表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/225

16:二人の過去(前編)

 <星架サイド>



 アタシは子供の頃、体が弱かった。入退院を繰り返してたせいで、学校でも友達がほとんど出来ず、まあ有体に言って寂しい幼少期を過ごしたと思う。そんなアタシの心の支えはアニメだった。今でこそ、あんまりだけど、あの頃は本当に色々なジャンルを観ていた。


 その中でも、魔法少女モノが特にお気に入りだった。まあアタシにも一般的な女児の感性があったって事だろね。パパがサブスクに加入してくれたおかげでかなりの数を観たと思う。そうして観あさっているうちに、一際目を惹く子に出会った。


 魔法少女マジカル☆クルセイダーズに出てくる、クルルちゃん。アタシと全く同じで、体が弱くて、しょっちゅう入院している子だったけど、魔法少女としての能力は作中ダントツ。いつも他の子たちがピンチの時に、無理をおして駆けつけて、戦闘が終わるとまた倒れちゃって。


 ぶっちゃけ、メッチャ憧れた。悲運の最強キャラっていう浪漫……ではなく、その心の強さに。ちょっと体の調子が悪いとまた病院に行かなきゃいけない。それが当時のアタシには嫌で嫌でたまらなかった。なのにクルルちゃんは誰か他の人の為にそんな不便を受容できる。アタシの人生に結構大きな影響を与えたかも。


 誰かの為に自分の何かを犠牲にしてでも行動できる人を尊敬するようになった。今もそれは変わってない。


 そんな生活を続けていたある日。小学校三年生の頃だったかな。あまり学校に来れないアタシの為に、クラスメイトたちが有志で、何か贈り物をしてくれるという催しが開かれた、らしい。缶バッジを持って来てくれた千佳ちかから聞いた。ちなみにあの子ともこの件がキッカケで仲良くなって、今の今までつるんでる。


 他にも何人か女子が小物をくれたのを覚えている。有志ということで人数は少なかったけど、みんなお小遣いを削ってアタシの為にプレゼントをくれた。感謝しかない。実際、小学校の低学年でこんな優しい心を持ってる子たちだから(今は没交渉の子ばっかだけど)幸せになってて欲しいって本気で思う。


 これだけでもアタシは大感謝だったし、満ち足りてたんだけど、最後に最大のサプライズがあった。唯一の男子からの贈り物があると言うのだ。ビックリした。担任の先生と女子数名に連れられて、やって来た男の子。大人しそうで、服装も地味、容姿で目を惹くような所は特に無い子だった。


 男の子はアタシを見るなり、


「なにか、なにか作るよ。キミがいちばん好きなものをゆってみて」


 そんなことを言ってきたのだ。全く想像さえしてなかった内容で、アタシは固まってしまった。


「コウちゃんは、メッチャてさきがきようなんだよ。しかもいーっぱいれんしゅうしてるから、なんでも作れるんだ!」


 女子の一人(もう名前思い出せない、マジごめん)が教えてくれる。


「なんでも?」


「うん! わたし、リップルちゃん作ってもらったから。ほら」


 その女子が携帯の画面を見せてくれた。リップルちゃんは猫と人間のハーフみたいなキャラクターで、マジカル☆クルセイダーズの後継作に出てくるキャラだった、ハズ。確か。

 画面に映し出されたリップルちゃんは、かなりのクオリティだったと思う。少なくとも小学生の作るレベルは完全に超えていた。


 その時の興奮をアタシは未だに覚えている。魔法使いさんだ! ってガチで思ったし。まさか自分と同い年の子供が、こんな既製品と見紛うものを作れるなんて、魔法使い以外ありえないって。そして何の疑いもなく、リップルちゃんが作れるなら、クルルちゃんも作れるって思って、


「クルルちゃん! マジクルのクルルちゃん作って!!」


 と頼んでいた。作れるっていうか、もう魔法使いだし、パッと出せるんじゃないかとすら思ってたな、確か。コウちゃんは分かったって頷いて、アタシに参考資料を要求した。確か原作漫画の方を見せたと思う。何ページか捲って、真剣に見入ってたコウちゃんは、


「うん、作れるとおもう。いっしゅうかんまってね」


 と言った。アタシは「なんだ、見たらパッて出せるんじゃないんだ?」って思ったのを覚えてる。いや、ガキって凄いよね。


 けど、そんな不満はすぐに吹き飛んだ。コウちゃんがスケッチブックを取り出して、シャッシャと物凄い勢いで線を引き出したから。他の女子たちも、先生まで、気になって覗き込んで、アタシもベッドから降りてそこに加わって。目にしたのは魔法だった。変な所に引いてた線が、繋がっていって、いつの間にか間違いなくクルルちゃんになっていく。アタシはその様を目を輝かせて見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >女子の一人(もう名前思い出せない、マジごめん) 伏兵の予感…例の子とすると、寧ろ名前を思い出せない方が良かったのかもしれないが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