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174/225

174:陰キャに狩猟本能があった

 <星架サイド>



 部屋のベッドにボスンと頭から突っ込む。最近このムーブご無沙汰だったな、そう言えば。まあ順風満帆だったもんなあ、ここのところは。けど。


「……久しぶりにやらかした」


 枕に打ちつけた鼻がジクジクする。


「はあ」


 横を向いて、ラックに飾ってある康生からの快気祝いを眺める。ああ、確かにあのジュニアアイドルの面影はあるかも。顔はアタシだけど、体つきというか。


「疑ってたってより、嫉妬か? これ」


 体を似せるってことは、それだけよく観察したってことだろうし。アタシ以外の女の子の体を、さ。


 うん、いま改めて振り返ると絶対そうだわ。アタシの中で康生の説明は腑に落ちてたし、本気で性的な目的で所持してたと疑ったのは最初だけ。その後の問答は全て嫉妬に駆られて、か。それを最中に気付けないとか、客観視できてなさすぎだろ。


「うああ」


 しかも。それならそれで、せめて可愛く妬けたら良かったけど、実際は意固地になって、誤解が解けた後もロリコン連呼してしまったもんな。康生からしたら、さぞ理不尽だったろう。


 幸いなのが、康生自身も少しは強くなってきたおかげか、或いはアタシに慣れてきたからか、言われっぱなしじゃなかったこと。

 反撃で、お、おっぱい触られちゃったし。以前の不可抗力とか、最近の甘えん坊とかじゃなくて、自分の意思で能動的に触ってきた。てかちょっと揉まれた。


 そしてそれと同時に言われた言葉。

 あの子が好きなのはアタシの胸。アタシの体。


「~っ!」


 でもやっぱそうなんだね。

 あんなに大人しくて優しくても、男の子。ちゃんと狩猟本能みたいなのはあるんだ。アタシの体を手に入れたいと思ってるんだ。


「いつか。あの子が我慢できなくなった時は」


 モノにされちゃうんだ。大人しくて可愛い康生が変貌して。アタシが惹かれてやまない、夕陽差す工場(こうば)で創作物を見つめる瞳。告白の時と同じように、あの真剣な瞳がアタシに向けられて……欲しいって言われるのかな。


「……顔、あっつ」


 少しだけ自分でも左胸を触ってみた。康生の指と全然違う。もっと広い掌で簡単に全部包み込まれた、あの感覚とは程遠い。


「って!」


 胸の先っぽと、そして少しだけ下腹に甘い疼きが走った気がするけど、理性の力で無視する。やばいやばい。煩悩退散。煩悩退散。

 …………アタシ、ムッツリじゃなくてガッツリかも知れんな。


 












 夜。千佳が帰ってきた。つか帰省から戻ってきたのを帰ってきたって表現すると、ややこしいな。

 とにかく、9時に横中駅着ということで、ギリギリまで荊鬼(いばらき)ライフを満喫してきたみたい。良いことだ。


 明日、名産のメロンを持ってきてくれるというので、雛乃と康生にも連絡をつけて、全員で会うことになった。何気に全員集合は久しぶりだな。アタシたちの報告会のとき以来か。


 っとと。電話が掛かってきた。


「おう、久しぶりって程じゃねえけど、元気してたか?」


 なんでわざわざ電話? と思ったけど、そっか。アタシが今年は帰省できなかったから、気遣ってくれてんだな。ホント良いヤツだよな、改めて。


「おう! 毎日イチャイチャよ!」


 なるべく明るく、おふざけみたいな口調で。


「ははは、そっか。クッツーいて良かったな」


「……うん、それはガチ」


 あの子も千佳に負けず劣らず良い子だからな。必ず毎日の別れ際には「明日は何しましょうか?」って話題にしてくれるから、すごく会いに行きやすいんだよね。ああいうのも目立たないけど、不断の努力だよな。本当に大切にしてもらえてる。


「相変わらずラブラブのようで……もしかして、ウチが居ない間にヤッたか?」


「ヤッ!?」


 タイムリーすぎるぞ、おい。


「その反応、マジか!?」


「い、いやいや。まだ! まだだから!」


「まだってことは、近いところまでは行ったんか?」


「う。ま、まあ。胸、触られちゃったけど」


「んだよ。そんなんしょっちゅうだろ。つか星架から押し付けてんだろ、いっつも」


「いや、そうじゃなくてさ」


 ちょっとだけ言葉を探す。


「その、性的に? アタシのを触りたいって明確に言葉にされたというか」


「え! マジ? あのクッツーが? 草食陰キャの日本代表みたいなクッツーが?」


 勝手に人のカレシを選抜するな。


「まあ、うん。半分アタシが挑発したような形になった……のかな?」


 そうしてアタシは、これまた久しぶりに千佳に恋愛相談することになった。


「あの花火大会の時で最後だと思ったんだがなあ」


 と、ぼやく千佳には今度また何か奢ろうかなと思います。

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