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「これが私の身分証よ」


「私のはこれだな」


 ————————————————————

 氏名/アドルフ・ホーソン・ローレル(35)

 身分/イグドラ王国民・ローレル公爵

   イグドラ王国環境大臣

 技能/イグドラ語・礼儀作法・宮廷作法・剣術

   水魔法

 土魔法・交渉術

 天職/樹魔法士

 天技/樹魔法

 犯罪歴/無し

 ————————————————————


 ————————————————————

 氏名/ウェンディ・アリブ・ローレル(31)

 身分/イグドラ王国民・ローレル公爵夫人

 アリブ伯爵家長女

 技能/イグドラ語・礼儀作法・宮廷作法・交渉術

   水魔法・氷魔法・光魔法

 天職/水魔法士

 天技/水魔法

 犯罪歴/無し

 ————————————————————


 食後、食器が片付けられるとすぐさま二人が身分証を出してくれた。


「樹魔法?」


「樹魔法は複合魔法だな。水魔法や土魔法と似たようなことができる。影響範囲などが大きいが」


 複合魔法か…僕の冒険者の天技だと下位の技能しか覚えられないから覚えてないのかな?そのうち覚えたいな。


「樹魔法師は樹魔法の威力が上がり、使用魔力減り、習熟が早くなるというものだ。天職と天技が同系統だと色々と恩恵が多い」


 同系統だと恩恵が多い…。つまり僕の場合、天職と天技がどちらも冒険者だから、何か恩恵があるのだろうか…?


「父上凄いです!…あ、母上もなのですね!それと…ミドルネームって嫁ぐ前の家名なのですか?」


「あら、まだ習っていない?」


「はい。習ってません」


 母上の視線がリサに向かった。多分本当に習ってないか、僕が覚えてないか確認したのだろう。

 ない、はずだ。


「これから習うと思うけど先に教えておきましょうか」


 よかった。問題なかったようだ。


「女性は嫁いだ場合、男性でも婿養子として実家から出て結婚した場合は元の家名をミドルネームにするのよ。アドルフはホーソンというミドルネームがあるけどこれはローレル公爵家当主のみが名乗れるミドルネームね。

 それぞれの家に当主が継ぐミドルネームがあるのよ。

 それとローレル侯爵領の私達が住む都市をホーソンと言うの。これは知ってるわよね?」


「はい。商業都市ホーソンと呼ばれていますよね」


「そうね。規模が大きく商業が盛んだからそう呼ばれてるわ。規模次第では普通にホーソンの街と呼ばれるでしょうね」


「そうなのですね。ありがとうございます」


「アドヴェントは十二歳になったしこれからはもっと色々ことを教えてもらうことになるわ。それに来年から学園に通うのだから凄く色んなことを覚えないといけないと思うわ。頑張ってね?」


「は、はい」


 学園か…冒険者と両立できるだろうか…。


「他に何か聞きたいことはあるか?」


「いえ、今のところは大丈夫です」


「そうか。なら私からも良いか?」


「はい」


「技能辞典はどうだった?」


「面白いですよ。どんな技能を知りたいか書くとその特徴が出ますので、勉強になります」


「そうか。天職が貴族だと覚えられる技能はほとんどないからショックを受けているかと思っていたがそんなことはなさそうだな」


「はい。例え技能を覚えられなくても剣は振れますし、魔法も撃てます。これからも鍛錬は続けたいと思います」


「そうか…。それは、よかった」


 なんか凄く安心している…。技能が覚えられないから僕が自棄になったり腐って他の貴族至上主義の人みたいになると心配していたのだろうか?

