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【七話】 少年、無双する

話しとは関係ないです。


話しの区切りがなかなかつかず、珍しく5000字を超えてしまいました。ご了承ください。


今回はドラグの謎が垣間見える回です


追伸、今日だけで一万字書いたのですが、こんなにPCで文字打ったことがなかったからか、左手の小指と薬指の間が痛くなりましたw

書いていれば慣れますかね?w

========================================


「すまない、少し取り乱した」

「うん、びっくりしたよ」


 数分ののち、冷静さを取り戻したミユはシャルとドラグ相手に頭を下げていた。


 どうやらミユはシャルのあまりのかわいさに跳びついてしまったらしい。おそろしや、美少年の魅惑。少女をここまで変えてしまうとは。


「それで、武器の件なんだけど」


 ドラグが話を戻す。


「シャルはどんなのがほしいんだ?」

「ん~、まだ決めていません。自分に何が合うのかもわかりませんし」


 どうやらシャルは、これといって武器を決めたことはないようだ。


「そういえば森であったあの時、武器もってなかったよね?」

「はい、バグベアーの前にグリーンドラゴンを倒したのですが、その時持って行っていたナイフが折れてしまって・・・」

「まじか・・・」


 つまりは、半分ドワーフの血が流れているシャルの怪力にナイフが負けて、刀身が折れてしまった、とのことらしい。見かけによらない怪力の持ち主である、この美少年。


「となると、安定は鉄の棍棒あたりか、それかよっぽど丈夫な武器ってことになるけど・・・」

「すまない、鉄の棍棒は持ち合わせていない」

「そりゃここ鍛冶屋だもんな」


 鉄の棍棒はいわば鉄の塊である。これは正直に言うと、鍛冶をする必要がないものなのである。鈍器専門の店に行けば、それなりに技術を使ったものがあるのだが、その技術は鍛冶とは少し離れたものなのだ。


「丈夫な武器ならたくさんある。なにせ私の武器だからな」


 ドラグとシャルの目の前で腰に手を当て胸を張るミユ。自信満々である。


「本当?」


 そういってドラグは自分の左にあった両手剣を見る。


「ん?ミユちゃん、これいくら?」

「7500ペレル」

「安いな・・・」

「?食費半月分になるのだが?」


 どうやらこの娘、金銭に疎いようだ。


「ふつう片手剣はもっとするよ、くわしい値は分からないけど・・・」

「だいたいギルド支給の安物でも10000ペレルはします」


 そういって口を開いたのはシャルであった。


「両手剣はまず、ナイフなどの初心者向けの武器に比べて材料費が多くなります。これは当然です。

 そしてナイフに比べて両手剣は作るのに手間がかかります。大きさも違いますし、これも当然ですね?

 そうすると、材料面でも仕事面でもお金がかさみます。必然的に両手剣は、ギルドの量産型でもその程度の値段になってしまうんです。それを7500ペレルなんて破格です。なぜ買われていないのかが不思議なくらいです。」

「シャル、ハイスペック!」


 どうやらこの美少年、見かけによらず武器防具面の金銭感覚が優れているようである。


「それにこの剣、悪くない。そこら辺の鍛冶師よりもいいもの持っているかもしれないよ」


 ドラグもそういう。


「わかってくれるか!えっと・・・」

「ドラグ。ドラグ・ベンっていうんだよ。17。一応剣士で、前は冒険者だったよ」

「ドラグっていうのか。私はミヨンド。ミヨンド・ディッシュ。ミユと呼んでくれ」

「わかったよミユちゃん。それにしてもいい剣だね」

「だろう?私の自信作の一つだ」


 今にもエッヘンとでも聞こえてきそうな口調でそう言うミユ。


「うん、本当にいい剣だ」


 このいう両手剣は基本的に重くて、切れ味が悪くすぐにダメになってしまう。基本的に叩き斬るものなので、そこまで切れ味は追及していないものなのだ。途中からはほぼ鈍器と化し、それでも使えなくなったら買い替えるという感じで使われていくのが両手剣。

 しかし、この両手剣の切れ味はすさまじい。まっすぐな剣筋、輝く刀身。触れたものをすべて切り裂いてしまいそうだ。


「私の師匠が言っていた。『武器は使い捨てだ。そんなのわかってる。でも、せっかく生まれてきたこいつらには、使い手の半身として選ばれ、そして長く生きてほしいんだ』。私に自分の刀を見せながらいつもそういっていた」 

