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 悪霊に包まれて姿を隠したり、悪霊と一緒に他人の部屋に侵入したり、あの女の人と悪霊の一体化が進んでいる気がする。


 このままでは……


「時音!」


 おかあさんの通報によって警察が駆けつけてきた後、悠斗と涼を連れた修司さんがやってきた。


「何があった!?」


 涼があたしの首に残った指のあとを目にして怒りに顔をゆがめる。


「時音。きみを襲ったのは、この女性か?」


 修司さんが懐から一葉の写真を出してあたしに見せた。

 そこには、近隣の普通高校の制服を着た、あの女の人の少し若い姿が写っていた。


「この人です」

「そうか……」


 修司さんは眉を曇らせた。


「水川エリサ。水川マリアの姉だ」


 やっぱり。

 あたしはぎゅっと唇を噛んだ。


「どうして、人魚姫のお姉さんが……?」


 悠斗が信じられないといったようにつぶやく。


「どこのどいつでもいいけどよ。なんで、時音が狙われたんだ?」


 涼がベッドに腰掛けたあたしの肩に手を置いて言う。

 あたしはあの女の人のうつろな目を思い出して、ぶるっと震えた。


「……グロウス」

「え?」

「たぶん、あたしがグロウスの生徒だって知って、それであたしのことが気に入らなかったんだと思う。自分がグロウスに入れなかったことを、すごく恨んでいるみたいだった」


 あたしは写真の中の彼女をみつめた。普通高校の制服を着た彼女は、グロウスに通って才能を開花させる妹を間近で見ていたのだ。


「それに、自分には本当は能力がある、みたいな言い方をするのよ。本当に能力があるのか、それとも、そう思い込んでいるだけなのか……」

「ええ。その通りよ……」


 あたしの言葉にかぶさって、低い声が響いた。


 振り向くと、戸口に厳しい表情のマリアさんが立っていた。


「水川、目が覚めたのか」

「はい。ご迷惑をおかけしました」


 マリアさんは修司さんに一礼すると、つかつかとあたしに近寄ってきた。そして、いきなり跪くとあたしの両手を握って涙を流した。


「ごめんなさい……っ、私のせいでこんな目にあわせてしまって……」


 マリアさんの手はぶるぶると震えていた。


「すべては、私の姉エリサのゆがんだ思い込みなの……」


 マリアさんは嗚咽をこらえて語り出した。




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