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「お待たせしました」


技能を取得しすぎたかなーって思っていたらリサがノックもせず入ってきた。


「おかえり。セルリーはどうだった?」


「とりあえずは大丈夫かと…。ただ急ぎましょう。昼食時にはお供したいと言っていたので。あまりあからさまに遠ざけようとすればバレてしまうので昼食前には余裕を持って戻って来ましょう」


「まあ登録して簡単な試験するだけだし、すぐ終わると思うけどね。セルリーにはなんて言ったの?」


「午前中はアドヴェンス様に雷魔法についての講義をすると。天職が貴族なので技能としては覚えられませんが、少しでも上位の魔法を使えるようにしたいらしいと」


「それだけ? それなら様子見に来る可能性高いよね?」


「アドヴェンス様は上手く出来ない姿や練習している姿をあまり人に見られたくないこと。理由としては教師以外の者に見られると集中が途切れると常に言っているとご説明したら昼食の時間に呼びに行くけど、それまでは顔を出すのは控えるとお返事を貰いました」


「…まあ好き好んで練習してる姿や格好悪いところは見せたくないのは事実だね。集中が途切れることはないだろうけど」


大丈夫そうだし、いざ出発!と思ったら止められた。


「なに? リサが早く行こうって言ったのに…」


「そんなことで不貞腐ないでください。私がメイド服ではこっそりも何もないでしょう」


「あ」


確かに。確実に目立つね。買い出しでもしているメイドや巡回中の兵士に見られたらバレる。僕の顔を知らない兵士は新兵くらいだろうしね。


「リサも変装?」


「ええ。ですが、変装するならここでやるしかないので…後ろを向いていてください」


「ア、ハイ」


後ろを向いたが鏡に映っていたので目を閉じた。


見たい、とは思うが後が怖いので絶対に見ない。衣擦れの音が聞こえて来て更に気になってしまったが、歯を食いしばって目を閉じる。


「アド」


「…ハイ。ミテナイデス」


「耳を澄ませて、そんな必死で目をつぶって…。どれだけ見たいんですか? そういうのを世間ではマセガキって言うんですよ?」


「マセガキじゃないし!」


「年齢よりも大人びているので時折り忘れますが、アドは十二歳ですからね? 十二歳で将来は女を何人も侍らせたいなんて言っている時点でマセガキでしょう。というか悪い冒険者を見本にするのはどうかと思いますよ? 次男とはいえ侯爵家の者なんですから…」


見ないように頑張ってたのにお小言が始まった!?

なんで!?


「ちょ、ちょっと! 早く行かないといけないんでしょ! ほら、行こう!」


「まだ着替えていますからもう少しお待ちください」


「え」


ぁ…。行こうと目を開けた僕の視界にスカートではなくズボンを履いていたが、上半身は下着姿のリサが映った。否。正確にはガラスに反射して映っていた。


その瞬間、バッと音がして服で胸元を隠したリサとガラス越しに目があった。ガラスに反射した状態でもわかるほど顔を赤くし、こちらを睨む。


「…アド嫌い」


「ご、ごめんんん!」


「早く目を閉じて」


「ハ、ハイ!」


ぎゅっと目を瞑る。


嫌いと言われたが、本気ではない…と思いたい。

それよりもスタイル良かったし、恥ずかしがっていて可愛かった。こういう時なんて言うんだっけ…?


「…ごちそうさま?」


「アド…何を言っているのですか? 頭に虫でも湧きましたか?」


うわぁ…辛辣…! というか口に出ちゃったし…。


「着替えましたのでいきましょう。後でお説教です」


「…」


言葉だけ聞くと冷たく聞こえるが、顔を真っ赤にしているので迫力があまりなかった。


ちなみに僕の部屋は三階にある。


窓から見える庭は、裏庭で正面玄関と離れているため警備がいない。更に僕の部屋の下、二階と一階の部屋は誰かの部屋でも、人が常に出入りする場所でもなく大抵カーテンが閉まっているのだ。

だからここから縄梯子で裏庭に降り、裏庭にある隠し通路から敷地の外に出る。


この通路は見つけた時、扉が錆び付いて全然開かなかった。毎日こっそりと、少しずつ錆を削って扉を開けたのだ。誰かが点検したり使用していないものだったのだろう。だからこそ気軽にここを使っている。


父上がここの通路のことを知っているかはわからないが、知っていても記憶の片隅に追いやっていると思っている。そうじゃなきゃ、いざという時に使うために整備くらいはするだろうしね。


そんなわけでいつも通り敷地の外に出た。

隠し通路の出口は竹藪だ。初め、出口もびくともしなくて苦労をしたものだ。出口を塞いでいた根っこや積もった土や枯葉を僅かに開いていた隙間から削り出し…泥まみれになってリサに怒られたっけ。


「よし! リサ急ごう」


「かしこまりました」


リサと共に街へ駆け出す。

リサは魔法使いだから体力や筋力はそれなりにあるのだ。今は僕の方が速いけど、去年まではリサの方が早かったし、力も強かったからなあ。


無事、竹藪を出て街に着いた。

ここからギルドは走ればあまり時間はかからないが流石に街中を走ると悪目立ちするので早歩きだ。目立たないようにとリサが着替えたのに走って目立ったら意味ないしね。


ちなみに僕はギルドには目を瞑っていても行けると思う。それくらい、通ったのだ。

……ギルドの建物の前に。


ギルドに入ったことはあるが依頼があるわけでも依頼を受けられるわけでもないから普段はギルド前まで来て、早く登録したいな。って思って踵を返すだけだったが…やっと登録できるのだ!


「アド。嬉しそうですね」


「もちろん! 念願の冒険者登録だよ!」


「ええ。そうですね。私の下着姿を見たから嬉しそうにしていると思ったのですが…違いましたね。私の魅力が足りないのでしょうか」


「そんなことないよ!? 綺麗だったし、可愛かった! 下着もリサも!」


「っ…!? …しっかり見たのですね。やはり後でお仕置きです」


えぇ!? お説教からお仕置きにランクアップしてる!?


「って! しっかり見たかどうか確認したの!?」


「ええ。だいぶ見られていたみたいですね。お仕置き確定です」


「えぇ…それは…勘弁してほしいな…」


リサのお仕置きは本当にきついのだ。

絶妙な力加減で放った雷魔法で僕を痺れさせて、棒で痺れた足や体を突く、言ってしまえばただそれだけ。


だけど完全に麻痺させてくれればいいのに多少の感覚はある。長時間足を組んだり畳んで座った後に感じる痺れに近い状態で突かれ、たまに無理矢理歩かされたりもする…。


そしてビリビリとした痺れが切れてきたらまた魔法を使って同じことを繰り返されるのだ…。


お仕置きが終わると何も手につかないほどの肉体的疲労と精神的疲労が残るという、なんとも言えない、お仕置きというよりは嫌がらせに近い。


まあ今回は怒っているより照れている感じなので本当にお仕置きをされるようなことはないと思うけどね。


しばらく歩くと冒険者ギルドへ辿り着いた。


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