122:陰キャの最終相談をした
<星架サイド>
「千佳~、これもうゴールだよね?」
結局、自分ひとりでは抱えきれなくて、助言天使チカエルにまたもや相談してしまった。てか、アタシの推測が正しいって言って欲しかった。
「……まあ、多分な」
「だよね? だよね?」
やっぱ、第三者の千佳から見ても、確定レベルってことだよね! じゃあもう……両想い。4日後に告白される。あ、いや、正確にはアタシが先に告ったことになってる(どうもあの時は無我夢中で実感が微妙に乏しいけど)から、それに対する返答を貰えるってことか。
「クッツーがわざわざ相手フる為に花火大会までは呼び出さんだろうな。アンタを盛大に散らせて、汚ねえ花火だ、とか言ったらウケるけど」
「ウケんな! アタシの康生はそんな子じゃありません~。純粋で優しくてモチモチなんです~」
「モチモチは関係ないだろうけど……まあ良いヤツなのは間違いないな。ウチも安心してアンタの世話係を降りられるってモンだ」
「世話係って」
いや、実際この数ヶ月間、康生との恋愛相談で何回もこうして電話してしまってるからな。うん、マジで世話になった。
「……あんがと。3ヶ月近く」
「ん」
「千佳が居なかったら挫けてたかも。つか、あの暴走の後、康生に住所教えてくんなかったら、縁がそのまま切れてた可能性、割とあるし」
気持ちを整理し終えて、そこからまた関わろうと思い直しても、今度は康生が心を閉ざしてしまってたかも知れない。特にあのトラウマを聞いた後だと、本当によく来てくれたよなって感じだし。多分それは千佳が介入してくれたタイミングが絶妙だったからってのもあると思う。
「おだてても何も出んぞ? まあ……話を総合すると、アンタが木彫り見た時に金出して買うって言ったのも相当大きそうだけどな」
あの最初のモールデートの時までの短い交流の中で、たぶん一番あの子の琴線に触れてたのはそこだろうな、とは思うけど。それでも、やっぱ千佳のしてくれた事は大きいよ。
「つーかな。もう勝った気でいるけど、まだ本当に告白されたワケじゃないからな? 十中八九そうだろうってだけで」
「いやいや。花火大会、二人きり。何も起きないハズもなく」
「……例えば、チャリエルの等身大像を作るから展示許可をくれ、とか」
「……」
ワンチャンあんのか、そのパターン。康生だしな。まさかまさかの。いや、まあ大切な話っちゃ、そうなんだろうし。あの子にとっては。
「い、いやいやいや。流石に。流石に、ね?」
「自分で言っといてなんだけど、マジであり得るかもって思えるのが沓澤クオリティだよな」
「うううう。ないって言ってくれ~。これで勘違いの完全別件だったら、膝から崩れ落ちるぞ」
心折れる。多分、いや絶対に泣く。ボロボロ泣く。まあそれでも諦めるって選択肢はないワケだけどさ。
「そしたら、もうラチがあかんから押し倒せ」
「やるわ、それもう」
襲いかかる。そこまで頓珍漢だと、ファーストキスはロマンチックにとか言ってられんし。
いや、まあ本当に無いと思うけどね。思いたいけどね。時々すさまじい外し方してくるからなあ、あの子。
「まあ4日後だな。何にせよ。それまでは大人しく待つんだろう?」
「うん、そのつもり。大丈夫だよね、それで」
「多分な。向こうも心の準備あるだろうし……本当に告白なら、だけど」
「まだ言うか。大丈夫だし」
クソ。安心を得たかったのに、千佳が余計な可能性を示唆するモンだから、自分に言い聞かせる羽目になっちまった。
「じゃあ。聞いてくれてサンキュ」
「拗ねんなって。悪かったから」
「……」
「……最近のクッツーは結構な頻度でアンタのこと目で追いかけてるし、すごく自然に笑うようになった。加えて、今回の騒動で、途轍もない信頼を勝ち得てるのは間違いない。まず間違いなく好きにはなってくれてると思うぞ」
「ま、マジ?」
目で追ってくれてるとか。教室でも目が合うようになったなとは思ってたけど、アタシの都合の良い錯覚かと。ぬか喜びになったらイヤだから考えすぎないようにしてたけど、やっぱそうだったのか。
「要するに……片想いお疲れ様」
フッと優しく言われるモンだから、急激に胸の奥から熱いものがこみ上げてくる。それと並行して勝手に涙も溢れてくる。
「……ありがと。千佳。ありがと。アタシの親友」
「やめろ。はずい」
「アタシらのキューピッドだ……大天使チカエル」
「絶交すんぞ、てめえ」
怒ってるようで、優しい笑いも含んだ声だった。