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探偵²

「やう」

「口の中!」

 堀さんに太ももを叩かれた角野さんは口の中のものを飲み込んで改める。

「やあ、君たちも朝食かい。食欲があるようで結構」

 彼らの向かいに座り、朝食をとる。

「今日から捜査ですか?」

「いや? しないけど?」

「へ?」

「探偵だからって依頼もされてないのに推理はしないさ。一銭にもならないしね」

「でも昨日は皆のアリバイを聞いていたじゃあないか」

「それは僕を自由にする為さ。あそこでそのままだったら警察が来るまでみんな隔離さ。その人数を少しばかり減らしたまでよ」

「なるほど」

 ロープウェイが修理されれば警察が来る。少しばかり聞き取りはあるかもしれないが心配は無いというわけだ。

 なんとなく空気が軽くなり、優雅な朝食を楽しんでいると悲鳴が聞こえてきた。

「廊下の方……事件現場があった方からだね。堀ちゃん」

「かしこまりました」


 何事も無かったかのように歩いて行った堀さんは顔を変えずに帰って来て口を開く。

「模様がありました」

「模様? ダイイングメッセージと言うことかい?」

「……どうでしょう。少なくとも私には意味のある模様には見えませんでした。怒った人ののような」

「そもそも何処から?」

「被害者の下からです。灰藤さんが被害者の下から変なものが見えたからと確認したようです」

「灰藤……誰だったかな」

「昨日死体を発見した青年です。近くに住むアルバイトのようです」

「被害者の下にか……模様の状態は?

「恐らくは描いた時のままかと」

「記憶にある限り床に描けるモノは無かったと思うが……血であるならば被害者の服に染み込んでいないのはおかしい。ダイイングメッセージの類ではないか……?」

 大きいベーコンを長い時間をかけて飲み込んだひとねがフォークを二人の間に差し込む。

「怒った人のようと言ったね、それは鬼だったりしないかい?」

「鬼……そう言われるとそんな気もします。鬼瓦のような……?」

「インクでも何でもないもので描かれた鬼の模様、それに殺人事件か」

「ひとね?」

 何やら思い当たったらしいひとねの顔を見る。彼女は「まったく」と小さく悪態をついてからこちらを向く。

「昨日の言葉は取り消そう。どうやら今回も私は探偵をしなければいけないらしい」


 *


「殺人魔」

 念のため模様を確認し、予想が確信に変わったらしいひとねは今回の怪奇現象の説明を始めた。その一言目がそれである。

「殺人魔? 殺人鬼じゃなくて?」

「殺人鬼と言う事もあるけどね。ややこしいから殺人魔だ。それに言うだろう?『魔が差した』って」

「で、今回の怪奇現象はどういった物なんだ?」

 水を飲んで咳払い。ひとねが解説を再開する。

「殺人魔とは人に取り憑く怪奇現象だ。目に見える事はなく、本人に自覚もない

「取り憑かれた人は殺人衝動に襲われる。誰でもいい、どんな方法でもいいからすぐに人を殺したくなるんだ」

 人を殺したくなる怪奇現象。それは達成された。しかしひとねが探偵をしなければいけないというのならば……

「第二の殺人が起きるのか?」

「ああ、時間が経てば殺人衝動は復活する。放っておけば三も四も起きるだろうね」

「どうすれば解決するの?」

「単純さ、その犯行方法を死因を含めて言い当てる。必ずしも犯人を見つける必要はないが、普通の事件と基本的になんら変わりはない。そういう訳でそちらにも協力をお願いしたいのだけれど」

 角野さんに目が向けられる。

 当然のように始まった解説だが、角野さん達からしてみれば子供の妄想話なのでは……?


 しかし角野さんは笑い飛ばす事なく鋭い目つきでひとねを見る。

「いくつか話をする。矛盾点を指摘し、もしその矛盾を解消しうる怪奇現象があるならば上げてほしい」


 *


 ひとねは角野さんが出した話の矛盾点を全て指摘し、幾つかの物には怪奇現象を添えた解決をして見せた。

「あのう、なんの話なんです?」

 完全に置いていかれた下里が聞くと角野さんは目の鋭さを捨て、軽快さを取り戻す。

「僕が依頼を受けた事件の話さ。犯人の自首などで解決を見せたが、どう考えても解消しえない矛盾が残った事件。彼女はそれに怪奇現象を添えて解消してみせた」

「と、いうことは」

「ああ、僕たちも協力しよう。全員が死んでホラーよりのミステリになるのはごめんだからね」

「じゃあ早速現場に……」

「まった。それは数時間後にしよう」

「どーしてですか?」

「君たちにまたあの死体を見ろというのは流石にいけない。その部分の調査だけは僕たちに任せて欲しい」

「なるほどです。お気遣い感謝です」

「終わったら堀ちゃんに呼びにいかせるよ」

 席を立った角野さんは事件現場に向かおうと数歩進んだところでこちらに振り向く。

「怪奇事件の先輩としてアドバイスとかあったりする?」

 ひとねは少し考え「今回に限り」と前置きする。

「この事件に動機なんてものは無い。あくまで殺人衝動によるものだ。計画性も何もない、殺した後の事など頭になく、誰かを殺す事しか考えられない錯乱状態と言っていい」

 一呼吸おき、ひとねは続ける。

「簡潔にいえば、動機なき殺人というわけだ」

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