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66:陰キャが硬かった

 <星架サイド>



 アタシは早鐘を打ち続けてる心臓を押さえながら、自分の部屋のドアに背を預けて座り込んだ。てかアホでしょ。ただでさえドキドキして仕方なかったのに、更に爆走して酷使するとか。心臓麻痺とか起こさんよな。


 それで動悸が治まるワケもないのに、アタシは自分の胸に手を当てた。ドクドクドクと掌を打ち返す激しい脈動。ここ、触られたとこだ。何なら手を動かした時、軽く揉まれた場所。


「ハプニングの神様、ご利益ありすぎ」


 てかこれ、ご利益なんか? ここまで体張らされるハプニングがあって、ちっとも意識してくれてなかったりしたら、許さんからな。邪神認定だから。


「……ちっちゃいとか思われてたらどうしよ」


 アタシのお胸はCカップ。可もなく不可もなく、だ。千佳みたいにF寄りのEとかあると、それはそれで苦労するんだけどな。


 康生はどっちが好みなんだろう。一般的には、やっぱ大きい方がモテてるっぽいけど。


「てか、ちゃんと触った認識はしてくれたよね」


 メッチャ恥ずかしそう&気まずそうだったし。もし康生が巨乳派だったとしても、だよ。普通サイズのアタシのでも触れたら嬉しいハズ! 


 いやいやいや。とは言え、安売りしたらいかんよ? アタシ。喜ぶから触らせるとか、そういうのはナシ。星架さんの胸だから触りたい、他の人のなんて興味もないって言ってくれるようになってからじゃないと。


 アタシはようやく立ち上がって、ベッドの上に座る。康生ぬいぐるみを枕元からそっと取って、胸の中に抱き入れる。


「……いよいよキミの本体に触られちゃったよ」


 おでこにキスしそうになって、ピタリと止まってしまう。分身のこの子にしたら、次はまた本体と実現してしまうかも。そんなバカげたオカルトまで頭を(よぎ)ってしまう。


 結局アタシは……おでこと頬にチュチュと立て続けにキスした。いつも口(って言っても黒いフェルトが横線で縫い付けてあるだけだけど)にはしない。ここは特別。やっぱり本体の康生と初めてをしたいから。


「明日はいつも通りに。元に戻ってるって康生にも宣言しちゃったし」


 つか明日からテストなのに何やってんだよって感じだ。

 アタシはラックの上、柴犬三兄弟の隣の千佳ぬいぐるみを見る。アイツに相談したら絶対ニヤニヤされるから止めとこ。










 翌朝、なるべく平常心で沓澤家へ。いつもの電柱の日影で出待ち。すると、いつもの時間より2分くらい早く康生が出てきた。すぐに目が合う。


「おぱ、おはようございまふ!」


 緊張しすぎだろ。てか今おっぱいって言いそうになってなかったか? 

 ハプニングの神様、疑ってごめん。覿面(てきめん)やったわ。(やしろ)があるんなら、詣でに行った方が良いレベル。


「おっす、今日ちょっと早いね」


 康生がキョドりまくってんの見て、逆にアタシは緊張がほぐれて、超フツーに返せた。


「待たせたら悪いと思って」


 いつもはそこまで気を遣わないのに、今日に限って。分かりやすすぎ。


「意識しすぎだろ」


 図星をついてやると、康生は途端にアワアワしだす。目が泳いで、チラとアタシの胸の辺りに視線が行ってしまって、慌てて逸らして。


 なんか、自分の際どい写真とかSNSに上げて、男の反応を見て優越感を覚えてる女の気持ちとか今まではサッパリ分かんなかったけど、今ならちょっと分かるわ。まあアタシは不特定多数、つか好きな相手以外は無理だけど。


 今、康生の頭ん中、完全にアタシ(つかアタシの胸だけど)が支配してる。その爽快感、多幸感たるや。なんか癖になりそう。

 いや別に康生の上に立ちたいとかはないんだけどさ。いっつもアタシばっか意識して、一喜一憂してるから、たまにはこういうのも良いなってだけで。


「な、なんか星架さんは余裕ですね?」


 ちょっと恨めしげな顔。ふふふ。やっぱ楽しい。


「言っとくけど、アタシの胸に触ったことある人なんてママとか下着売場の店員さんとか、そんなレベルだかんな? 男で触ったのはアンタが初! 高くつくぞ~?」


 更にからかってしまう。


「う、うぅ。父さん母さん、先立つ不孝をお許し」


「だぁ! それやめーや」


 追い詰めすぎて伝家の宝刀が出たよ。


「ウソウソ、マジに怒ってないから。支える時の不可抗力だったって分かってるから」


「ホントですか?」


「うん、それに責任の取り方なら自害じゃなくて」


「じゃなくて?」


「……自分で考えろし。宿題な」


「これからテストなのに宿題!?」


 気が付けば二人、いつもみたいに笑い合ってた。

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[一言] 恋愛は、戦である!
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