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外れ者共は今を生きる  作者: 春夏 フユ
第二.五章 オレと借金返済
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オレと上空



 (・・・・・・まじかぁ)


 クズルゴ、現在彼は左側にぐっすり睡眠中のお嬢様を小脇に抱えながら空に浮かんでいる。

 見下ろす先にあるのは、憎き誘拐犯達が火と魔物の対処をしている光景。


 (思ってた数倍作戦が上手くいった・・・・あんなに不利な状況だったのに。 アイツら相当な間抜けだろ)


 クズルゴがこの奇怪な浮遊状態になったのはついさっきだ。


 大雑把に経緯を説明すると・・・・まず作戦開始からある程度の時間が経過した後に〔憑依人形〕への取り憑きを解除させたゴースト達に指示し空から周囲を見渡させ、人間の男を狙うよう設定したゾンビ化した魔物達が集っている所を探させたクズルゴ。

 そうしてある程度の目処が立ったらしいゴーストにそこまで案内させると・・・・自分達が発端となった火災の音等に若干遮られつつも、ヤケに喧しい男達の声や水で消化する音など諸々が聞こえて来たのだ。

 

 そうして誘拐犯達の姿を視認出来る程近くに、されど気付かれぬようコッソリと後方につけば後は速攻。

 お嬢様運びを担当していると思われる6名に目をつけてレイピアを構え、水色のゴーストであるルベリーの能力〈神隠し〉で透明化し姿を完全に消す。

 お嬢様を運ぶ都合上かなり慎重かつ安全に進まねばならぬ為移動がかなり遅くなるなどを考慮した上での一番後ろにいたのが仇となった運搬担当の6名は、全員が膝を一瞬でレイピアで貫かれ痛みを感じる間もなく行動不能となった。

 レイピアで足を高速突きした犯人であるクズルゴの姿が見えない事もあり、全員が突然前触れもなくまともに立てなくなり混乱。

 声を上げようとした瞬間、クズルゴは6人の後頭部を順にレイピアの護拳部分で軽快に連打。

 6名は即気絶、肝心のお嬢様はレイピアで運ぶ担当の奴らの膝を撃ち貫く前にリーラズの能力である〈ポルターガイスト〉で浮かせておけば落ちる心配もないので安心。


 そうしてお嬢様を回収した後はリーラズの〈ポルターガイスト〉の対象をクズルゴ本人の体に変更。

 念動力染みた力である〈ポルターガイスト〉はリーラズ本体と近ければ近い程強くなり、より重い物を持ち上げれるようになる。

 その性質を利用しリーラズをクズルゴ自身と密着させればクズルゴ+お嬢様、人間2人分の体重でも空に浮かせられるのだ。


 一方ルベリーは地上に残しておき、一纏めにした気絶中の6人に〈神隠し〉を発動させる。

 〈神隠し〉はルベリー自身のみならず、接している限り他者にも伝播し効力を発揮する特異な透明化能力・・・・あっという間に6名の姿を隠蔽した。

 これならば例え残りの12名が振り返ろうが、すぐ後ろで倒れ伏してる6名の視認が出来なくなる。


 こうして思ってた数倍あっさり行ってしまったお嬢様奪還。

 しかし、まだ油断は禁物。

 なんだかんだ確かな実力があり、まだどんな手札を隠し持っているか分からない誘拐犯共から安易に目を離すのは得策ではないと判断したクズルゴは彼らの上空に少しばかり留まり監視する事に。

 この安直に即逃走せず空からしばらく見下ろし続けるという選択は、お嬢様片手にそこそこ強い12名を相手と戦闘した場合考えられる勝機の薄さと、もし誘拐犯サイドにとんでもない隠し球があった場合にそれを確かめずにすぐに逃げた場合の危険性などを考慮した故の考えであった。

 もし何かしら厄介な切り札があるならば上空からの奇襲で出来る限りそれを封じた後に逃走開始、何も無ければ安心して悠々と空中散歩のように逃走だ。


 (誘拐犯共がここから挽回出来る都合のいいものがある可能性は低いが、念の為に・・・・ん?)


