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一章【一話】 少年、森ナウ

 ドラグ・ベン

 17歳

 男

 剣士

 備考、女好き


 ここは始まりの街、『イース』。まだ駆け出しの冒険者が集う、冒険者のための街。そこには武器屋、防具屋、道具屋、酒場やギルドなど、冒険者向けのものが数多く立ち並んでいる。

 この街の中心にあるメインストリートでは、冒険を好む荒くれ者たちが、各々の武勇伝やらこれからの狩りの計画やらを話しながら歩いている。そんななかのある者は防具に身を包み、またある者は腰に大剣を携えていた。


 まだ防具も持っていない少年が、ナイフを腰に1本さし、道を駆けていく。


 空は今日も晴れ渡り、人々を照らしている。


 そんな道行く人々の中には、ドワーフなどの『亜人間』も混ざっている。たとえばあの・・・


「うわっ、超美人!」


 ドラグは、道行く人の中で、綺麗な女性や可愛い女の子に片っ端から声をかけていた。


「すいませ~ん!そこのエルフちゃ~ん!」

「・・・私?」

「そうそう!ねぇ、何かお手伝いできることないかな?」

「なんですか急に」

「いやぁ、俺スゲー暇なんだよ」

「いや、知りませんけど・・・」

「あれ?つめたいなぁ」


 そう言いながらドラグはどさくさに紛れてエルフの肩を抱こうとした。


 その瞬間、


「触れるな!」


 エルフの雰囲気が変わり、持っていた杖を一振り。すると突然、ドラグに向かって突風が吹き荒れた


 魔法。戦闘において切り札となる攻撃、防御及び回復手段


ドラグは遠くまで吹き飛ばされ・・・・なかった。


「ごめんごめん、急に触ろうとしたら驚いちゃうよね。ごめんごめん」

「え、えっ?」


 エルフはドラグが吹き飛ばなかったことに混乱しているようだが、ドラグは無視。何せ、ドラグはLV999なのだから。


「それでさっきの話なんだけど・・・」

「っきゃぁぁぁーーーーーっ!」

「あ、ちょっと!?」


 エルフはドラグの得体の知れなさに、悲鳴を上げて逃げて行った。全速力で。


「はぁ・・・」


 こうしてドラグは、本日13度目の敗北に帰した。

 走り去っていくエルフの背中を見届けながら、ドラグは、その慣れ始めた敗北感に打ちひしがれていた。


「格好がダメなのかな?」


 ドラグは、身長177センツ、冒険者としては小柄だがこれといってちびというわけでわないだろう。

 髪の毛は目に入ったりしないような程度の長さに自分で切っている。ちなみに色は基本黒だが、後ろ髪は赤くなっている。

 顔も、悪いわけではないだろう。

 ただ、見た目が、とにかく弱そうなのだ。

 防具は装備しておらず、黒いシャツに茶色いコート、下は黒のズボンに黒のブーツ。武器は見た目普通の片手剣1本である。一見、そこらへんにいる初心者と変わらない格好。この姿で「お手伝いさせてください!」といっても、サポーターとしてさえ雇ってくれないだろう。

 この一見普通の片手剣が、ある名工の作ったものだったりするのだが・・・。


 もう一度だけため息をつきながら、ドラグは右腰に提げていた小袋の中身を確認する。


「そろそろ限界か・・・仕方ない、稼ぎに行くか・・・」


 そして俺は、街の中心とは反対の方向へ足を向けた。


~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~


 『オークの森』

 オークという豚のよう二足歩行モンスターを中心とした下級モンスターが住処としている、比較的明るい森である。

 この森は、まだ出現するモンスターが弱いため、冒険者たち、とくに駆け出しの初心者の『狩場』として整備されている。

 木はある程度伐採され、道もそれなりにきれいだ。

 

