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そしてナイフを手に取った。  作者: サンタ様
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偽物

「ここ、わからないんだけど教えてくれない?」


「あー、それはね、ここに線を引いて……」


ある日、私はいつものように学校に来ていた。

そして、友達に勉強を教えていたのだ。

私がいつものように教えていると、私でも感じている違和感を友達が口にした。


「なんか、先生が言ってなかった?おんなじこと。なんか先生の授業みたい」


「だ、だよね。わかりにくかった?」


そう。先生が言った言葉がすべて記憶されているのだ。

前まで、こんなに頭はよくなかった。

私はもともとクラスの中でもとびぬけた学力は持っていなかったはずだ。

でも、今はなぜか先生が言ったことをすべて記憶しているぐらい頭がよくなっている。

これも私が機械になったからだろうか。

私がそんなことを考えていると、友達は慰めるようにしていった。


「ま、頭がいいってことはそれでいいじゃん。何にもデメリットなんてないよ。それに、すごくわかりやすいし。教えてくれてありがとね」


そういわれると、機械になってよかったと思う自分がいた。

でも、言われたことをすべて覚えているというのもどこか寂しかった。

テスト前にみんなで必死に勉強することができなくなると考えると、人間としての何かを失った気がするのだ。


「まぁ、ロボットだからね」


私がそういうと友達はどこか申し訳なさそうにしていった。


「ごめんね」







そして、次の授業の体育にて。

私は体操服に着替えて運動場に出ていた。

今日は身体測定だ。

運動ができるのかと聞かれると、元の体よりできる。

今の私は前の体よりも体が言うことを聞いてくれるのだ。

例えば、左手が右手と同じように動くようになった。

私は右利きなのだが、左手でも文字をかけるようになったのだ。

なので、運動面でもそれは同じだ。

足がスムーズに動く。

この柔軟も。

私は足を開き前に倒れる柔軟をする。

今は地面に顔をつけることができる。

みんなも気づいているはずだ。

私はこんなに柔らかくはなかったと。

でも、みんな私に気を使っているからだろうか。

誰もそのことを口に出さなかった。

無駄な気を使わせてしまったと、罪悪感が胸を締め付けた。

そして、初めの項目の五十メートル走。

隣にはいつも一緒に帰る人と並んで走る。

名前の頭も文字が一緒ということもあって、こういう時もいつも隣にいる存在だ。

そして、開始の合図である笛が鳴り響いたところで私は思い切り地面をけった。

思えば、これが初めてロボットになってからの全力疾走だったかもしれない。

五十メートルは思っていたよりも短く感じた。

そして、疲れを感じなかった。

それはまだよかった。

問題はタイムだ。


「よ、4.3秒……」


「……え?」


後ろを振り向くと、まだ走っているあの子がいた。

次の順番を待つクラスメイトはみんな、私をみて唖然としていた。

そのあとも、とても常人では出すことのできない記録を次々と打ち出していった。

次は普通の記録が出るはず……

そう願っても、望んだような記録は出なかった。

そして、体育の授業が終わり、教室に戻るとみんなの私を見る目が変わっているような気がした。

私はみんなを見て見ぬを振りをして、いつものように席に座る。

……いつも来るはずの友達たちが来ない。

それに不信感を抱く。

私、何か悪いことしちゃったかな。

私があんなタイムを出したから、周りからずると思われていたりするのかな……

そんなことを考えながら友達に話しかけた。

私に気づいているはずなのに目を合わせてくれない。

まどろっこしいのは嫌いなので、素直な疑問をぶつけた。


「私、何か悪いことした?」


そう聞くと、友達は異形のものを見るような眼をこちらに向けた。

その目を見たとき、私の背中に嫌なものが走った。

その嫌なものに引っ張られるように私は後ずさる。

それを見た友達は我に返ったのか、引きつった笑顔を張り付けて、


「な、何もしてないよ……大丈夫、大丈夫……」


と、答えた。

……明らかにおかしい。


「ねぇ、何かあったんでしょ?言ってよ」


「な、何もないよ……」


「言って」


「大丈夫って」


「言ってよ‼友達でしょ⁉」


かっとなった私は、友達の腕をグイっと引っ張った。


「触らないで……‼」


友達は叫ぶように言い放ち、立ち上がって私の腕を振り払った。

一瞬、何が起きたのかわからなかった。

でも、目の前の友達を見ると、私が何をしてしまったのか、なんで避けられていたのか。すべてわかった。

そうだ。

みんな、みんな、私のことを……


「ご、ごめん。悪気はなかったの。すこし、びっくりしただけで……」


友達はバツの悪そうな顔をしながら私の腕を両手でなでる。

その両手は、震えていた。

ぶるぶると、私におびえていた。

その震えが私に伝わってきて、こっちまで恐怖に支配されそうになる。


「ごめんね、ごめんね……」


友達はしきりになでながらそうつぶやいていた。


「……こっちもごめん。もう、触ったりしないから、大丈夫。ごめんね。怖い思いさせて……」


「ッ……!」


私は、私を呼ぶ声に背中を向け自分の席へと戻った。

そうだ。

私は所詮偽物。

これまでと同じように接してもらえると思ったら大間違いだ。

本物の代わりになんてなれるわけがない。

だって、私は……


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