 お嬢様と運搬担当の6名がいなくなっている事に気がついた12名の内、ずっとタブレット片手に指揮を飛ばしていた恐らくリーダーであろう長髪の男が何やら不審な動きをしている。

 クズルゴが奴らの上側にいて距離があり他の音の邪魔があるのと、リーダー格の男の言語センスが独特なのもあり何を言ってるか分からないが・・・・何故かこの土壇場でタブレットの電源をつけた。

 距離とか火の煙とかの問題でタブレットの画面に何が表示されているか分からないが・・・・この状況でわざわざ使用したという事はクズルゴにとって嬉しくないものの可能性が高い。


 「今・・なのはポジ・・・の・・・・・・・! コント・・・・・・・ラリーシチュエー・・・・・る前に・・・・!?」 


 下のリーダーが叫んだかと思えば。

 まるで大変な事に気づいたかのように動きがピタっと止まった。


 (あ、こりゃマズイ。 何を見たか分からないが反応的に位置に勘付いたっぽいな。 まさかマジに切り札があったとは・・・・よし、予定通り使い物に出来なくしてから逃げるか)


 レイピアを構え直し、リーラズの〈ポルターガイスト〉を解除させる。

 お嬢様を落とさぬようにしっかりと抱え、落下を開始する。

 リーダーが頭上を見上げる頃には、既に対処が間に合わぬ程近くまで落ちてきたクズルゴが。


 「おらぁっ!」


 「うげっ(ヤイクスッ)!?」


 落下の勢いが乗ったキックをリーダーの顔面にぶち込むクズルゴ!

 リーダーが顔面キックで倒れ込み、思わず手に持っていたタブレットを手放してしまい空中に放り投げられてしまう。

 そのタブレットはリーラズに指示し、抜け目なく〈ポルターガイスト〉で空中に固定させて回収する。

 そうして首尾通り使い物にならないよう破壊を命じようとしたクズルゴだが・・・・(いや、せっかく綺麗に回収出来たんなら壊さなくていいか? リーダーの指紋とかベッタリついてるし今回の誘拐についての何かしらの証拠とかに使えたり、それでなくとも魔機械はかなり貴重だから足がつかないとこで売り飛ばせば・・・・壊すのは勿体ねぇな、このまま持ち帰るか。 まぁ犯罪者から勝ち取った戦利品って事で)と考えを改めたのでリーラズに運ばせてパクる事に決めた。


 「じゃあな、圧倒的有利だった筈なのに最終的には結局何も為せなかったカス共!」


 クズルゴは先導していた為一番前にいたリーダーを尻目に誘拐犯達が向かおうとしていた森の外へと全力で逃げ出した。

 クズルゴの存在がバレたので隠匿の必要がなくなり〈神隠し〉を解除して6名から離れたルベリーと心変わりで指示が変更されタブレットを〈ポルターガイスト〉で運ぶ事になったリーラズを後ろに引き連れ、そして片手には未だ目を瞑っているお嬢様を抱えてそれはもう揚々と煽るように・・・・いや、“ように”ではなくちゃんと煽った上で逃げ去ったのだった。


 誘拐犯達はあまりの急展開に言葉を失い少しの間茫然としてしまったが、すぐに正気を取り戻し気絶中の6名と顔面キックで負傷中のリーダーを除いた11名はクズルゴを大急ぎで追いかけ始めたのだった。


 ちなみにお嬢様の安否確認とか、タブレットに何か仕掛けられてたらどうするのかとか、誘拐犯達の前でゴースト普通に姿出しちゃってる事とか・・・・クズルゴもいっぱいいっぱいだったこともあり、割と抜けているところがあった。

 最後の煽りも必要なかったし・・・・こういうガバガバなところがあってクロイ達にしてやられたのに、学習してないのかな?

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