表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/26

23




 大雨のせいで、川は増水して流れも早くなっていた。その横の川縁を走っていたあたし達の目に、橋が見えてきた。


 橋の欄干に、女が立っている。


 水川エリサだ。大雨に打たれ、何も支えるものもなく、こちらに背を向けて立っている。

 そして、橋の中程に停まった車のそばに、修司さんが立っていた。エリサに何か呼びかけている。

 と、エリサが後ろに倒れ込んだ。


「あっ……!」


 落下したエリサの体が、空中で止まる。修司さんの念動力だ。

 ほっとしたものの、次の瞬間、修司さんの背後に黒い影が現れる。


「危ないっ!」


 この距離じゃ声が届かない。

 修司さんが黒い影に気づいて振り向く。


 修司さんなら、あの程度の悪霊など、簡単に捕まえられるはずだった。

 だけど、今はエリサが川に落ちないように念動力を使っている。自分の身を守ることができない。

 修司さんの右肩を、悪霊が切り裂いた。


「修司さんっ!」

「くそっ……この距離じゃ俺の力は届かねぇっ」


 涼が悔しそうに唸った。


 怪我を負ったにも関わらず、修司さんは念動力を解かなかった。再び悪霊が修司さんに襲いかかり、彼を橋から突き落とした。

 修司さんは、自分は落下しながらも、エリサの体を橋の上に引き上げた。


 修司さんが、増水した川の流れに飲み込まれる。


「修司さんっ……」

「どこだ!ちくしょうっ……」


 荒れ狂う川に沈んでしまった修司さんを探して、あたしと涼は川縁で立ち尽くした。


「どこにいるかわかれば、俺の力で引き上げられる!」


 だが、黒々とした川の水では沈んでしまった彼の姿をみつけられない。

 あたしが絶望しかけた、その時、


 あたし達の横を走り抜けたマリアさんが、ためらうことなく増水した川に飛び込んだ。

 川はごうごうと音を立ててますます流れを早くしている。


 息を詰めて川面をみつめていたあたし達の目に、だいぶ下流でマリアさんが水面に顔を出すのが見えた。

 彼女の腕に、修司さんが抱えられているのが見える。気を失っているように見えるが、マリアさんが陸に引き上げて胸を叩くと咳き込んで水を吐いていた。


「よかった……」


 あたしはほっと息を吐いた。


「さすが「人魚姫」だな」


 涼も安心したように笑みを浮かべた。あたしもほほえんで、涼の方を見た。

 涼の肩越しに、橋が見える。倒れたエリサと、欄干の上に佇む悪霊。その後ろに、音もなく現れた悠斗の姿。


「よくも、兄さんを……っ!」


 修司さんの車から取り出したのか、悠斗は手に持った棒状の「霊体捕獲保存容器」を悪霊に向かって振り上げた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