「いい師匠だね」

「あぁ」


 ミユは遠い目をしながらそういった。


「師匠は?」

「私が13になると同時に、この店を私に預けてどこかへ行ってしまった」

「そうなんだ・・・」


 きっとものすごい名匠なのだろうとドラグは思った。




 そんな話をしながら店の商品を見ていると、唐突に店の扉が開いた。


「また来たよ~、ミユちゃ~ん」

「えへへ、相変わらずいい格好してんなぁ」

「あ?なんだ、めずらしく客入ってんのか・・・って、ガキとチビじゃねえか!さすがは貧乏鍛冶屋!ギャハハハッ!」


 扉から入ってきたのは三人の男冒険者だった。

 その姿からして、この街周辺ではそこそこ強い方だろう。上の下くらいか。

 一人の男は両手剣、一人は斧、一人はメイスを装備し、皆防具まで着込んで完全装備だった。これから探索にでも出かけるのだろうか。


 その三人に対してミユはあからさまに嫌そうな顔をして


「またアンタ達か・・・」


 と言った。


「だれ、あの人たち」

「いつも店に来る、いけ好かないやつだ」

「なるほど」


 どうやら度々ここに来る迷惑な客らしい。その三人は一様にゲスな表情をしていた。


「ミユちゃん、武器ゆずってよぉ~」

「お前たちには売らんと何回も言っているだろう!」

「そういわずにさぁ、今俺たち探索から帰ってきて換金したばっかだからコレはいっぱいあるんだよ」

「いくら積まれても売らん」


 どうやら完全武装は探索の直後のためだった。

 真ん中の男がわらいながら、右手で親指と人差し指を中指で擦るジェスチャーをする。これは金のサインだ。


「そういいながらも、お金に困ってるんでしょ?これも俺らの良心だからさ~」

「うっ・・・!」


 ミユの反応からすれば、どうやら図星らしい。

 まぁ、ぶっ飛んだ金銭感覚の持ち主で、さらには店には客がまともに来ていないとなると、剣を打てば打つほど赤字になってしまうのが当然。


 ミユが自分の信念と現実の懐との境で迷っていると、男は一層ゲスな声でこういった。


「武器が売りたくないならさぁ、ミユちゃんが俺らの相手してよ?お金払うからさ、げへへ」

「「「!?」」」


 ドラグたち三人はその言葉を聞いて目を見開いた。


 そしてミユはまたしても悔しそうにうつむく。やはりこいつらは私を鍛冶師でなく、女としてかっているのだ、と、思いながら。

 そしてシャルは、その言葉に怒りを覚えながらも目の前の冒険者という存在におびえていた。


 しかしドラグは。


「おい、お前、ミユちゃんが困ってるだろうが」


 その三人にくってかかった。


「ドラグ!?」「ドラグさん!?」


 二人の声が重なる。

 それもそのはず、実はその男冒険者、街の中の裏社会では知らない人がいないと言われている人物なのだ。実力もあり、名の知れた冒険者だったのだ。


「あぁ?なんだよガキ」


 さっきまでニヤつきながら話していた真ん中の男が、その顔から気持ち悪い笑顔を取り去り、ドラグをギロリと睨んだ。


「お前、俺を『ドン』ピラルフと知ってて言ってんのか?」


 どうやらその『ドン』というのがその男の二つ名のようだ。しかしあいにくながらドラグはそういう情報に疎い。


「知るかよ、お前みたいなむさくるしい男のことなんか」

「ドラグさん、なんか性格が・・・」


 ドラグは感情が高ぶると性格が変わってしまうのだった。


「生意気なガキが・・・!」

「「!」」


 ピラルクが左腰に帯刀していた両手剣に手を置く。

 その行動に、シャルとミユは身構える。


 なにせこの街では、ピラルフは上級者なのだ。鎧を着こみ、強そうな両手剣を持った、巨躯の冒険家。そんな男が目の前で剣を抜こうとしているのだ、無駄だと知っていても身を守ろうとせずにはいられないだろう。


