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「ええー…鉄鞭術って戦闘系技能なの…?」
「初めにそこに疑問を持ちますか…? まあ一応…そうなのではないですか? 聞いたことありませんが」
「うーん…。魔法は光と闇もあるんだね」
「その二つも下位技能なんですね」
「だね」
「それにしてもそれが冒険者として必要だと判断された下位技能ですか…。上位技能として扱われているものもありますよ? これがバレたらどうなるか想像がつきませんね」
「本当だよ…。別に技能がなくても全く使えないことはないから誤魔化しようはあるけどさ…」
「手を抜かなければなりませんけどね。技能持ちと技能ありじゃ魔力効率も威力も技術の習得速度も成長度合いも変わって来ますから。戦闘系の天技や技能を持っていなくとも長年積み重ねてきた方なら技能持ちよりも強い方は居ますが…」
「僕はまだ十二歳だしね…。というかそれ天技持ちより強い人って仙人って呼ばれる人たちでしょ?」
「ええ」
「あの英雄譚に出てくるような人たちと比較されても困るよ」
「でもその冒険者という天技、それに含まれる全ての技能を扱えれば越えることだってできると思いますよ?かの御仁達は長命という天技のせいで寿命は長いですがほとんどの技能は習得不可または習得速度が遅くなるという呪いのようなものですし」
「それでも何百年も生きているんでしょ?長命なんて天技は五十年に一人くらいって話だし」
「まあそうですが。それよりどんどん調べましょう」
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【天技/冒険者に含まれる戦闘補助系技能】
・火魔法耐性
・水魔法耐性
・風魔法耐性
・土魔法耐性
・炎魔法耐性
・氷魔法耐性
・雷魔法耐性
・地魔法耐性
・光魔法耐性
・闇魔法耐性
・音魔法耐性
・呪魔法耐性
・毒耐性
・麻痺耐性
・睡眠耐性
・石化耐性
・魅了耐性
・技能複製付与
・暗視
・捕縄術
・罠術
・錬金術
・野営術
・回復魔法
・契約魔法
・儀式魔法
・探知魔法
・強化魔法
・水術
・隠密術
・全身体機能上昇
・全筋力上昇
・不老
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【天技/冒険者に含まれる伝達系技能】
・音魔法
・交渉術
・詐術
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「うわぁ…」
これは色々と酷い….。
「何でもありですね」
耐性系大量。そして気になる技能がたくさん…。そして…。
「不老ってやばいよね?というか冒険者に必要なくない?」
「いつまでも現役でいられるように、って感じでしょうか?」
「ええー…。確か長命は…」
「千年は生きると言われてますね」
「じゃあ不老は?」
「外的要因がない限り永遠に死なないでしょうね」
「なんでそんな冷静!?不老だよ!?不老!十二歳で成長止まるの!?やだよ!?」
「そこですか?…言霊を唱えてませんしまだ発動していない可能性もありますよ。実際色々強化系があるのに強くなった気します?」
「………しないね。というか天技/冒険者の言霊を唱えるのが怖くなって来たんだけど。これらの使い方とか知識が流れ込んでくるんでしょ?」
「なら大丈夫です。まあ確かに相当な知識が流れ込みますね」
「というか……長寿は技能を覚え難い、覚えられないものがたくさんあるっていうデメリットのある技能。そして天職の貴族も似たようなもの。僕は天技/冒険者に付随する形だけど、その上の不老の技能を持っている上、もう一つの天職が貴族。
つまり僕は今後技能を覚えられないってこと…?」
「どうでしょうか?アドの天職と天技は色々特殊ですから…試してみないとわかりませんね。それに覚えられなくとも天職に付随した技能があり得ないほどあるのですから必要ないでしょう?
それよりも技能複製付与について調べてください」
た、確かに…。
「技能複製付与?わかった」
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【技能複製付与】
自身が持つ技能を複製し他人へ付与することができる。ただし一人につき一つのみであり、劣化技能となる場合がある。劣化技能は技能名は同じでも効力は落ちる。
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「らしいよ?」
「………アド」
「な、なに?」
さっきまでの冷静な澄ましたような表情が一転。物凄く真剣な顔だ。
「私が貞操をもらってあげますので不老の技能をください」
「な、何言ってるのさ!?」
「こほん。すみません。取り乱しました。ではアドに恋人が出来るまで夜伽の相手をしますので不老の技能をください」
「酷くなってる!?リサ落ち着いて!お願いだからにじり寄ってこないで!?」
流石にそんな理由で言い寄られても嬉しくないよ!?
「本当待って!?あげるから!夜伽しなくていいから!」
「本当ですか!?」
「う、うん」
「こほん…。少し端なかったですね」
冷静になったのか顔を赤らめて視線を逸らすリサ。可愛いなぁ…。不老欲しさに、ではなく自分に好意を持ってくれた上で言い寄って来られたら……考えるのよそう。
技能複製付与の使い方について辞典で調べてみたところ簡単に出来るらしい。でも取り消せないとのことだ。
「本当に不老でいいの?劣化したら不老じゃなくなるかもしれないよ?」
「それでも老いが少しでも遅くなるでしょう?」
「多分?」
「ならお願いします」
…そんな老いたくないのか。まあ女性だし、皆そうなのかな?リサがずっと可愛くて綺麗なままなら僕も嬉しいし、いつも世話になっているしな。喜んでくれるならあげよう。でも…。
「いや、やっぱりまだやめよう」
「!?くれると言ったじゃないですか!」
「どうどう!リサ大丈夫!?情緒不安定だよ!?不老はあげるけど少し待って!冒険者の言霊唱えるから。そしたら劣化するかしないか、したらどうなるかもわかると思うんだ」
劣化するかもしれない。劣化したらどんな技能になるのかもわからない。そんなものをリサに与えて何かあっては困る。
「…良いのですか?」
「いつかはやらなきゃいけないことだしね」
すぅーーはぁーー。緊張するなあ。不老が発動したらどうしよう?
よし!うだうだ言っても仕方ない!恨むならリサの笑顔が見たいと思ってしまった自分を恨め!
『天技/冒険者。発動』
そう口にした瞬間何か頭に流れ込んできて思わずしゃがみ込んでしまう。
「ぐぁああ!うぅぅぅう゛…うぁ゛」
「アド!?だ、大丈夫ですか!?今専属医を」
リサの声はちゃんと聞こえた。人を呼ぼうとするリサを掴み止める。
「大…丈夫…。もう、少し…」
突然身体が包まれたような感覚を覚え痛みが少し和らいだ気がする。それから何分経ったのか頭痛が引いていく。
思い切り閉じていた目を開け、握り込んでいた手を開く。
「終わった…」
「お疲れ様です。無理をさせてしまってごめんなさい」
「僕が好きでやったことだから気にしない…で?」
すぐ近くからリサの声が聞こえて来た。というか顔が柔らかい物に包まれてる。
これは……リサさんの巨大マシュマロさんでしょうか…?マシュマロさんは良い匂いが…。
「って!?リサ!?ちょっちょっと待って!?」
「?待てと言われましても何もしていませんが」
「マ、マシュマロさんが!?」
「マシュマロさん…?…っ!ま、まったくアドはこんな時にいやらしいことを考えてるのですか?」
「あ、いや、ごめんなさい…じゃなくて離してもらえないでしょうか!?」
「……嬉しくないと?」
「凄く嬉しいです!」
「なら良いではありませんか」
え、いいの?