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5:ギャルと弁当を食べた

 僕の周りの机が次々と連結され、あっという間に大所帯になってしまった。ちなみに隣の席の横倉さんはそそくさと退散していた。分かる。分かるよ、陽の気にあてられたんだよね。僕も出来たら逃げ出したかったし。


「へえ、凄いね。卵焼きにピーマンの肉詰め、こっちはツナとキュウリのマヨネーズサラダかな? ご飯はアジのほぐし身?」


「ホッケですね。園田さんはお料理されるんですね?」


 もう一人参加が、この園田さん。ブラウンの髪色だが、他二人に比べるとかなり大人しめに見える。ピアスも一つしかしてないし。あ、いや、僕の感覚が麻痺してきてるな。


「うん。彼氏がねえ。手料理、手料理って、うるさいの」


 何となく、二人とは違ったベクトルでモテそうだなと思ってたけど、やっぱり彼氏が居るのか。


莉亜りあはアタシらのグループのビッチ担当なんすよ」


 溝口さんが少しトーンを落として言う。まだその変な後輩ノリやってたのか。園田さん(下の名前が莉亜か)がムッとした顔で、


「黙れ、バキヴァー」


 と言い返す。


「バキヴァー?」


 何となく硬いアイスキャンディーを連想する。


「バキバキヴァージンの略。星架はウチらのグループの清純担当だから」


 洞口さんが教えてくれる。うう、凄い。男子が居ても平然とシモの話をしてくる。これがカーストトップ。まあ単純に僕がそういう対象とは認識されていないからかも知れないけど。


「うっせえし。そのうち、ホンマモンの恋するから。ビッチには絶対できないヤツ」


「はいはい」


 園田さんに軽くあしらわれる溝口さん。当然のように三人とも男なんて選り取り見取りで、女子とは無縁の人生を過ごしてきた僕のような人間は内心では見下されてるかも、なんて被害妄想に囚われかけてたけど……溝口さんも仲間だったのか。救われる。でも僕のように、なるべくしてなっているワケではなく、彼女は自分で選んでそうなってるハズ。多分、メッチャ理想が高いんだろうな。


「沓澤クンはどうなん? 彼女とか居るの?」


 おっとキラーパス。溝口さんの話を聞いてなかったら、被害妄想から口の中がカラカラになってたと思うけど、少しだけ気が楽だ。


「今は居ないです」


「え!?」


 溝口さんが裏切られたような顔をする。いない歴=年齢だと思われていたらしい。


「いつまで居たの?」


「こ、去年ですね」


「なんだ、ウソかよ~。ビックリさせんなし」


 溝口さんが軽く僕の椅子の足を蹴る。意外とネタの守備範囲広いな、この人。


「沓澤クン、もっと喋れば良いのに。超オモロいじゃん。もったいなくね?」


 洞口さんも分かるネタだったらしく、僕にそんなことを言ってくる。


「いやあ」


 正直、結構ヤケクソになってるから三人と対等に話せてる部分は大きい。クラスのトップ女子たち三人に昼飯を誘われて断るなんて出来るハズもなし、受けるしかなかった状況。ボロが出ないように当たり障りのない話し方をしても、つまんないヤツと蔑まれるかも知れない、逆に粗相があって嫌われるかも知れない。どっちに転ぶにせよ、結局、ヒエラルキー最下層の僕など三人の女神の胸先三寸。だったらもう好きにしてくれと開き直る以外なかった。


「一人で作業してる方が性に合ってるんで」


「作業?」


「あー、えっと、趣味でモノ作ったりしてるんですよ」


「へえ。工作とか好きなタイプかあ」


「そうですね。工作員です」


「工作員は意味違ってくるべ」


 益体のないやり取り。みんな弁当も平らげてしまったし、何となくお開きの時間だな、と。向こうもそう思ったのか、三人揃って立ち上がり、机を持ち始めた。僕も運ぶのを手伝う。

 と、そこに男子が一人やって来て、少し強引に僕が運ぼうとしていた椅子を持ち上げて、溝口さんの方へ合流する。彼女は小さく「ありがと」と礼を言っていた。


 ああ、思い出した。時々この三人のギャルグループと絡んでるイケメンの人。韓流アイドルみたいにツルツルの美白肌にショートマッシュと言うんだったか、頭全体が丸目の印象を受ける流行りの髪形をしている。

 

 少しだけ振り返ったイケメンさんは、険しい表情だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] クラスのギャルの前でいんゆめネタやるとは気合い入ってますねぇ
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