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28:ギャルが幻滅されてた

 星架さんに案内されたのは、彼女のマンションのすぐ近くにあるスーパーだった。一応県内でチェーン展開している店名だけど、割とボロい。あ、思い出した。前は別のスーパーだったけど、それが潰れて、居抜きで今の店になってるんだった。


「穴場じゃね? 高校生とか誰も居ないし」


 確かに。お客さんは主婦層が90%越えてそう。


「何か買ってイートイン行こ」


 僕は紅茶、星架さんは烏龍茶、共有でスナック菓子。色々と迷惑かけたからと、星架さんが会計してくれた。僕はもちろん遠慮したけど、押し問答になってもアレなので、引き下がった。


 イートインコーナーも閑散としていて、端っこの方でお爺さんが難しい顔で競馬新聞を読んでいる以外は、お客は誰も居なかった。僕たちがイスを引く時、ガーッと大きな音がして、お爺さんがビックリしてたけど、星架さんは気づいた様子もない。流石だなぁ。僕も人目を気にしすぎない性格になりたい。


 しかし……寂れたスーパーの片隅でバリバリのギャルが陰キャと座ってるというは、何とも場違い感が凄い。


「結構来るんですか?」


「まあ近いからね。徒歩1分。安いし。もう少ししたら惣菜の値引きシール貼りだすんよね」


 ますます生活臭が。まあでもギャルだって、生活してるんだから、そういうのも気にするよね。


「あー……ひょっとして幻滅した?」


「なんでですか?」


「おばさんくさいって。何か生活感っていうか」


「みんな生活してるんだから、生活感があるのは当たり前では?」


「そ、そうだよね。良かった」


 何か知らんけど、安心したらしい。


「前にさ、読モの仕事でカバンの中身紹介みたいなのがあって、そん時に財布の中に入れてた電気屋のポイントカード、特別それを写す気はなかったんだけど入りこんでてさ。そしたらツイスタに、ネットで買わないんですね。そんなポイントカードまで溜めてて、なんか冷めました、みたいなリプが来て」


「あー」


「アタシは王女様じゃないから。つーか読モのコンセプト分かってる? みたいな」


 僕もあまり詳しくはないけど、本業のモデルとは違って、あくまでも読者と同じ立ち位置、一般目線で情報発信するのが彼女たち、という認識だ。

 ただまあ、お客さん全員が全員、キチンとコンセプトを理解しているなんてことは、どんなジャンルでも有り得ないことだ。或いは、それを分かってても、憧れるうちいつの間にか神格化してしまった可能性もある。あとは、こんなこと言いたくないけど、星架さんのアンチって線も。


「だから康生がそう言ってくれて、すげえホッとした。名も知らん人ならまだしも、康生に幻滅されたらアタシ……」


「アタシ?」


「あ、いや、ほら。そ、そうだ。お菓子食おうぜ」


 なんか焦った感じで、星架さんはスナック菓子の袋を開ける。じゃがいもをスライスして揚げた、子供から大人まで愛される国民食だ。割り箸を使ってお互い2、3枚つまむ。


「しかし、改めて凄い偶然でしたよね。まさか同じクラスに8年前の同級生が居たなんて。しかも洞口さんも、昔同じクラスだったってことなんですよね。申し訳ないけど全然絡みなかったから覚えてないですけど」


「ね。アタシなんてコウちゃんの手がかり探しに母校行ったんよ。けどあだ名しか知らんし、当時の担任の先生もう辞めちゃってたし。個人情報保護の観点から、あんま教えられんとか言われるし。食い下がってたら変な目で見られるし」


 ああ、あの猪突猛進、母校の小学校でもやらかしたのか。持ってる情報は「コウちゃん」ってニックネームだけの状態で体当たり出来るあたり星架さんだなあ。


「結局、全然わかんなくてさ、半分以上諦めてたんだけど、いやホント、まさか同じ教室に居たなんてね……まさに……う、うん……うん」


「運が良かった?」

「運命だよね」


 二人の声が重なる。なんて言ったんだ? 綺麗にハモッてしまって全然聞き取れなかった。だから聞き直そうとしたんだけど、星架さんはなんだかムスッとした顔でスナックを頬張り始めたから聞き辛くなってしまった。

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