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外れ者共は今を生きる  作者: 春夏 フユ
第二章 報復せよ、勝利の顔したあいつを
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ぐるぐる巻きは敵を拘束する



 シクスの頭に出来た小さな穴から、赤い血が溢れて滴る。

 研究室の床に、赤い汚れが付着していく。

 そんな地に突っ伏したシクスを博士は以前座ったままの状態で見下ろし・・・・・急に激しく笑い出した。

 

 「・・・・・・ハハ、ハハハハハハハハ!! なんだ、[ナンバー6]も所詮は未完成のガラクタだったというわけか! せっかく創造主の私が目をかけてやったというのに! どこまでいっても私以外の者は愚かでしかないな!! ハハハハハ!!」


 俺達がシクスの余りにも突飛すぎる行動で固まっていると目の前にいる全ての黒幕・・・・・博士が笑いながら支離滅裂な言葉を撒き散らす。


 「お前・・・・・・なに言ってるんだ」


 ラスイを受け止めたままのポーズで固まっていたテクルが、殺意に限りなく近しい敵意を目に宿しながら言葉を投げかける。

 

 「・・・・・? ?? ???」


 ラスイはまだ状況が飲み込めておらず、声に出してはいないものの酷く狼狽していた。

 ラスイからしれみれば孤児院で眠ったらいつの間にか見知らぬ場所でブチ切れたテクルに支えられおり、いきなりシクスのヘッドショットを見たのだ。

 混乱しないほうが無理がある。


 「ハハハハハ!! ハハハハハハハハハハハハ!!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


 博士は何がおかしいのか、未だに笑っている。

 テクルは既に触手をいつでも振るえるような体制をとっている。

 ラスイを攫った相手を目前にして怒りに満ちている筈なのにすぐに攻撃しないのは、自身の暴力を抑え込んでいるとかの殊勝な理由ではなく、純粋に警戒しているからだろう。


 この博士という人物は、底が読めず未知数。

 雰囲気としては、特にこちらを脅かすような絶対的恐怖のような派手なものはないが、不快さが纏わり付くような嫌な感じだ。

 この研究室のような狭く薄暗い空間も、この博士が持つ不快に伴うおどろおどろしい不気味さを助長させる。

 

 その上推測からしてシクスは、ほぼ確実にこの博士が創り出した存在なのだろう。

 人間の創造、そんな事が出来る技術なんて聞いた事がない。

 全くもって未知の領域・・・・・今の俺が人を創る技術に関して分かる事と言えば、周りに在る拷問器具のような実験器具や、石板に悪趣味な選択と答えを設定した性格からして、確実に非人道的だという事ぐらい。


 まぁつまり何が言いたいかというと。


 「テクル、コイツは危険だ! 触手で拘束しろぉ!!」


 「・・・・!! わ、分かった!!」


 急いでシクスの元に駆け寄りたいが、肝心のシクスの位置が博士の足元。

 俺は人体の専門家じゃないので分からないがまだ助けられるかもしれない、何より孤児院まで体を運べば蘇生が出来る先生がいる!!

 確かにシクスの挙動は絵面が酷く心配で助けに行きたいのだが、今の倒れているシクスが最悪の結果でも蘇生出来る先生がいる時点でそこまで大急ぎで行う事ではない。


 今真っ先に優先するのは、この危険人物・・・・博士の無力化だ!!

 博士を放置してたら何をして来るのか分からなすぎて、シクスを先生のとこまで送り届ける事などどちらにしろ出来ない!!



 俺の言葉通りにテクルは触手は瞬時に伸ばし、元より数歩進めば互いに触れられる程の短い距離しかなかった為、一瞬で博士の元に触手を到達させた。

 そのまま先端で腹を貫けてしまいそうな勢いを持った触手だが、流石にテクルだって何か聞き出したり牢屋にぶち込んだりせずに問答無用で殺すのは不味いと理解している。

 胸元に触れる直前で軌道をズラして、体の周りで触手を3周させる事で博士を中心とした輪っかを作り、それを一気に引き締める。

 これにより、触手をロープ代わりにしてぐるぐる巻きで縛る事に成功した。

 俺の『拘束しろ』発言からテクルが実際に博士を捕らえるまでにかかった時間、僅か三秒!!

 高速の拘束だな。

 

 「ハハハハハ!! そうかぁ!! ナンバー6ゥ・・・・愚者のアイツは何らかの方法でここまで外の奴らを呼び私にぶつけようと画策し、成功させたのか!! 聡すぎるというのも問題だったなぁ?」


 自身が触手巻きにされたのに気づいていないのか博士は尚も笑い続けて誰に向けてるのかも分からない言葉を紡ぎ続ける。


 「テクル、ちょっと強めに締めて気絶とかさせ」


 「ナンバー6はどうやら[絶対命令刻印]が刻まれてない外の人間をぶつければ私を簡単に攻略出来ると考えていたのだろう!! ・・・・・そうだなぁ。 確かにナンバー6から見た私は[絶対命令刻印]頼りの軟弱な老人だったのだろう・・・・・それこそ行動を制限する刻印さえなければナンバー6が自分一人で倒せるとも思っていた可能性さえある!! だが、読み間違えたなぁ・・・・・私は、こう見えて」


 俺の言葉を遮る程大きな声で捲し立て続ける博士の言葉が、不意に止んだ。

 テクルは博士の声にかき消されこそしたが、俺の言いたかった事を理解したようで既に触手に力を込めて・・・・


 「結構・・・・・強いぞ?」


 博士の拘束されて動けなくなっいる腕の先端・・・・つまり、手元には。

 いつから持っていたのだろうか、一つのボタンが握られていた。

 そのボタンには、『穴道』と書かれている。


 ・・・・・腕が動かなくとも、指ぐらいは動かせるのは失念していた。


 カチッ


 パカッ


 ボタンが押されて出たシンプルな音と共に、俺とラスイとテクルの足元の“地面が消失”した。

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