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激しい流れにもまれて、あたしとエリサの体はすごい勢いで下流に流されていく。
落ちる瞬間に息を止めたけれど、水面に叩きつけられた衝撃と流れの早さに意識が持っていかれそうになる。
なんとか開けた目に、悪霊がエリサから離れて逃げようとしているのが見えた。
(逃がすかっ!)
恐怖よりも、怒りの方が勝った。
あたしは左手を伸ばして、悪霊をつかんでいた。
嫌な感触。うごめく虫をつかんでいるみたいだ。
(どこに、いるのかわかれば、涼が助けてくれるっ……)
これ以上流される前に、なんとかしなければ。
あたしは流されてもがきながら、なんとか右手を動かした。
(あたしの、左手はつかむ力。右手は、浄化する力!)
お前ならできる。涼の声が聞こえた気がした。
あたしの右手が、悪霊に触れた。
『ギュオオオオオオォォッ』
悪霊の声が響きわたった。
黒い体が、ぼろぼろと崩れ、光に変わって上にのぼっていく。
それを見ながら、あたしはがぼっと息を吐き、水を飲んだ。苦しい。限界だ。
(涼……悠斗……っ)
意識が急速に遠のいた。
その瞬間、ごおおおんっと、今まで聞いたことのない轟音が耳にこだました。
「ぐっ……」
体が地面に叩きつけられた。酸素が肺に流れ込んでくる。
「げほっ、げほっ……」
地面に倒れたあたしの目に、宙に浮かぶ大量の水が見えた。
「悠斗ーっ!」
涼の声が響く。
あたしの隣りに、悠斗が現れて、あたしとエリサの手をつかんだ。
ぐんっ、と引っ張られる感覚がして、次の瞬間には、あたし達は川縁の土手に移動していた。
「ぐっ……」
どざああっ、と、大量の水が地面に叩きつけられ、そのしぶきがあたし達に降りかかる。
「はあっ……はあ、はあ……」
増水した川の水を持ち上げるという荒技をやってのけた涼が、地面にはいつくばって荒い息を吐いた。
あたしと悠斗も、地面に倒れ込んでぜえぜえと呼吸を繰り返した。
(やった……)
あたしはうまく動かない手を動かして、小さく握り拳をつくった。




