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 リビングに行くとメイドや執事、白衣を着た専属医のイーサンが待機していた。そしてテーブルにつくとメイド達がロープを持ってきて腕に巻かれ、小振のナイフを持った専属医がやってきた。


 ……絵面が怖いです。やり方は以前聞いていたから覚悟は決まっているのでそこに恐怖はあまりない。けど、イーサン。笑顔でナイフを持ってゆっくりと近づいて来ないでほしい。


 笑顔やめない?ナイフを初めから持ってる必要ないんじゃないの?怖がらせないようにゆっくり近づいてきてるのかもしれないけど逆に怖いよ?

 そう言いたいのを我慢してポーカーフェイスを保つ。こんなことで表情を崩しては将来の目標は叶わない。


「よろしいですか?」


「はい。お願いします」


 腕を取られ手首を切られる。浅すぎず深すぎず、血が吹き出さない程度。そして溢れ出る血液を目の前に置かれた白紙の身分証が納められたケースに垂らしていく。


「はい。もうよろしいので治癒魔法をかけますね」


 専属医がそういうと腕が淡い光に包まれ傷が消えていく。


 ふぅ…。表情強張ってなかったよね?大丈夫だとは思っていても血がどんどん流れていく感覚もその様も見ていて心臓に悪い。背筋がゾワゾワした。


「ゆっくり立ち上がってみてください。目眩やふらつきなどはありませんか?」


「大丈夫です。ありがとうございます」


 問題ない。身分証を見てみるとどんどん血がカードに吸収されいく。


「アドヴェンスお疲れ様。大事をとってもう休んでいいぞ」


「そうね。今日はお稽古もないしゆっくり休んで」


「大丈夫ですよ。もう少しで身分証ができるのですよね?待ちます」


 専属医は退出し、入れ替わりでティーワゴンを運んでメイドが入ってきて紅茶の用意をしてくれる。


 用意してもらった紅茶を飲みながら身分証を眺める。昔、身分証をどうやって作るか聞いた時、手首を切り裂いて血液を採取すると言われた時は幼いながらも戦慄した記憶がある。殺す気なの…?と。

 普段かすり傷をつけるだけでも大袈裟にして専属医のところまで連れて行くメイドや母上の口から手首を切り裂くなんて聞くとは思わなかったがそこまで痛くもなかったし傷も残らなかった。


 それにしても…どんな天職とスキルが貰えているのだろうか。冒険者として役に立つものが良い。

 父上と母上、メイド達は僕が冒険者を目指して居るなんて知らないだろう。いや、昔は口にしていたから知っていたと思うがここ数年口にはしてないので目指しているのは知らないはずだ。知っているのが一人だけいるが…。


 幼少期に冒険者になりたいと何度も言ったが毎回いい反応は貰えず、家庭教師から勉強を教えてもらって冒険者がどんな立場で、貴族社会でどんな扱いなのかを知ってそれらについては納得した。


 蛮族、落ちこぼれ、ならず者という扱いがかなり多い。元貴族で冒険者になるのはご落胤や没落した家の者、下級貴族の三男など後継にも慣れず、爵位も貰えず、騎士にもなれない。貴族の中ではそういう者しかならない職業。


 だから公爵家の次男で長男の予備としてある程度歳まで家に居なけれならず、政略結婚にも使える僕が冒険者になろうとしても良い反応はされないのは仕方ない。騎士や魔法師になるために来年から学校に通わなければならないし…。


 僕は冒険者になりたい。それも一流の。昔に聞いた冒険者の話。所々朧げだが未だに記憶にも心にも残っている英雄と呼ばれる冒険者の話。だから来年になる前に家出して冒険者になりたい。……そう思うがそれは難しい。


 冒険者になるには身分証が必須。つまりは十二歳以上。今日からいつでも冒険者には登録できるが、名前から公爵家だとバレてしまうので難しいのだ。

 方法は光魔法か幻覚魔法でギルド職員の目を誤魔化す方法くらいだ。偽造や書き換えは基本的にできないがそれをやったら犯罪。色々調べて…調べてもらって方法が少ないことを知った。


「アドヴェンス様。出来ましたのでお取りください」


 お、出来たらしい。メイドご身分証の入ったケースを差し出してくるので手に取る。まだ白紙だが魔力を流すことで情報が表示される。


 ————————————————————

 氏名/アドヴェンス・ローレル(12)

 身分/イグドラ王国民・ローレル公爵家次男

 技能/イグドラ語・礼儀作法・剣術

   下位四大属性魔法・罠術・予測

 天職/冒険者

 天技/冒険者

 犯罪歴/無

 ————————————————————


 やっ…やった!天職冒険者!!冒険者だ!

 それに剣術や魔法、罠術が技能として表示されてる。


 下級四大属性魔法は火、水、風、土だ。技能は一定水準以上の練度があれば表示される物だ。


 技能として身についたということは神に努力と技量を認められたということ。

 そして身分証に技能として表示された者と技能を持っていない人では成長速度が倍くらい違うと言われている。後は威力が違うとも聞いた。


 朧げだが…五歳くらい訓練した甲斐があった。本格的に訓練し始めたのは八歳くらいからだが他の子供達のようにパーティとか出ずにひたすら訓練した甲斐があった。両親には騎士になりたいと言って戦闘訓練をしていたので剣術は問題ない。

 罠に関してはメイドのリサに頼んで市井に売ってる冒険者向けの本や罠に関して書いてある物と道具を買って来てもらい夜こっそりと練習したものだ。結果がちゃんと出ていて安心だ。


 あっ…待って待って。他にも天技とか気になるとこもあるけどこのまま見せたら父上と母上がどんな顔をするか…。

 いや、ここまで冒険者に適しているなら冒険者になることも許してくれる…?………ないな。気持ち的に許してもらえるかもしれないが、立場が許されないからな…。

 とりあえず今ここで見せ合うことは避けたい…。対策を考えなきゃ。どうする?


「……父上、母上。見せ合うのは後日でよろしいでしょうか?魔力を流そうとしたら目眩が…」


 カードを持った右手を下ろし、左手で目元を抑える。

 とりあえず仮病で乗り切る作戦!過保護な母上なら疑うことはないと思うけど…。


「アドヴェンス大丈夫!?」


 身を乗り出し、目を見開いている母。

 予想以上に心配された…。


「今日は朝早くから教会に出向いたし疲れが出たのだろう。身分証は預かっておくから明日にしよう」


 えっ。そ、それは困る!


「少し休めば大丈夫だと思うので…部屋で横になってきます。それと、すみません。父上、身分証は持っていて構いませんか?やっと頂けたのです。まだ白紙でも僕の身分証ですから持っていたいのです」


「別に構わないが…体調が回復するまで魔力を流さないようにな?」


「はい。絶対魔力を流しません」


「ならいい。専属の執事についても明日にしよう」


「ありがとうございます」


 もう流したから流すことはありませんよ。ってね。騙しているようで…というか嘘ついて少し心苦しいが…仕方ない…。

 その後はメイドに支えられて部屋に行く。


「アドヴェンス様…」


「ん?リサ?」



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