1/20
プロローグ
昔々のこと、ある国の王はこう言った。
「人の美しさとは魂と心の美しさよ、外見など器から溢れた美の欠片にすぎない」
それから時は流れ、その国に生まれた賢者はこう言った。
「清らかな精神、ある王の言葉を借りるならば魂と心。それを育むのは健やかな肉体です」
さらに時は流れ、王と賢者に次いで名を遺した剣聖はこう言った。
「筋肉は全てを解決する」
そうして長い長い年月の末に……それらは混合された。
フレム王国、またの名をゴリラによるゴリラのためのゴリラの国。
その国の人間はみな、人類の限界を超えるまで鍛え上げ、先人達の教えを正しく曲解した者達だった。
すなわち……。
「筋肉こそが全て、人は外見よりも筋肉、健やかな筋肉こそ清らかな精神となるのだ」
こうして、フレム王国は筋肉モリモリマッチョ集団しか存在しない国となった。
そして幸か不幸か、その結果全ての国民が等しく戦闘力を得ることとなり長きにわたる戦乱の世をただ一国、無傷で……文字通り国民に一人の死傷者を出すことなく潜り抜けた国としておそれられるのだった。