面接は緊張します
カラフルな四人組が私の前に並んで座る。
水色の髪はフラン。
右目に難がある。
橙の髪はティモ。
左足に難がある。
ボルドーの髪はアメリ。
虚弱体質で顔色が悪い。
暗い黄緑色の髪はリサ。
左腕に火傷跡がある。
今日の私は面接官だ。
四人をしばらく見守ってきた、ヴィムとエリンは補助として私の両脇に。
「では、これより面接を初めます」
誰かの喉がゴクリと鳴る。
ティモは小刻みに震えているし、アメリなんて今にも倒れそうだ。
私は思わずプハッと吹き出した。
「ごめんごめん。緊張させるつもりはなかったんだ」
何となく面接といえば……の雰囲気を演出してみたけど。
「楽にしてね」
ティモの震えは止まったけど、アメリはまだ倒れそうだ。元々かもしれないけど。
「しばらくバート村で生活してもらったけど、どう? 暮らしていけそう?」
予想はしていたけど、誰も口を開かない。
「今までやってみたことで、この仕事がしたいとか思ったものはある?」
やはり無言。
おかしいな。
前に話した時は四人とも、もっとハキハキ話していたのに。
前は、購入してもらうために必死だったのかな。……だとしたら、今は安心してるってことだろうか。村の生活が四人に安心感を与えたのは良いことだけど……。
私はチラとヴィムを見た。
ちゃんと家の奴隷ルールについて話したのだろうか。
誰も彼も進んで発言できるとは思わないけど、イエスかノーかくらい意思表示するべきでしょう。奴隷じゃなくても。奴隷なら尚更。
ヴィムは少しだけ肩をすくめる。庇うつもりはないようだ。
緊張しているのは分かるけど、質問に答えないなんて、本当の面接なら即不合格です。
「じゃあ、バート村では暮らしていけないし、やりたい仕事も無いってことでいい?」
無言なら仕方ない。イエスじゃないならノー。そうしないと話が進まない。
「ま、待って下さい!」
水色フランが慌てた声を出した。
「ヴィムから聞かなかった? 私は人形はいりません」
「はい。すみません。
私はこの村で暮らしたいです。
イザークさんと一緒に働きたいです」
ヴィムとエリンお手製の資料によると、フランはイザークさんとヴィムに、剣の稽古をつけてもらっていたようだ。
捕捉情報をヴィムが耳打ちしてくる。
「フランは、イザークさん並みに馬が好きなようだ」
ふむ。イザークさん並みって、かなりの馬好きだよね。
門番見習い兼、宿の従業員として、お客様の馬をお世話してもらおうか。
「OK。他は」
暗い黄緑色のリサが手をあげる。
「わたしは! この村と、馬が好きです!」
ヴィムの声が聞こえたらしい。
まるでフランに競うかのように、自分の方が馬好きだとアピールしてくる。
こういう主張は嫌いじゃない。むしろ、さっきまでのように、遠慮して黙りよりずっといい。
手元のリサの資料にも、馬の世話が丁寧だと書いてある。
これはフランと共に、宿の従業員決定だな。アンヤとブランの世話も積極的にしてもらおう。
「OK。他には」
ボルドーのアメリが手をあげた。
「あの~~。ババ様に弟子入りしたい、というのは有りでしょうか」
資料にはエリンの字で、薬草の種類の覚えが早いとある。
薬学に興味があるのはいいことだ。
ババ様もかなりの高齢だし、是非ともババ様の後継者になって欲しい。
「OK」
最後に震える声で、こちらを探る様に見るのは橙のティモ。
「この村は好きです。仕事は、まだ決めかねています」
嫌な仕事をやらせるつもりはない。得意な分野の方が、より上達するだろうし。
まだやりたい仕事に出会っていなければ、引き続き職業体験でもいいと思う。
エリンの資料を見ると、ティモは手先が器用で裁縫が上手と書いてあるけれど……。
手芸男子か。美意識高い系かな。
「エリンが裁縫の腕を誉めてたよ。裁縫は好きじゃない?」
ティモは一瞬目を見開いて、すぐにうつ向いてしまった。
「変ですよね、男が裁縫なんて」
だんだん声が小さくなる。
「全然」
何が変なんだろう。
手芸男子、いいじゃない。
服飾関係は女の仕事だとか、そんなルールがこの世界にはあるのだろうか。
たぶん独り身のイザークさんとかは、自分のほつれた服は自分で直してるんじゃないかな。
「エリン、どう思う?」
「確かに、お針子は女性が多い仕事ですけど、王都の服屋では、男性もいましたよ。男性は仕立屋と呼ぶそうです。
私のスカートの丈を直してくれた方が、とても素敵な男性でした。ドキドキしちゃいましたもの」
男性でも問題ないみたいだ。
エリンの言葉に、ティモは何度も小声で「仕立屋」と呟いている。
「変じゃないみたいだよ?」
どうする? どうしたい? とはあえて聞かない。
ほんの少しの沈黙の後、ティモは拳を握った。
「お針子……いえ、仕立屋として、働いてもいいですか?」
ティモの顔は真っ赤だ。
「OK。全員決まったね」
呼吸を整えているティモを知らないフリして、給料の話、シェアハウスに引っ越しの話しをした。
これからは個別の部屋が出来る。
給料だって、貯めるなり使うなり好きに使える。
まぁ、バート村じゃあ今のところは貯める一方だけどね。
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「はい、皆さん。そのまま動かないでね」
私の言葉にフラン、ティモ、アメリ、リサは椅子に座ったまま固まる。
「パパッとやっちゃうよ」
私とエリンは、二人でハサミを手にする。そして、相談しながら水色の髪にジョキジョキハサミを入れた。
だって、バート村には美容室はないし、マルファンに連れて行ったら目立つ髪色だからね。
次々に橙、ボルドー、エルムグリーンの髪を切ると、アメリは途中で「ヒッ」と小さな悲鳴が出た。けど、悪くない出来だと思う。
フランの髪は、見えない片目を何となく目立たないようにしようと、前髪を長めに切った私。すっきり刈り上げも入れて、前髪も短く切ったエリン。半分半分を二人で切ったから、アシンメトリーのバンドマンみたいな奇抜な感じになった。……似合うからいいよね。
ティモの時は、フランの失敗を……いや、エリンの希望で、彼女に任せた。前髪重めのツーブロックマッシュ……韓国のアイドルみたいな可愛い感じになった。
アメリは私が担当。豊かな長い髪は背中で揃え、前髪は微調整を続けた結果、眉上のオデコちゃんになったけど……似合うから……。
リサは、アメリの失敗を……いやいや、眉の形が綺麗だから、真ん中から横に流すスタイルにした。
みんな、なかなか似合う。




