表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/225

41:陰キャがねむそうだった

 <星架サイド>



 閉会式。眠たくなるようなスピーチを、学生代表、校長の順で繰り出されて、あくびが出る。

 ちなみにアタシと康生の、もう一つの出場競技、綱引きは勝った。康生の真後ろをゲットして、背中とかガン見してるうちに何か勝ってた。ちなみに総合では白組の勝利だったらしい。マジでどうでも良いんだけどね。


 アタシとしては康生の三塁打がもう忘れらんなくて、何度も脳内リピしてる。あれ生で見れただけで優勝だから。

 けど危なかった。リプレイ検証に映像提供してたら、好きバレしてたかも。近くに来た時とか真剣な横顔ばっか撮ってたし。アタシの「は~ん」みたいなキモイ声も入ってたし。キャプテンのは何故か足腰フォーカスだった気がするけど、アレも何だったんだろね。


 宮坂に言った言葉の数々。全部アタシにも少なからず当てはまる。アタシもバスケ確かに頑張ったんだけどさ、やっぱ意外と簡単に動けて、労せずっていうか。また持って生まれたものに助けられたっていうか。もし下手こいてたら、誤魔化すようにヘラヘラ笑って虚勢張ってた可能性は絶対ないとは言い切れない。


 でもさ。やっぱ他の頑張ってる人を馬鹿にするのだけは違うし、それは許せんよ。多分アイツも無意識に自分の方がダサイって分かってたんだろな。殊更に「地味」だとか「パッとしない」とか言ってたのは、その反動だ。しかし思い出したらムカついてきた。康生の作る物を「そんなもん」とか言いやがった。その「そんなもん」で人生救われてガチ恋してんだよ、こっちは。


「えー、ですからね。単純な、目に見える勝ち負けだけの話に終わるのではなく、柔道で言う自他共栄の精神を育む、そういう……」


 て言うか校長マジなげえよ。いつまで喋ってんだよ。あ、康生が目シパシパしてる。ちっちゃい子みたいに手の甲で擦ってる。かわいい。


 まあ何だかんだ、実り多い体育祭だったかな。康生のホームラン、筋肉、おかず交換、キノコ狩り。ほぼほぼ康生絡みだな。評価軸が如何に康生と楽しい時間を過ごせたかに終始しとるわ。まあ恋する女なんて、そんなもんやろね。


「つまり、勝った負けたが重要ではないんですね。対戦相手を敬い、共に栄え、高め合える場を……」


 まだ話してんのかよ。てか似たようなの、さっき聞いたぞ。







 ようやく読経みたいなスピーチが終わって、閉会。担任の太田おおた先生から今後の予定についての簡単な説明があり、解散になった。まあ要するに土曜日の今日を体育祭で使ってしまったから、振替で来週の月曜日が休みになると。


 康生を探して、その後姿を見つけた。帰りは一緒に帰りたい。今日は朝は別々だったんだよね。どっちも向こうの親御さんが来るんかなって遠慮して、昨日の晩に別で登校しようってレインし合ったんだけど、蓋開けてみたらどっちも来んかったっていう。もっと話しときゃ良かったね。


『一緒に帰ろうぜ。いつもの曲がり角で待っとく』


 とレインで送った。正直、さっきの宮坂の件でアタシと康生がそこそこ仲良いのはクラスにバレた気がするんだけど、それでも康生の許可なしに直接話しかけるのはやめとこう。


 と、康生がメッセージ新着に気付いて、スマホを確認。キョロキョロしてアタシを見つけると、首を左右に振った。え? 無理ってこと。微妙な顔で校門の方を指さした。そしてそのまま歩き出す。


「え? え?」


 どういうこと? ついて来いってこと? よく分かんないけどアタシも慌てて康生の後を追う。


 やがて校門を抜け、左に曲がって……康生の背中に追いつこうかという所で、


「康生。お疲れ」

「コウちゃん、お疲れ様」


 二人分の声が掛かる。当の康生もビックリしてるみたい。その背中越しに前を見ると、若い女性と、線の細い男の子がいた。すごく女顔で、男子制服を着てなかったら性別を取り違えてたかも。というか、男装してる女の子じゃね? ってレベル。


「そっちの子は?」


 女性の方が康生越しにアタシに目線を合わせる。康生は首を忙しく動かして、


「こっちはクラスメイトの星架さん。溝口星架さん」


 とアタシを謎の女性に紹介する。そして今度はアタシを振り返って。


「それで、こっちの二人……女性の方が姉です」


 お、お姉さんか。マジでホッとした。


「そっちの中学生はメグルっていう従兄弟の子です」


 メグル……メグ……えええええ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あー、親戚でしかも年下か。 確かに、それは喜んでくれた時のインパクトは強いわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