あとがき
作者の語りや、執筆中の裏話を記しています。そういうの要らないよ、という方はブラウザバックでお願いします。
改めまして、拙作「ギャルの自転車を直したら懐かれた」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。こっそりお読み下さった方々、評価やブックマークをつけて下さった方々、ご感想をお寄せ下さった方々、誤字報告を入れて下さった方々。全ての読者様に多謝です。そして……戦国武将の皆様、誠に申し訳ございませんでした。
今作「ギャルなつ」ですが、ありがたいことにランキング上位にまで押し上げて頂いて、非常に貴重な体験が出来た思い出深い作品となりました。私は無個性な内容の短編か、正気を疑われるような内容の長編しか書けない人間なので、まさかこれほど多くの方々に評価されるなど夢にも思っておらず、本当にビックリしたのを覚えています。朝起きて、昼休みに、帰宅して、見る度にポイントが増えている現象はちょっと他では形容しがたい感情を呼び起こすものでした。
まあきっとこれが最後というか、今作がマグレ当たりというか。恐らく今後ランキングに載るような作品は書けないと思うので、ほとんどの読者の方々とは一期一会になるのだろうとは愚考しますが。それでも本当に良い思い出を頂けました。ありがとうございました。それでは……と〆ると味気なさすぎるので、作品内容についても書いてみます。
そもそもの執筆動機として、陰キャにガチ恋(しかも片想い)するギャルを書きたいというのが一番にありました。特に何かの作品に影響を受けた、という心当たりもなく、ふとそういう話を書きたくなった。それだけの事だと思います。
ただ書くにあたって、幾つか譲れないポイントを設けました。まずは主人公を「なんでこんな無個性なヤツがカーストトップのギャルに惚れられるんだ?」と思われるような子にはしたくなかった。キチンと魅力があって、好意に説得力を持たせたい、という所から逆算して、子供時代のフラグという手法に行き着きました。
まあこれ自体は使い古された手垢塗れのメソッド……なのですが、逆に使われすぎて最近は見かけなくなったヤツでもありますね。この令和にやれば寧ろ新しいのでは、と安直に考え、けどそのまま使っては誰でも分かるだろうなと。そして、その誰でも分かる筋を、勿体つけても鬱陶しいだけだろうと考えた末、「じゃあ逆に最序盤にブチ込んでやるか」という結論に至り、例の構成を採りました。温故知新かつ一捻り、という狙いですね。
ただ効果の程は……実際どうだったのか私自身にも分からないですね。面白い構成だと興味を惹けたのか。或いはポカーン過ぎて離れて行った人の方が多かったのか。
また。譲れなかったポイントとしては、ヒロインの造形もそうですね。いわゆる聖女ヒロインには絶対にしたくなかった。間違えて欲しいし、最初は距離感なんか合わなくて当然(ギャルと陰キャだし)で、感情のまま暴走してしまうこともあるだろうし、それを後悔して思い悩んで欲しかった。でも同時に、短所は長所でもあって、主人公が言えないことを言ってあげたり、素直な感情表現がある種の救いになっていたり。
これは主人公にも言えることですけど、キャラにその子だけの個性を持たせたかったんですね。テンプレの聖女ちゃんと聖人くんの、一年後には書いた私すら忘れてそうなカップルは嫌だった。読んだ人が、しばらく経って本作のタイトルを目にした時に、「ああ……あの風邪の時に見た変な夢を創作物にしたらコンクールで受賞して、その賞金で復讐しようとしたら鼻の頭テカリンピックに巻き込まれた子」っていう具合に、簡単に思い出せるくらいキャラを立たせたかった。
そんな風に命を吹き込むつもりで。そして縦横無尽に走り回らせるのが楽しくて楽しくて。睡眠時間を削ってまで書いていました。当初は「ギャルなつ」というくらいですから「夏」に終わらせるくらいの文量を予定していたのですが、筆が乗ってどんどんイベントが増えて、夏どころか秋の終わりに完結という。まあそれくらいには情熱を込めて書いた作品でした。正直、書き上げた今は充実感と同じくらい寂しさもあります。
細かい所で言えば、話の組み立てが微妙な箇所があったり、描写不足が目立ったり、自身の筆力のなさに乾いた笑いが漏れることも多々ありましたが。それでも今の自分に出来る限りの物は注ぎ込めたかなというのが、嘘偽りのないところですね。当分は現実恋愛の純愛方面のモノは書けそうにないくらい。引き出し空っぽですからね。
最後に、執筆中の本当に取り留めのない裏話をいくつか。ここまで以上にまとまりのない乱文になります。予めご了承ください。
①夢の中でストックを書いていた
毎日投稿って初めてやりましたが、想像以上にキツかったです。もうやらない、というか出来ないと思われます。疲れ果てて帰って来ても、翌日の3時にあげる為に推敲作業はやらないといけない、という帰宅後も義務がある感じは割と幸福度がゴリゴリ下がります。執筆奴隷ですね、言うなれば。
②サブキャラをもっと上手く使いたかった
