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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

間諜メイドはいつも視られている~短編版~

作者: のげのら

私は過去視なる世にも珍しい、厄介な能力を持っております。私に敵意を抱いた人間の過去を無条件に無制限に覗き見れるという、聞く人が聞いたら物理的に首を狙ってくるか首輪を厳重につけるか、迷うような能力です。私は幸いにも首輪をつけていただくだけで済みました。

本日はそれにまつわる事件を一つ、披露したいと思います。


「王太子様!今日もお元気そうですね!」

今日も婚約者様のいらっしゃる王太子様に、婚約者様が視ていらっしゃる目の前で、アタックを繰り返す身の程知らず(特大のバカ)が群がっておられます。私は思わず天を仰ぎ、その後神速で──礼を失しない程度に最速で──同じ使用人コースに途中編入してきたらしい、聖女と教会が認定した──そんなものがホイホイ生まれてたまるか大バカ者め、と私は言いたい──身の程知らず(特大のバカ)を引きずり出しました。

「はいはいレイリアちゃん王太子殿下は婚約者様がいらっしゃいますからね、婚約者様の目の前ではしたない行為をするとか猿じゃないんだからやめましょうね」

昨日はもう少しオブラートにまともな会話をしてあげたのだが、それでは全く通じなかったので大変遺憾ながら彼女のレベルに合わせた言動を行います。ああ昔の自分を思い出すようで頭痛い。

「ネリアルドちゃんどうして!?昨日は頑張ってって言ってくれたじゃない!?」

言ってねえよ。危ない、本当の素が出かけました。

「私は『次の機会があるといいですね』と言っただけですが……そんな機会あるわけないでしょう、までつけないといけなかったのですね。あなたとの会話は本当に疲れます。……よくもまぁ、貴族学院に転入してこれましたね?」

「お、おい、何もそこまで言わなくてもいいのだぞ、ネリアルド嬢」

いけません、大変いけません。この手の攻撃に抵抗力があるはずの王子に聖女の魔の手がある程度入ってしまっております。ですので、早急な退散をするために遺憾ながら婚約者様を利用することにしました。

「僭越ながら。王太子殿下はそこでむくれている婚約者様のお相手をなさられたほうがよろしいかと思います──ではうちのクラスの問題児は引き取りますのでこれにて!」

今回は昨日と違って見栄えも何もありません。昨日は礼儀に則って連れ出し、多少説教をかます程度で済ませましたが──余談ですがその際に私に敵意を抱かれたようです。淑女としての常識を説いただけなのですけれど──今回はやや緊急事態よりです。ですので目立つとか礼儀とか何も考えずに、校庭の奥までレイリアを名乗る聖女もどき──この程度の扱いで般若の形相をするような聖女いてたまるか、と思えております──を連れ込みました。ここならば周囲に人気も何もありません。

「どういうつもりなのネリアルドちゃん!私、言ったよね!王子様とのことは邪魔しないでって!王子様が好意を持ってくれるなら多少は甘えていいってネリアルドちゃんも答えてくれたよね!?それに従っただけなのにこの扱いはあまりにひどくない!?」

「……」

思考がフリーズしました。私そんなこと言った覚えないし言われた覚えも……ああ、王子さまって憧れの存在だよねって言われたときにそうですねーあんな殿方と甘えてみたいですねーとか答えてますね、過去の私。この子の脳内ではそれがこう変換されたのか。本当怖いな……おおっと、私の頭の中でもう素が駄々洩れてしまっております。……いいや、これもう貴族として扱う理由もないし同列のレベルに落として喧嘩(処刑)してあげよう、最後の手向けに。

「どうなのネリアリアちゃん……ヒッ!?」

「ごちゃごちゃやかましいけどとりあえずそのネックレスは没収な。なんてものを持ち込んでるんだよ偽聖女。……いや、これがあるから神殿が聖女と誤認しちゃったのか、じゃあ誰から渡されたのこれ」

ネックレスをつける前は普通の少女だったらしい彼女の過去の姿を見てそう判断しました。なるほど魅了されてたなら聖女認定も……いやするなよ。お前ら後で国からクレームはいると思うぞ。

「か、返して!それはお母さんの形見のネックレスなの!」

はい嘘1。過去を視る限り、実際には胡散臭い露店で恋まじないのネックレスとして買ってるじゃねーか、こいつ確信犯かよ。まぁめんどくさいしなんか釣れるかもなので嘘に合わせてあげてみる。

