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外れ者共は今を生きる  作者: 春夏 フユ
第二章 報復せよ、勝利の顔したあいつを
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二重ロックは正解を求める



 結界が割れた事による影響は、少なくとも眼で見える範囲では思ったより小さかった。

 周囲の風景の一部が少し変わっただけだ。

 具体的には5歩先ぐらいの地面に、明らか人工的な正方形の穴が現れた。

 1辺の長さは・・・・具体的には分からないが、俺が両手を思いっきり広げた時の右手の指先から左手の指先ぐらいの長さ。

 つまり割とデカい。


 「ふぅ・・・・・」


 触手を下ろし、右手で汗を拭うテクル。

 いつものテクルならこの程度の力仕事では汗1つかかない・・・・多分あの汗は精神的疲労によるものだな。


 「これで結界はぶっ壊れたな。 ・・・・ゴールは近いぞ」


 「ケッカイ? ・・・・あぁ、結界の事か。 そうか、結界がここにあったのか・・・・道理で跡が急に消えたように見えたのか」


 納得したテクルは、早速結界が壊れて認識出来るようになった穴に近づいた。

 俺もテクルの後から穴に近づく。

 綺麗にくり抜かれた真四角の穴は、覗いてみても灯りなどが一切なく底が全然見えない。


 内部が見えない事に警戒心を高める。

 テクルも慎重になり、まずは触手だけを穴内部に突っ込んでみるようだ。


 穴に少しでも入ったらいきなり棘が出てきて串刺し、とかの罠が仕込まれてたら洒落にならない。

 なので再生可能かつ痛覚がないテクルの触手部分だけを先行させるのだ。


 安全を考慮したテクルが穴から10歩程離れ、遠くから触手を長めに伸ばして穴に入れようと試みる。

 俺はそんなテクルの横でつっ立っている


 「・・・・・・ん? んん? は、入らない!?」


 む、どうやらトラブルが発生した様子。

 視線を触手の先端に向ければ、触手がテクルの言葉通りいくら突っ込もうが一切入っていない様子が見える。

 不可視の何かが物理的に穴を塞いでいるのか?

 まるで、穴の入り口が透明なガラスが仕切られてるようだ。


 「落ち着けテクル。 透明な壁みたいなのが穴への入るのを遮ってるみたいだが、お前の力なら簡単に壊せるだろ? そんなに取り乱さなくても大丈夫だ」


 俺もそこらへんの石ころを穴に向けて投げ入れたが、やはり穴の入り口部分に透明な仕切りでもあるのだろう。

 石ころは穴に入れず、硬い物にぶつかったように軽く跳ねた。

 先程は完全に存在自体認識不可能な上に常人なら干渉もままならない結界だったが、今度は透明ではあるものの存在の認識も物理的な干渉も出来る。


 これは先のとは違うまた別の結界なのだろうか・・・・〈結界〉魔法は全然詳しくないので判別できない。

 もしかして魔法で生まれる結界じゃなくて本当にガラス張りなだけかも。


 ま、どちらにせよ・・・・


 「ふぅ・・・・そうだな、そんなポンポン取り乱してたら何も進まない。 障害はキッチリ破壊しなきゃな」


 テクルの触手があれば万事解決。

 やはりパワー・・・・!

 パワーは全てを解決する・・・・!


 テクルは猪や小さめの熊なら全身を潰せる、一般的な女性の体にはどう考えても見合わぬ触手本来のサイズまで太さ長さを戻し、穴に近づく。

 そして穴の目の前で立ち止まり・・・・思い切り!!


 『……至近キョリに、人物のセッ近を確認。 ‥……[コタエモトメル石ノ板]を展開』


 ・・・・テクルが思い切り振りかぶる直前に、突然前触れもなくどこからともなく機械的な音声が流れてきた。

 すると、穴を塞いでいた透明な仕切りが・・・・灰色に染まりその姿を自ら露わにした。


 謎の機械音声の中で聞こえた『石ノ板』・・・・見えるようになった仕切りは、機械音の言う通り確かに誰がどう見ても大きめな石板だった。

 ただし、その石板は文字も模様も、何も刻まれていない真っ平だが。


 いきなり目の前の状況が変化し戸惑ったテクルが触手の動きを止めていると、石板が淡く灰色の光を放つ。


 光を放ち終わった途端、正方形である石板に存在する四つの角、それぞれに直径20cm程の白く丸いボタンのような物が発生した。

 そしてそのボタンには、先程まで文字も模様も絵も何も刻まれていなかったのが嘘かのように、文字が浮かび上がっている。


 右上角のボタンには『玩具』という文字が。

 右下角のボタンには『下僕』という文字が。

 左上角のボタンには『部下』という文字が。

 左下角のボタンには『奴隷』という文字が。

 それぞれ浮かび上がっている。


 『……4ツのボタンで、回答セヨ、ナンバー6。 キサマは、[ーーーー博士]にトッテのナニであるか? ……自身がジシンであると証明し、研究室に再びハイル許可を獲得セヨ。 ‥‥‥証明を違エレば、アルイは証明ソノモノを放棄スれば、その身が虚偽に侵されたと見做し処分を開始スル、注意して回答スベシ』


 機械音が、よく分からない言葉を紡ぐ。


 ナンバー6、って誰の事だ?

 ノイズで肝心の名前が聞こえないんだけど、[ーーーー博士]って?

 証明? 虚偽? 処分?


 ・・・・よく分からない、分からないが。


 「テクル、一回触手を降ろしてくれ」


 「あ、あぁ」


 先程流れた淡々とした機械音声、純粋に説明をしていた・・・・ような気がする。

 よく分からない事も言っていたが、大まかなニュアンスは伝わった。


 つまり石板の四つの角それぞれに出現したボタンを押して、[ナンバー6]とやらがどれなのかを選んで回答しろという事だろう。

 そして証明の間違い、放棄を・・・・つまり回答をミスる、または回答以外の事を石板に行おうとすれば。

 “処分”とやらが始まるらしい。 


 テクルにこの石板を破壊させるには危険に思われる。

 ご丁寧に説明までしてくれた時点でかなりヤバい匂いがするのだ。

 この機械音声がただの脅しの可能性もあるのだが・・・・何故だがそうは思えない一瞬の信憑性がこの機械音に宿っている。

 

 この石板が何かは分からんが、とにかくこの『ナンバー6の証明』という謎の問題を突破せねば!!

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