 ふとドラグが横を見ると、先ほどメインストリートを駆けて行ったナイフの少年が、初遭遇のオークをやっとのことで倒したところだった。また一人の男が、冒険に、より一層惹かれた瞬間である。ドラグは心の中でおめでとうと言った。


 ドラグが向かっているのは、いわば、ドラグにとっての「いつもの狩場」だ。森を奥へ、さらに奥へと進むとあまり知られていないが、人の手が入っていない、美しい湖がある。その湖の周りには果物のなる木が多く生えており、その果物が、モンスターたちの食料となっていた。

 

 つまりこの湖周辺は、モンスターたちの『食料庫』となっていた。


 『食料庫』には森中のモンスターたちがやってくるため、必然的にモンスターとの遭遇率が高くなる。


 道中で5、6体のモンスターを葬りながら、ドラグは目印のつけてある木の前に立つ。この木は言ってみればこの『食料庫』の中心である。つまりは、一番危険な場所。

 そんな場所でドラグが懐から取り出し、地面に放ったのは、


『餌』


 それは、恐ろしくて凶暴なモンスターを引き付けるための道具。ただでさえモンスターとの遭遇率が高い場所でこんなアイテム(実は自作、効果抜群だったりする)を使おうものなら・・・


「グゴッ」「ブヒッ」「キシャ―ッ」

「「「ッオォォォォォォーーーーーー!!!」」」


 当然、大量のモンスターに囲まれるだろう。


 どこに隠れていたのやら、ぞろぞろ、次から次へと出てくるモンスター。

 あっという間にドラグはモンスターに囲まれてしまった。


「おぉ・・・今日はかなり集まったか?1、2、3・・・・・200?」


 まだまだ後からきているが、すでに全方位、見渡す限りモンスター状態。傍から見たら絶体絶命の危機的状態だ。だが


「よし、殺るか」


 腰元に携えていた片手剣を、鞘からゆっくりと抜く。

 そしてここから、容赦ない一方的な狩りが始まる。


 そういうとドラグは目の前のモンスターとの間合いを一蹴りで殺し、反応できないでいるオークを一閃、そこから横にいたグリーンドラゴンの首を刺殺。振り向きざまにウルフを斬殺し、そこから斬り返しでオークを2匹同時に屠る。


 次から次えと増えるモンスターの数。しかし、それに負けないほどのスピードで、ものすごい数のモンスターを灰に変えていく。


 モンスターは生命活動を停止させると灰へと姿を変える。モンスターは、もともと『魔界』からやってきた生き物で、『人間界』で活動するには、少々の魔力を使っている(らしい)。

 生命活動を停止させると、魔力供給が止まり、体の形状を維持できなくなり、灰に変わる(のだそうだ)。

 

 一斬一殺。剣を左手に持ち替えたり、蹴りを入れたりしながら、淡々とオークたちを葬っていく。常に灰があたりを舞い、美しい雪のようにドラグを包んでいる。


 気づけば、残りのモンスターはオーク3体を残すのみとなっていた。

 多くの同胞が死んでいくのを目の当たりにしても、襲いかかってこようとするオーク。知性がないと見える。可哀想なものだ。


 ドラグはその一番左の1体に向けて高く跳び、その体を縦断、その刃を右へと振り、2体目の体をぶった斬り、その向こうにいた3体目のオークに刺突。オークは目を大きく開いた後、灰となり、土へと還って行った。


「512・・まぁ、こんなもんか。やっぱたまには体動かさないと腕が鈍っちまうよな~」


 そういいながらドラグは土の上に落ちていた『オークの牙』を拾い、バックパックに入れた。


 死んだら灰になるモンスターであるが、一定の確率で体の一部、もしくは所持品が灰にならずに残ることがある。これを『ドロップアイテム』と言って、これを道具屋などの店に持っていくと買い取ってくれるのだ。冒険者の直接的な収入源である。


「これだけあれば、2日は3食分食えるかな?」


 バックパックにドロップアイテムを詰め込み、ドラグは帰路についた。

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