9
不老を付与してあげるからお礼、とか?な、ならお言葉に甘えて……すぅぅぅーーーーー。
「ア、アド?何しているのです?」
ああ…。ドキドキしてるのに落ち着く…。
「リサ良い匂いがするから」
「や、やめなさい」
離してくれないんだから仕方ない。なんて言って離れられたら離れられたで勿体ないから口にはしない。
顔を動かしてみる。柔らかい感触がなんとも言えな…。
ゴツンッ!
「痛い!?」
殴られた…。
「なにしているのですか!やり過ぎです!」
「良いって言われたから…」
言ったよね? 僕、無許可でそんなことしないよ?
「匂いを嗅いで良いとも動いて良いとも言っていません!」
顔埋めるのと匂いを嗅ぐのはセットじゃなかったのか…。冒険者のおじさんたちはそんな感じのこと言ってたんだけど…。
ああ…マシュマロさんが遠ざかってしまった…。
「はあ…。度々抜け出して冒険者の方に話を聞きに行っているせいか大人びているのはいいですが…女性関係に対する変な知識や、下品になるのはいただけません」
うっ…。
「ごめんなさい」
割と真面目注意されてしまった…。控えよう。いや、いつも視線を向けることさえ控えているのだ。小柄なのに立派な双丘。嫌でも視線は吸い寄せられるというものだ。だけれど女性は嫌がると女の冒険者達が言っていたので、意識するようになってから見ないようにしていた。けどゼロ距離にあったら仕方ないと僕は思う! 許可出たし! 僕は間違っていないと思う!
「何無駄に凛々しい顔をしているのですか。またいやらしいことでも考えているのですか?」
「そんなことないよ!というかさっきは夜伽がどうとか童貞がどうとか言ってたリサには言われたくないよ!?」
「こほん。それはそれです。そして忘れなさい」
キッ。と睨まれてしまった。
「はい…」
「……もう痛くはないのですか?」
「殴られたとこ?大丈夫だよ」
「違います。言霊の影響です」
「ああ。うん、大丈夫。それと不老も言霊を唱えない限り問題ないみたい。不老になるとしたら二十歳くらいになったらかな」
「ならよかったです。まだ成長期なんですから今不老になっては勿体ないですからね」
「うん。それで技能複製付与についてもわかったよ。不老は劣化しないみたい」
「本当ですか?」
「うん。ただ僕が死なない限り。って付くけど。僕が死ぬと付与した不老の技能は無くなるみたい」
「絶対に死なないでください」
「あ、うん」
ちょっと複雑…。
「じゃあ早速付与しようか」
「お願いします」
『天技/冒険者。技能/技能複製付与取得。…ぐっ」
天技/冒険者に付属されている技能一つ取得するだけでズキッという頭痛が走った。
「続けて…複製技能付与発動。対象技能[不老]。付与対象リサ。付与開始』
「………」
「ふぅ。終わったよ」
「? ずいぶんあっさりとしてますね。何か変わったような感じはしませんが」
「身分証確認してみて」
「はい。……天技G/不老ってのがあります」
「Gは付与された天技ってことだね。言霊唱えたら不老になるみたいだよ」
「やってみます。『天技/不老。発動』」
リサが一瞬光に包まれた。
「特に変わった感じはしませんね」
「でも一瞬光に包まれてたしちゃんと発動してるはずだよ」
「ならよかったです。でもこれでこのお屋敷に何年もいられませんね。怪しまれてしまいます」
「え…リサ出ていくの…?」
「そのうちですよ。おそらくアドが成人するまでは問題ないですし、アドが自立して何処か行くなら私もついて行きます」
「そっか」
良かった。
「そういえばリサの身分証見たことないよね。見せてくれない?」
「構いませんよ。こちらです」
————————————————————
氏名/リサ・カラリリィ(18)
身分/イグドラ王国民・カラリリィ子爵系次女
ローレル家メイド
技能/イグドラ語・礼儀作法・家事・料理
下級四大属性魔法・雷魔法・交渉術
天職/雷魔法士
天技/雷魔法
非表示(天技G/不老)
犯罪歴/無し
————————————————————
「へえ…。魔法士だったんだ」
「ええ。魔法学校に通っていましたよ」
「そうなんだ…十八歳だったんだ」
「なにか?文句でも?」
「……十七と十八どっちだったっかなーってつい最近思ったばっかだから。他意はないよ」
「そうですか」
女性はいくつでも年齢を気にするのかね?
その後は夕食の時間まで冒険者に含まれる技能について調べたり、持ってない技能でリサが持っている物だったり、昨日父上達に聞いた建築などについても調べてみた。
「そういえば父上と母上の身分証見せてもらってないな…」
「変な空気になってしまいましたからね。これから夕食ですので聞いてみては?」
「そうするよ」
食堂に行くと父上と母上が既に待っていた。
「お待たせしました」
「体調は大丈夫かしら?」
「はい。大丈夫です」
「昼間はすまなかったな。食後に私たちの身分証も見せてやろう」
あ、覚えてくれていたんだ。
「ありがとうございます」
「さあ、食べましょう」