 しかし、ドラグは依然としてピラルフを見据えてただ立っている。


「へぇ、怖気づかないたぁ、いい度胸だな、クソガギ」

「そんなクソガキにまんまと激情してるあんたはそれ以下だな」

「なんだと!?」「ドラグさん!」


 シャルの制止が入ったが時すでに遅し、ピラルフはついにその両手剣を抜いてしまった。


 ミユはシャルをその両手に抱きながら目を瞑り背を向ける、そしてついに


「死ねぇーーーっ!」

「ドラグさん!」


 キィィ――――ン


 ピラルフの剣がドラグに振り下ろされてしまった。

 ミユが目を開けるとみるも無残な姿に変わり果てたドラグの姿が血だまりの中に・・・


 なかった。


「んなっ!」


 ミユが目にしたのはあまりにも信じられない光景だった。


 ピラルフの刀身が、見事なまでに折れていた。真ん中のあたりで。


「て、てめぇ、何しやがった!?」


 興奮気味のピラルフ。その後ろにいた男二人も、その信じられない光景に目を見開いている。


「俺は別に何もしてねぇよ。その剣はお前が折ったんだ」

「なに!?」


 何を言っているかわからないといった顔をするピラルフにドラグは言葉を付け足す。


「お前は剣筋ブレブレだし、そもそも剣の振り方が成ってない。そんな拙い技術で今までよく生きてたな。大概、レベルに頼ってきたんだろう?」


 ドラグは淡々と話す。そして一言


「まぁ、そんななまくらじゃ、お前は傷一つつかねぇけどな」

「本当に何もしてねぇのか!?」

「だからそういってるだろう?」

「馬鹿な!この武器はこの前買ったばかりだぞ!」

「新しい武器は強いって考えている時点でもう弱いよな。使い慣れした剣の強さをわかってないんだから」

「なんだと!?」


 ドラグの挑発によってピラルフは大激怒。もう既に収拾はつかなくなっていた。


「きっとあの剣が思ってたよりボロかったんだ。そうにちげぇねぇ!お前ら、殺っちまえ!」


 ピラルフはどうにもドラグが何もしていないということを信じられないでいた。なぜなら、剣の状態が万全でいてかつドラグが何もしていないとなると、それはつまり、ピラルフの攻撃力+剣の攻撃力がドラグの防御力を下回ったということになり、それはドラグのようないかにも駆け出しみたいな少年が自分よりも数段上のレベルであるということの証明になってしまうからだった。


 ピラルフの合図で後ろの斧持ちとメイス持ちの男二人がドラグに跳びかかる。が、しかし。


 ガキーーン!ボキィッ!


「うおっ!」「なにっ!」


 その攻撃はドラグに対して傷一つ与えることはなかった。

 そのメイスは弾かれ、斧に至っては柄が完全に折れていた。


「「・・・・・・」」


 武器が生身の人間にぶつかって壊れるという現実味を帯びない光景に言葉をなくすシャルとミユ。


「だから、ホントに何もしてないって」


「そんな・・・そんなわけあるか!俺はもう何年も冒険者やってんだぞ!?それがこんな・・・こんなつい最近まで鼻垂らしてママにすがってたみてぇな乳臭ぇガキが俺よりレベルが上だと!?ありえねぇ!そんなのあるわけがねぇ!!!」


 ボゴォン


 現実を受け入れられないでいるピラルフ。そうして地団駄を踏んだ時、店の床が割れた。

 すると次の瞬間、


「・・・おい」

「うぐっ!?」


 ドラグが目にもとまらぬ速さでピラルフの首襟を左手でつかみ、その巨体を軽々と持ち上げる。

 突然のことに驚いているピラルフと男2人。その三人にドラグは恐喝を入れる。


「てめぇら他人の物ぶっ壊してタダで済むと思うなよ?しっかり落とし前つけな。そうしねぇと・・・」


 ドラグはその左腰にぶら下がっていた一見普通の片手剣に手をかける。そして、ほんの少しだけ鞘から出した瞬間、すこしだけのぞかせた刀身からものすごい勢いで魔力が噴き出してきた。

 魔力は時や性質によって色を変えるが、基本的に透明な煙のようなものだ。

 

ドラグの剣から出てきたものは『紫色』。それはつまり、


「まさか・・・闇魔法!」

「「!?」」


 冒険者たちは一気に顔から血の気を引かせ、色を青くする。


 彼らはここでようやく気付いたのだ。自分たちはとんでもない奴に喧嘩を吹っかけてしまったのだと。


「ま、まっでぐれ、おどじ前はづげ、る・・・」

「どんな?」

「いま、もっでるがね、ぜんぶ、おいでぐ。ぎんが、ざん、じゅう、ばいだ」


 首元を絞められ苦しそうなピラルフ。どうやら金で許してもらう算段らしい。銀貨三十枚、30000ペレルだ。


「どうする?ミユちゃん?それで許す?許せないならやっちゃうけど?」

「!?」


 突然話しかけられたミユは目を見開いき、身を震わせて驚いた。


 そして次の瞬間には目の前の少年が怖くなった。「やっちゃうけど」。その言葉にどんな意味が含まれているのか。ミユにはたやすく想像がついた。そして思った。目の前の少年はやりかねないと。


 緊張と恐怖で口から言葉が出なかったミユは首を縦に振った。


「?それは許すってことで言いの?」


 首を大きく縦に振るミユ。


「ミユがそれでいいなら、いいよ」


 そう言ってドラグは剣を鞘に納め、ピラルフから手を放した。


 引いていく紫色の魔力。一気に場の緊張がほぐれる感覚。二人の男は座り込み、ピラルフは恐怖のあまり腰を抜かして立てないでいた。


「「ぷはっっ!」」


 シャルとミユに関しては緊張のあまり無意識に息を止めてしまっていたようだ。


「さ、お金おいt・・・」

「ば、ばけものぉーーーっ!」

「あ、おい!」


 三人の男は腰にぶら下げていた貨幣の入った小袋を三つおいて、扉から走り去ってしまった。


「なんなんだあいつら、謝りもしないででていきやがって」


 腰に両手を当てて起こるその姿は、もういつものドラグだった。

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