 正直心苦しいけど…冒険者になって冒険者として活動することを認められるくらいの実績を残した時には正直に話そう。


「じゃあ僕はこれからまた天技を色々試してみますね」


「わかったわ。家庭教師の方は明日からまたくるのよね?」


「はい。そう聞いてます」


「ならあまり夜更かししないようにね?」


「はい。ありがとうございます」


 安堵した表情の父上と呆れたようにそれを見る母上を尻目に部屋を出て自室に向かう。


「アド。天職が貴族だとどんな技能が覚えられるのですか?調べてみました?」


 当たり前のようについてきたリサが部屋に入った途端そう聞いてくる。


「そういえば調べてないな…調べておいた方がいいかな?」


「調べておいて損はないかと」


「そうだね」


 ————————————————————

【天職/貴族で覚えることが可能な技能】

 ・礼儀作法

 ・貴族の嗜み

 ・宮廷作法

 ・交渉術

 ・絶対記憶

 ・言語習熟高速化

 ・隷属魔法

 ・契約魔法

 ・目利き

 ・忍耐

 ・算術

 ————————————————————


「び、微妙…」


「こんなに覚えられるのですね。もっと少ないかと思っていました」


「そうなの?」


「一般的に天職貴族はほとんど技能を習得できないと言われていますからね。だから技能として確立していない物を重視する傾向があるらしいです」


「技能として確立してない物?」


「はい。例えば…アドが今家庭教師から教わっている勉強ですね。一般常識、歴史や法律などですね」


「そういうのは技能として現れることはないんだ?」


「ええ。教材を作る者によって変わりますし、国や地域でも少し変わりますからね」


「ん?それを言ったら言語や礼儀作法なんかもそうじゃない?」


「礼儀作法は大体統一されています。たまに全く異なる地域もございますがほとんどありません。基本的に礼儀作法は創世教の教えが元となっているので。

 言語は確かに国によって違います。ですがほとんどの言語は何百年何千年と変わっていませんので。イグドラ語に関してですが、大陸全土で使用されていなくても神が技能として確立させるくらいには古くからあり、認知されておりますから。

 それに、言語は変わるとしても戦争で負けた国が勝った国の言語を取り入れ、負けた国に言語が消え去る、程度のもので、新しい言語が生まれるわけではありませんので。そういったことですら早々ありませんからね」


「へぇ…。じゃあもう一つ。天職が貴族になった人が自分を貴族にしろ、とか。本当の貴族は自分だ。って抗議するようなことないの?」


「近年そう言ったことはありませんが昔はありました。そのうち授業で習いますよ。

 貴族の原点は国という概念がなかった時代に神が天職や天技、技能の存在。また身分証を作る技術を教えたことから始まると言われています。そして貴族という天職が現れ、同時に天職辞典も現れ、貴族とはどういうものかというのが広まり、王や貴族という身分制度が出来たと言われていますね」


「王っていう天職もあるの?」


「ありますよ。まあそう言ったわけで昔は天職が貴族だから、王だから自分は偉い、選ばれた人間なんだ。と言って暴動や反乱が度々起きていたようでだいぶ混沌とした時代があったそうです。それでは国が成り立たないので今では天職は大して重要視しないことになっています。重要視したら貴族は増え続け、王も何人もいることになってしまいますので。

 建国した者が王であり、その血筋のみ王族とする。と決まっています。

 まあそれでも貴族至上主義のように貴族という天職だけを神聖視している方は居ますけど」


「なんか面倒だね」


「そうですね。まあ今でも天職盗賊とか殺戮者とかだと偏見の目で見られますし、完全に天職を重要視しないというわけではないのですが。

 ただこの大陸の全ての国での法律では、『天職は神が与えた可能性であり、天職がどのような物であれ身分や立場に影響を与える物ではない。よって天職を判断材料にすることを禁ずる』とありますからね」


「え?でも絶対天職って判断材料になるよね?例えば天職が鍛治師の人と天職が貴族の人だったら鍛治工房で雇われるのは天職鍛治師の人だよね?」


「そうですね。だから完全に差別がないというわけではありません。それと…一応天職で判断しているわけではないと誰もが主張すると思いますよ。それをしたら捕まりますので。なので真っ当な所なら本当に天職で判断せず、仕事をやらせてみた時の技術、持っている技能で判断します。まあ半数くらいは天職で判断しているとは思いますが」


「ややこしい…」


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