするわけでもなく、その私の逃げている後ろ姿をじっと見ているだけだった。

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