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「私と姉は、元々あまり仲がよくなかったの。よく喧嘩したわ」


 三つ年上の姉との関係を口にして、マリアさんは顔を暗くした。


「私が十歳の時、姉に川に突き落とされたの。溺れかけて、そこで初めて能力が目覚めたわ。水の中で呼吸ができて自由自在に動ける超常能力に。すぐに能力測定を受けて、グロウスへの編入が決まった」


 普通の小学校に通っていたマリアさんは、突然能力が開花しグロウスへ通えるようになったことで周りの子達からやっかまれていじめられたという。中でも、もっとも激しく嫉妬したのが実の姉、エリサだった。


「私がグロウスへ通うことが決まると、姉は手がつけられてないくらいに暴れて、そのうち、妙な主張をするようになったの」


 曰く、マリアが能力を得たのは自分のおかげだ。自分には、他人に超常能力を与える能力がある。

 そう主張しだしたのだという。


「私が超常能力に目覚めたのは、自分が水に落として能力を与えたからだ。って言いふらしだしたの。最初は冗談かと思っていたんだけど……姉は本気でそう思い込んでいるようだった」


 マリアさんの話を聞いて、あたし達は無言で目を見合わせた。

 他人に能力を与えるとか目覚めさせるとか、そんな超常能力は聞いたことがない。

 エリサがあまりに言い募るもので、マリアさんの両親はエリサにも能力測定を受けさせたが、当然ながら無能力と診断された。

 周囲から「嘘つき」「妹に嫉妬してる」と馬鹿にされ、エリサはさすがにおかしな主張をするのを止めたらしい。


「だから、あんなのは子どもの頃のたあいのない妄想だと思って、私も忘れていたの。……グロウスに入ってからは毎日が刺激的で、「サイキック」になって国際組織にも入れて、星野先輩と相棒になって……私は姉のことなんか思い出しもしなくなっていた」


「人魚姫」として輝かしい日々を送るマリアさんは、エリサとはほとんど関わることなく過ごしていた。ただ、大人になったことで、子どもの頃のエリサが自分もグロウスに入りたいあまりに虚言を吐いた気持ちも理解できるようになった。


「だから、いずれは笑い話にできると思っていたの。……まさか、今でも、本気でそんなことを考えていただなんて……っ」


 マリアさんは頭を抱えてしまった。


「時音さんの話を聞いた時、「まさか」と思ったの。「本当は私の能力」だなんて、そんなこと、いまだに思い込んでいるわけがないって」


 それを確かめるために、マリアさんはエリサを呼び出した。

 問いただすマリアさんに、エリサは子どもの頃とまったく同じ主張をしたという。「アンタの能力は私が与えた。本当は全部、私の能力だ」


 エリサは、口に出さなくなっただけで、その考えを捨てたわけではなかったのだ。ずっと、不満を抱えて生きていた。


「エリサは……自分の能力を証明するために、あの頃の私と同じくらいの年齢の女の子を川に落としていたんです……」


 あたしは愕然とした。




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