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35:ギャルが大活躍してた

 今週末、学校生活でも屈指のクソイベント、体育祭が控えているということで。それに伴い体育祭実行委員なる人事選考があった。僕としては実行委員の競技免除はマジで魅力なんだけど、当日までの拘束時間の長さは最悪。


 結局、立候補は見送り、僕は綱引きと野球に出ることになった。うちの学校、体育祭と球技大会が一緒になってるらしい。一応はそこそこ偏差値高い進学校だし、運動系は力入れてないんだろな。


 帰り道。昨日言いそびれていた、洞口さんのぬいぐるみ製作用の資料を星架さんに頼んだ。レインで画像が送られてくる。なんか後ろめたさがあった。本人の居ないところで女の子の画像のやり取りとか。


「体育祭も近いし、全然急がんくて良いよ?」


「まあ、そんなにかかんないですよ。前回の僕のより葛藤もないし、実在の人間を作る勘所みたいなのも掴んだんで」


 時間給だから、一時間くらいで作ってあげたい。


「うん、任せるわ。ホント無理せん範囲でね? しかし、体育祭かあ」


「星架さんは運動神経どうなんですか?」


「そこそこよ。昔は病気で動けんかったけど、やってみたら意外とイケた」


「そういう話を聞くと僕も何だか嬉しくなります」


「アタシの親かよ」


 とツッコミながらも、星架さんは面映ゆそうだった。

 ちなみに彼女の方はバスケットボール、そして僕と同じ綱引きに出る。僕の自意識過剰でなければ、男女混合競技を選ぶ時、僕と合わせてくれたんだと思う。









 そしてあっという間に来てしまった、体育祭当日。ちなみに洞口さんのぬいぐるみは、数日前に既に作って渡してある。星架さんだけじゃなく、ご本人も出来を確かめたらしく、教室で何とも言えない顔で見つめられたのを覚えてる。


 閑話休題。


「はい、みんな~! グラウンドに出るよ~!」


 担任のおばちゃん先生がふくよかな体を揺らしながら先導する。ああ、いよいよ始まってしまったのか。


 学年の垣根を飛び越え、偶数クラスが赤、奇数クラスが白で、それぞれの得点を競い合うそうな。うちのクラスは2組なので赤チームとなる。


 初っ端のプログラム、男女のバスケットボールの試合が行われた。うちのクラスは女子が1年3組と、男子が1年5組と当たった。知り合いすら居ない男子チームの方へ行っても仕方ないので、僕は女子の応援に行った。と言うか行かないと後で星架さんに鬼電されて詰められそう。


「星架!」


 洞口さんと園田さんの華麗なパスワークで、相手を翻弄。最後に逆サイドでフリーになった星架さんにワンバウンドパスが渡った。


 星架さんはその場でバネ仕掛けのように跳ねた。後ろで束ねた銀と翠の髪の房が遅れて宙を踊る。そしてそのまま指先がボールを放ち、


 バスッ


 と乾いた音を立ててゴールに吸い込まれた。


「きゃあああ」


 という歓声に横を見れば、何人かの女子が星架さんを見て興奮していた。たぶん別のクラス、赤いゼッケンをつけてるから、赤組の味方なんだろう。


 同組のよしみで応援に来たら、星架さんの力強いポイントゲッターっぷりに、虜になったようだ。カッコイイし、無理もない。もしかすると、雑誌の読者たちの中でもこういうオーラにあてられて、ファンになった人も少なくないのかも。


「意外と子供っぽいとこもあるんだけどな」


 或いはそれは、8年前を知っている僕にだけ見せてくれる顔なんだろうか。もしそうなら、そこまで信用してくれてるなら……


「きゃあああ! また決めたああ!」


 歓声の先、またもキレイな弧を描いて、星架さんのシュートがネットを揺らす。いや、ホントうまいな。帰宅部にしとくには勿体ない。


 と、そこで。星架さんが体育館の中を見回した。僕と目が合うと、弾けるような笑顔でVサインをする。うお、まぶしっ!


「うわ、うわ! あ、あたし!? 今のあたしに!?」


 隣の女子が飛び跳ねるようにして、甲高い声を上げた。


「違うから、絶対こっちだから」


 更にもう一つ隣の女子が張り合うけど、多分どっちも違う。まあ彼女らには完全に空気と化している陰キャなんか目にも入ってないから、仕方ないんだろうけど。


 結局、女子のバスケットボールは、星架さんの大活躍もあり、うちのクラスが快勝した。


 試合後、レインで『おめでとうございます』と送ると、『次は康生の番。気張れよ!』と返ってきた。

 

 僕は星架さんと違って運動神経がアレだから、気張っても何も出ないと思うよ……

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