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三
「どうして、これ、調べてるの?」
向かい側に座ったままの彼が一番初めに聞いてきたのは、それだった。
自然と視線が窓を向いた。
「……私、いじめられてるの。」
相手は黙って聞いている。
「いじめられた時は驚いたわ。いじめられた事がないからって言うのじゃなくて、それ以前に小学校の頃は、みんなと会話したことが無かったの。」
相変わらず黙った口は、まだ開かない。
それに甘えてか、私は続ける。
「だから、何もした覚えがないのにいじめられた時は凄く驚いた。だからね、自分で調べて、自分で何とかしようと思ったの……です。」
思わず先輩に対する敬語が崩れていて、慌てて付け加える。
彼は、敬語じゃなくても良いんだよ、と言って、
「僕も、そうだよ。君と同じだ。」
と言った。
「同じ……?」
「うん、今、一人だ。」
彼も同じように、窓の外を見た。
「君、どう? もし良かったら、僕と友達にならないかな。」
相手の手が伸びてくる。
それに私は、
「友達……なら……」
と、手を握った。
彼の手は大きくて、何だか安心できた。