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 一応、病院へ連れて行かれ、その後で修司さんとマリアさんから詳しい話をきかれた。

 あたしは突然背後に女の人が現れてあたしの背中を押したのだ、と説明したが、修司さん達はそんな女の人を見ていないそうだ。


「俺達の目には、時音が一人でバランスを崩して川に落ちたように見えたな」


 修司さんが言う。


「俺達の目に見えずに霊能系の時音に見えたということは、犯人は霊体なんだろう。これで確実に「特殊犯罪」として捜査できる」

「霊体……」


 あたしは背中に感じた手の感触を思い出して、首を傾げた。

 ほんの一瞬しか見ていないけれど、あの女の人は霊体じゃなかった気がする。それに、どこかで見たことがあるような。


「本部に連絡を入れる。水川、ご両親が迎えにくるまで時音についていてやってくれ」


 修司さんが病室を出ていき、マリアさんが残った。


「あの、助けてくれてありがとうございます」


 まだお礼を言っていなかったことに気づいて、あたしは頭を下げた。


「マリアさん、本当に人魚姫みたいでした」

「そんな。皆が私のこと「人魚姫」って呼んでくれるけれど、私なんてただ水の中で呼吸ができるだけの能力者よ。たいしたことないわ」


 マリアさんは困ったようにほほえんだ。


 水の中でも息ができて自由自在に泳ぐことのできる能力を持つ彼女は、グロウス在籍時代から水難救助で活躍し、捕まえるのがきわめて難しいといわれる水妖を捕まえたことで一気に有名になったという。

 それなのに、マリアさんの表情を見ていると、「人魚姫」と呼ばれることをあまりよろこんでいないように見えた。


「悠斗くんはすごく才能があるんでしょ。星野先輩がよく言っているわ」


 マリアさんは小さくため息を吐いた。


「兄弟二人とも能力があっていいわよね。星野先輩はいつも悠斗くんのことを「大きくなったら自分なんかよりはるかにすごいサイキックになる」って自慢しているし」


 その言い方がなんだか辛そうで、あたしは思わず口を挟んだ。


「マリアさんは、きょうだいはいないんですか?」

「姉が一人いるわ。時音さんは?」

「一人っ子です」


「人魚姫」に姉がいるって話はきいたことがないから、たぶん、お姉さんは能力者じゃないんだろう。


「私、グロウスには初等部の五年から入ったのよ。それまでは普通の小学校にいたの。生まれた時から能力があったんじゃなくて、十歳の時に川で溺れたのがきっかけで目覚めたの。グロウスに入るって言うと、周りの子からだいぶやっかまれたわ」

「そうなんですね……」

「自分もサイキックになりたい、いつか自分にも能力が目覚めるはず、って思っている子どもは多いのよね。私も、能力が目覚めるまでは同じようなこと思っていたわ」


 言葉の終わりに、マリアさんは「だから気持ちはわかるのよね……」と小さく付け足した。


 その時ちょうど、おかあさんとおとうさんが駆け込んできたので、それがどういう意味なのかマリアさんにきくことはできなかった。





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