というか、宮坂のエピソードはもう一つくらいあったし、横倉さんも然りでした。ただ諸々の事情を考慮してボツとした経緯があります。また星架ちゃんの両親についても、もう少し深掘りしたかった。だけど康生クンと星架ちゃん、作中で一回ずつ(対比構造も意識して)の過去回想だけにしておこうと決めていた事もあり、断念したんですよね。三人称で書いたり、誠秀さんサイドの一人称も考えたんですが、今作はやはりメイン二人の物語ということで、視点も増やしたくなかったんですよね。こういった縛りもあって、サブキャラはあまり納得する使い方は出来なかったなあ、と。
③各話のタイトルについては苦労した
難しい縛りをつけてしまったなあ、と。重要な話以外は、康生クンの一人称の回は「ギャル」を主語にして、星架ちゃんの一人称の回は「陰キャ」を主語にしてつけていたんですが……これが苦しい回が幾つかありましたね。康生クン全然でてこないやん、とか。四苦八苦してつけたタイトルは、恐らく読者の方々からも見透かされているでしょうね。
④プロットはそこまでカツカツに作らなかった
まあそもそも、私のプロットはいつもフワフワですけど。ラストを決めて、そこに到着する為に必要なイベントを考え、書き出し、その間の繋ぎは場当たり的、みたいな。
今作の場合では……星架ちゃんの過去(病院での出会い)、康生クンの過去(中学時代のトラウマ)、星架ちゃんのモデル業への葛藤、宮坂の成敗(というか星架ちゃんの株が康生クンの中で上がるイベント)、星架ちゃんの両親の問題、康生クンの復讐。ここら辺が最初からあったイベント構想ですね。ここでも対称構造のように同数に合わせてます。
そしてこれらの重要イベント間は、その時々のノリとアドリブ。登場人物たちの自然な掛け合いの中で生まれるイベントに任せておきました。
⑤キャラの名前の由来
洞口さん→堂々としてるから。御堂さんとかも候補にあったけど、ファーストコンタクト時に、康生クンが周囲に関心を持つ余裕がない描写のために、溝口さんと混同させたかったので、この名前に。
重井さん→体重が重いから。下の名前(雛乃)に関しては鳥の雛のように餌付けされまくる様子から。
園田さん→ビッチ担当という事で、本当は蜜とか花とか入れようと思ったけど、セクシーすぎるので園くらいで匂わせる感じ。
横倉さん→横の席だから。倉というのは実は実家がお金持ちという裏設定から。ちなみに、作中でたまに康生クンの作品を買ってくれている歴女というのは、彼女の母親という設定。
堀田先輩→ホモ。
宮坂→名前を考えている時、とあるサイトで見かけた知らない人の苗字を勝手に貰ってきました。
太田先生→太ってるから。重井さんと被るけど。
灰塚→容疑がグレーだから。
黒瀧→クロだから。
白石クン→シロだから。
持田クン→康生クンから貰った木彫りをまだ持ってるから。
メグル君→特になし。単純に女の子にも男の子にも取れそうな名前を考えて、テキトーにつけた。
春さん→こちらも特になし。明るい性格から何となく。
明菜さん→整骨院の待合で、主人公の母親の名前を考えている時に、聞こえてきた何か(著作権に引っかかるので明記しないよう運営側から通達されました)からインスピレーション。
芳樹さん→知人。寡黙で優しい人ということで借りました。漢字は違うけど。
チャリエル→○○エルってのが天使っぽいので使おうと思い、チャリと合体させた。
誠秀さん→良い意味の漢字を組み合わせてる時に、カチッとハマったので。
麗華さん→別作品の構想に居た人なんだけど、そっちがまとまりそうにないので引っ張ってきました。
星架さん→主人公の記憶に多少は引っかかるくらいの珍しさで、綺麗で、響きの良い名前。という条件で考えました。スターブリッジ号とか地味に名前イジリも出来て満足。
康生くん→中学時代の苦難がある分、ここからは安泰に生きて欲しいなという思いから。後は誰からも呼ばれやすいように平易な発音という点も心掛けました。まあ作中、彼を名前で呼ぶ人は限られてますけど。
名前に関しては、こんなところですね。書き出して並べてみると我が思考回路ながらチョット面白い。
⑦恐らく10回以上は書き直した文章が何箇所かある
序盤の山、「陰キャにもう一度」は最後の一文「アタシは初恋の続きを始めた」に繋げるために、書いては消し、書いては消しを繰り返しましたね。
あとは何と言っても康生クンのカタルシス関連の、本音のぶつかり合い。あそこも苦労しました。一番最初の一筆書きした時なんか、書きたいセリフが先走り過ぎて、両者ともに言いたいこと喚いてるだけの会話のドッジボール状態でしたからね。書いてる私自身も感情が昂っていたのでしょう。
告白シーンも、結構ギリギリまで手直ししてた記憶があります。
そして本作を〆る最後の数行のリライトは……ヤバかったです。休日に書いてましたが、詰まりすぎて気分転換に散歩に出たくらいですからね。そして、風景描写で〆ようとしたりもしましたが、やっぱり最後は康生クンの一人称らしく終わらせたくて、結局あの一文に落ち着きました。少しタイトルにも絡められてますしね。と言いつつ、まだ実はシックリきてなかったりします。
さて。長くなり過ぎましたね。やっぱり半年近く熱意を持って付き合ってきた作品ですから、思い入れも強いようです。まだまだ語り足りないですが、キリがないので、ここら辺でお暇しようと思います。こんな末筆まで読んで頂き、ありがとうございます。またご縁がありましたら、お会いしましょう。