「そう、じゃああなたのお母さんはお父さんを呪いのネックレスで篭絡した悪女だったのね……」

「お母さんはそんな人じゃ……え?呪い?」

これは私の嘘だったりする。別にこのネックレスは普通の『魅了』魔術が強烈にかかったネックレスで、つけてると周りが猛烈に好意を抱くという便利でとても危険なグッズだ。当然禁制品である。

でもまぁ、禁制品って言うより呪いって言ったほうが本来の持ち主の記憶を振り返ってくれそうだし。本人が思い出してくれたほうが私は楽なのだ、別に思い出さなくても無理やり読めるけど。

「呪いのネックレスだよ。これをつけてる間は寿命が吸い取られるよ……昨日今日とつけてた気がするから、少なく見て20年ぐらいは吸い取られたんじゃない?」

私の嘘2。重ねて言うがこのネックレスにそんな呪いは一切ない。ただの、禁制品として扱われるべき、トンデモ魅了ネックレスだ。

でもまぁ過去視によれば彼女のお母さんとやらは早死にしている。だから信憑性は彼女の中では増すだろう。

「う、嘘……た、助けてネリアルドちゃん!隣のクラスのラドクリフ君にこっちのネックレスのほうが聞くよって言われて一昨日交換したの!私が呪われたとしたら多分その時からなんだと思う……そうだよね!?そうだと言ってネリアルドちゃん!!」

おっとー、今回は嘘2かと思ったら私の見落としだった。……いやまぁ、神殿に持ち込んだネックレスの時点で禁制品だと思うのだが(あれ確かに魅了のネックレスだったし。効果までは私の過去視能力じゃわからないけど)今つけてるのは確かにちょっと違う。王家に通じる魅了のネックレスが露店で売られてるって何事だよ、と思ったがラドクリフ──確か隣国からの留学生──が介入したならわからなくもない。狙いもわからなくもない。ああ、でもこれは──私が介入していいレベルをもう超えている。専門家の上司様方にお任せするとしよう。

「レイリア様。犯した罪はどうにもなりませんが、おそらく事実を正直に話せば教会で寿命の呪いのほうは何とかしてもらえるでしょう──それぐらいはやってくれるはずです。彼らも今回の関係者ですし」

ですから今すぐ衛兵詰め所に向かいましょう?と提案し、20年()が惜しいレイリア様は素直についてきてくれたうえで洗いざらい事実を語ってくださいました。

その後隣国と開戦寸前までいったとか、ラドクリフを名乗っていた魔導士の死体が突き返されたとか、そんな話もありますが、これは私が介入していない話ですので割愛します。

だって記憶を覗き見ているのに、聞いただけの話を聞いても面白みも何ともないでしょう?


あら、リーゼお嬢様。この子に私の心を読む意味を説明されておられなかったのですか?

ああ──また私を実験台にしたのですね。成功するとは思わなかった、と。

大丈夫です、お嬢様以外からの精神介入はすべて私のほうでいつも通り制御できております。

ですのでお見せしたのも学院での偽聖女騒ぎの話程度です。問題ありませんでしたでしょう?

あの話は私の素が混じるので最初の刺激に適切ですし問題ないかと思ったのですが……大丈夫なようでなによりです。

では魔導士の少年さん。次は私に何度も記憶読取の魔術の練習です。

成功するたびに当たり障りのない新しいお話が得られますが──それ以外の魔術、とくに精神攻撃に類する魔術を私に使おう日にはフルオートで魔術妨害術式がかかると同時に私の体があなたのあばらを数本折りに行きますのでお覚悟を。


冗談だと笑っていますね?攻撃術以外であれば試してみるのも一興ですが──2週間は寝込むことになりますので本当に覚悟くださいね。



……お嬢様、宣言通り骨は数本折らせていただきましたが。煽る必要はあったのですか?

ああ、天狗になっていたので懲罰のつもりだったと。通りで覚悟も決めずに私に精神魔術をかけてくると思いました。

ついでに私を甘く見させないための配慮、ですか?痛み入ります。お嬢様のおかげで精神魔術に関してだけは過剰対策にもほどがある状態になりましたからね、あまり気軽に覗かれても困るのです。

お嬢様は別ですけれどもね。

じみーにこれの長編版を延々書き続けております。

まともに仕上がったら定期的に上げていく予定です。

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