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64:ギャルと勉強会をした

 しばらくはカリカリとシャーペンがノートの上を走る音だけが部屋に流れていた。


「ここ」


「はい、どれどれ」


 時折、彼女が分かんない所に当たると、僕が軽く教える。

 誘われた時の色っぽい声音が頭に残ってて、始まる前までは緊張してしまってたけど、始まってしまえばいつもの二人だった。いやはや、自分の女性耐性の無さが恨めしい。あんなやり取りだけでドキッとして意識してしまうんだから。


「出来た! 合ってる?」


 星架さんのノートを覗き込む。じーっと上から順に式と計算を追っていって……うん、合ってる。


「大丈夫ですよ。やっぱ頭いいですね」


 苦手とは言ってたけど、文系があれだけ出来て数学も全然足を引っ張らないくらいには理解力ある。教えたら大体すぐこなせるからね。


「えへへ~。コウちゃんの教え方が上手いからだよ~」


 ふざけて8年前ネタ始めちゃった。悪戯っ子みたいな笑みが可愛らしい。


「デュクシ、デュクシ!」


 消しゴムで僕の腕を攻撃してくる。


「あはは。セイちゃんは可愛いなあ」


 僕も8年前のノリで返す。するとピタッと星架さんの手が止まった。あれ?


「可愛い……とか」


 少し恥ずかしそうにしてる。子供っぽすぎたと急に我に返ったのか。


「初めて言われた、かも……やっぱ康生ってロリコンだったりする?」


「なぜ!?」


 やっぱって何だよ。僕にそんな嫌疑が掛かってたの? 前は男に好かれる疑惑だったかと思えば、今度はロリコン疑惑。星架さんの中で僕の性癖はどうなってるんだ?


「だってさ、アタシがアタシのまんまくっついても放置なのに、子供みたいになって甘えたら途端に、可愛い可愛いマジ天使って」


 そこまでは言ってないけどね。けど敢えて触れないようにしてたのは、逆に良くなかったのか。女心は本当に分かんないな。

 取り敢えず。女子がふざけ混じりに自分アゲしてる時は、基本褒めて欲しい時だから、素直に褒めてあげた方が良い、みたいなこと姉さんがいつだったか言ってた気がするから……


「いや。その……言わないだけで、登下校中にくっついてくれる時も可愛くて、つい頭撫でたくなる時とかありました。天使もまあ……はい。なんせチャリ」


「チャリエルはもういいから。か、可愛いと思ってたなら……言って欲しかったかも」


 最後の方は消え入りそうな声だけど、確かに聞こえた。僕に可愛いって褒められたかったって、それって。

 ……自意識過剰みたいで恥ずかしくて、今までなるべく考えないようにしてたんだけど、もしかすると星架さんは……


「あー。休憩、休憩! ちょっと休もうぜ!」


 敢えてガサツな言葉を使った感じで、星架さんが流れを切った。そしてそのまま後ろに引っくり返って、僕の部屋のカーペットに頭を乗せた。僕はもう1個クッションを持って来て、そっとその頭の下に添えてあげる。サンキュと笑った顔が、やっぱり可愛かった。


「しっかし、あの夢のヤツが一番最初に完成しそうなのは、それどうなんだよ? ええ?」


 頭を動かして、部屋の隅に安置してある創作物を見る星架さん。


「ああ、ノブエルですか」


「その略し方やめろよ」


 分かりやすくて良いんだけどな。


「コンクールの締め切りが今月末までなんですよ」


 僕もノブエル像を見る。原案では自転車のベルを開いた貝殻のように固定して、そこから光のスロープを伸ばし、その上をチャリエル・信長のプチフィギュアを乗せた自転車のミニチュアが走っている場面にするつもりだったんだけど。星架さんのインテリアとは別物として作ることになったから、自転車のベルを使う必要がなくなった。なのでスロープの始点を曖昧にして、その代わり、透明のポールを立てて、そこにスロープを乗せて、かなり傾斜をつけたコース作りにした。まあ夢の中でも傾斜はあったから、より忠実に再現してると言えるかな。


「夢が原案ですから、時間が経つと霧散してしまいそうで。今しか捉えていられないっていうか。星架さんたちには中々理解が難しいかも知れませんが、あの夢、星架さんと再会してからこっちの記憶が色々散りばめられてるっていうか。この2カ月を詰め込んだ今しか出せない、出来ない物なんじゃないかなって」


 言葉にするのは難しいけど、青春の1ページと言うのが最もシックリくるかも。


「康生……なんかエモいこと言って煙に巻こうとしてない?」


「あ、バレました?」


 言ったことも嘘じゃないけど、動機の大半は、あんな夢もう二度と見られなさそうだから、作っとこうっていう、いわば面白半分だった。

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[良い点] ノ ブ エ ル w w w
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