表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

第二話 アキラ君のお姉さん

 アキラ君には高校生のお姉さんがいる。

 最近のお姉さんは家族に対して冷たくぎすぎすしている。

 

 

 ある日曜日のこと。

 その日は両親が外出して、お姉さんと2人きりであった。

 お姉さんが大きなビニール袋を持ってきた。

「姉ちゃん、この袋何?」とアキラ君は興味本位で聞いてみた。

「あ、これ?これね、薬が入ってるの。」

「薬?なんの薬?」

「アレルギーの薬だよ。最近、眼がかゆくてしょうがないの。」

 とお姉さんはぐちょぐちょ右眼をこすった。

「姉ちゃん、大丈夫?」

 とお姉さんが非常にかゆそうだったのでアキラ君は心配した。


 その日の夜のこと。

 お姉さんは左手で右眼をこすりながらご飯を食べていた。その姿を父親が見て「おい、右眼どうした。大丈夫か。」と心配して声を掛けたのだが、「うるせぇな!だまってろよ!!」とお姉さんが怒り出した。

 アキラ君は 「あぁ、またケンカが始まるよ・・・」とふーっとため息をついた。

 しかしその日は異常だった。

「うるせぇ、うるせぇ!あぁ眼がかゆくてたまんねぇんだよ!眼がかゆくてたまんねぇんだよ!ああああ!」と、ぐちゃぐちょぐちゃぐちょと右眼をかきむしった。

「やめなさいっ!」と両親が止めに入った。

「ね、姉ちゃん、やめなよ・・・」とアキラ君も小さい声で言った。

 父親がお姉さんの腕をつかみ止めさせた。

 お姉さんもやっと正気に戻りぽろぽろ涙をこぼしていた。お姉さんの右眼が赤く腫れ上がり、腫れぼったくなったまぶたが右眼を覆った。


 

 近ごろお姉さんは学校に行っても右眼をかきむしっていた。その事について担任から両親に連絡があった。というのは、あまりにも激しく眼をかきむしるため、ぐちゃぐちょぐちゃぐちょと音が聞こえてくる。お姉さんの机の周りにいる生徒から「気持ちが悪い。」と担任へ相談があったという。そんなわけでお姉さんはだんだんと学校へ行かなくなり自室に引きこもるようになった。

「あの子、大きな病院で診てもらった方がいいわよ。学校にも行けなくなっちゃって。私どうしたら・・・・」

「わかった。いい病院を探してみるよ。」

 両親のこの会話をアキラ君はそばで聞いていた。アキラ君もお姉さんの体に大変なことが起きていることがわかった。

 

 ある日のこと。

 アキラ君がトイレに行こうとお姉さんの部屋を前を通り過ぎようとしたとき「ああああ!かゆいー!かゆいーー!」とお姉さんの絶叫が耳をつんざいた。

 また別の日のこと。

 久々にお姉さんが自室から出てきていて居間の椅子に座っていた。(姉ちゃん、今日は部屋から出てきているんだ)と思い何か話かけようとしたとき、お姉さんは隣に置いてあった白いビニール袋から新しい目薬を取り出してさし始めた。

 

 ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタッ、ポタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ・・・・・

 やむことがなくさし続けている。右眼から目薬があふれている。

「ね、姉ちゃん・・・・?」

「あぁ、気持ちいい。ああああ気持ちいー。」

 アキラ君は怖くて彼の自室に逃げ込んだ。

 

 アキラ君はあとで椅子の付近にあるゴミ箱に、先ほどお姉さんがさしていた目薬を見つけた。中はからっぽのようだ。新品で開けたばかりの目薬が1日でなくなるものだろうか。


 

 数日が経った日のこと。

 その日もお姉さんが自室から出てきていて居間の椅子に座っていた。

 アキラ君は (また目薬をさすのかな)と思った。

「あきらぁ。お姉ちゃんね、いいこと思いついたの。眼のかゆみから解放される方法がやっとわかったの。」

 とお姉さんが急に話しかけてきた。

「そ、そうなんだ。姉ちゃんよかったね・・・」

 とアキラ君が言うと、すっと急にお姉さんが立ち上がった。そして洗面台のある部屋へ行ってしまった。

 (なんだよ。姉ちゃん驚かすなよ・・・・)とアキラ君はほっとした。

 

 10分ほど経った。

「あああああ!気持ちいいいいいー!!」と洗面台のある部屋からお姉さんの大きな声がした。

「ね、姉ちゃん?何してるの?」

 おそるおそるアキラ君は部屋のドアを開けた。


 お姉さんは何かを手で洗っているようだ。


「うわぁ!」

 洗っているものが何かわかりアキラ君は声を上げてしまった。

 ぐちょ、ぐちょ、と音を立てながら洗っている。

 

 それは、お姉さんの右眼だった。


 アキラ君は急いでお母さんを呼び、その光景を見てお母さんは救急車を呼んだ。お母さんはその場で座り込んで泣きながら「やめてー!もうやめてー!」と叫んでいた。会社にいるお父さんも急いで帰ってくるらしい。

 救急車が到着し、救急隊もその光景を見て声を上げてしまうぐらい異常だった。


 今、アキラ君のお姉さんは精神病院に入院中らしい。


 

 アキラ君は最後にこう言った。

「眼って伸びるんだよ。姉ちゃんは右眼を引っ張って洗っていたんだ。人間の体ってすごいよね。」と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