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 放課後、図書館へ行く。

 放課後。

 いつも通りに鞄に教科書を詰めて机に置いた私は、誰にも挨拶をせず、クラスメイト全員が教室を出ていくまで、椅子に座っていた。

 

 四時、空はまだ蒼い。

 夏は好きじゃない。

 明るくなるのが遅い。

 具体的な理由は無いけど、ただ、それだけ。

 

 最後に、休み時間にもよく騒いでいる女子のグループが出ていってから、席を立って鞄を肩に掛ける。

 ゆっくりと三階を歩く私が窓から外を見ると、スカートを短くして、お洒落をして、お互いが大好きな友達と校門を出ていくクラスメイトの後ろ姿が見えた。

 それでも私はそれをスルーして、図書館へ向かう。


 友達なんていないから。

 誰も私に話しかけてくれない。


 それでもいい。

 私の居場所は、ちゃんとあるから。

 例え教室が残酷で、息ができないくらいに苦しくても。

 私に、ここにいても良いんだと、何も言わずに受け入れてくれる場所があるから。


 

 放課後は幸せだ。

 自由だし、クラスの人達にいろいろと言われる事も無い。

 学校の敷地内に建てられている図書館に入ると、涼しい空気と一緒に、静寂が私を包む。

 

 「こんにちは。」


 図書館の司書さんに挨拶をして、借りていた長編の小説を返す。


 「はい、有り難う。」


 そう返してもらえるだけでも、心の中の、灰色のモヤモヤとしたものが薄れていった。

 鞄を持ったまま、周りに人のいない席を探して座り、足下に置いた鞄から小説を出して読む。

 時々勉強をしたりするけれど、今日は本を読みたい気分だった。


 

 しばらくして、どれくらいの時間か小説にのめり込んでいた私は、図書館のドアの閉まる音で、ドアの方に顔を向けてしまう。

 クラスメイトの男の子達。


 「うわ、アイツ浅倉じゃね?」


 「こんなとこに居たのかよ。」


 薄々と会話が聞こえてくる。

 嫌なら関わらなければ良いのに。

 見なければ、相手にとっても、もっと良い事なんじゃないかしら。

 そんな男の子達なんか無視して、小説に目を戻す。


 「無視したし。」

 

 「うわー、逃げてんの? ダサ。」


 都合の良い事ばかり言う。

 教室で私が話しかけようとしたら無視をされたから、無理に関わらなくてっも良いんじゃないかと、関わる所を少なくしてあげているのに。

 強引に関わってくるのは、そっちじゃない。


 「閉館でーす。」


 いつの間にか六時を過ぎて、図書館は閉館時間になった。

 もう終わってしまうのか。

 苦しい時間はなかなか終わってくれないのに、楽しい時間はすぐに過ぎる。

 

 小説をしまい、鞄を肩に掛けて、門を出る。

 後は電車で帰るだけ。

 電車も少し苦手。

 人が沢山いるし、一緒に乗っている人と目が合うと、この人も私の事を嫌な様に思っているのかと、勝手に考えてしまう。


 こうして私の一日が終わっていった。

 今日も同じように。

 明日も、きっと同じように過ぎていく。


 そして明日も。


 私が一人なのは、変わらないのだろう。

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