エピローグと次なるプロローグ
「いやあ、助かった。あのまま朝までとなると正直キツかった」
「いえ、でも恩があるというのならば一つ」
ひとねは下里のポケットに手を突っ込み、一枚の紙を取り出す。
「期限切れのコレを会長特権で誤魔化してほしい」
紙を開いた会長は「なるほど」とそれを鞄に入れる。
「ああ、確かに受け取った」
*
部員申請書の提出から時は流れ、部屋にいても太陽が眩しい季節になっていた。
首を振る扇風機について回っていた下里が突然机を叩いた。
「合宿です!」
「……は?」
「合宿ですよ、部活と言えば合宿でしょう!」
我々は図書部である。
「図書館巡りか?」
「いえ、バーベキューとかしましょう。ロッジとかいいですよね」
「つまり旅行に行きたいと」
「そういうわけです」
俺は別に構わないがそういうアウトドア行事、ひとねは……
「私は大丈夫だが、旅費は問題ないのか?」
おや? どうやら行く気ではあるらしい。
ひとねの質問に下里はなぜか悪役のように笑う。
「ひとねちゃんも先輩も、心配はいりません。我々図書部にも部費というのがあるのですから! まあ、少々は自腹になりますけど」
「……なら、いいんじゃないか。計画は任せるよ」
「先輩はもちろんオーケーですよね、助手ですもの」
「後半部分の論理性はわからないがオーケーだ」
「ひゃっほう!」
人よりも跳躍力のないジャンプを見せ、下里は嬉しそうに拳を天に突きつける。
「さあ、怪奇合宿の始まりですよ!」
「不吉な事を言うな!」