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ファンタジーショートショート:オーク

作者: ウーフー

 オークといえばずんぐりと太った体に理性の欠片も無い眼差し、知性もあまり無く食欲、性欲、睡眠欲の三大欲求のままに生きるというモンスターである。行動パターンもほとんど似たり寄ったりで、旅人を襲ったり村を襲撃して食料や女子供を攫っていく。そしてそれが発端となり、冒険者や国の兵士達によって討伐されていく。よほどの事が無い限り増えもせずしかし繁殖力も凄まじく異性であればどんな生き物でもほぼ子を成せる為絶滅にはならないそんなモンスターであった。

 そんなオークの中にあって1匹だけ変わり者が生まれた。その目には理性があり、また知性も感じられた。

「こんな生き方をしていれば近い将来討伐されるだろう。俺はまだ死にたくない!」

そんなオークはとある場所に向かった。略奪した物品の中でも必要ないゴミと見なされた物を一箇所に纏めて捨てている場所であった。

「ここになら…あった。」

そのオークが探したものは”ゴブリンでも分かる!共通語教本”であった。発声の仕方からの独学での勉強であったが何とか人と会話が出来るレベルにまで到達した。

 次に思い立ったのが己の生活である。そのゴミ捨て場にあった様々な本を読み漁る内に様々な生き物について書かれた辞典を見つけたのだ。その中でオークは”野蛮で不潔、醜いモンスター”と雑な紹介をされ愕然としてしまったのだ。確かにこのぶよぶよの肉体は多種族から敬遠されるものだし、体をまともに洗ったことなど無かった。

 そこでそのオークは食生活を肉中心から野菜や果物中心に改めた。もちろん自分で食べる分だけでも取るのに苦労するのでそこでもまた本を読みつつ独学で野菜や果物を育て始めた。川で自分の体を洗ってみると川が真っ黒くなった。どれだけ自分が今まで汚れていたのかはっきり自覚できた。体臭にも気を使い本に書いてあった花々を用いて精油を作りはじめた。

 そんなオークが1匹でも居ればそのオークの集落では浮き始める。そんな変わり者のオークは他のオークから様々な迫害を受けた。作物を荒らしたり、オークに直接石をぶつける者も居た。しかしオークはそれには一切リアクションを起こさず黙って耐えた。ある時オーク数匹が武器を持ち、その変わり者のオークに襲い掛かった。しかし次の瞬間倒れたのは襲い掛かったオーク数匹のほうであった。

 変わり者はそんな時が来るだろうと自衛の手段としてまた本から学んだのである。様々な武器の種類から武器の構え方振り方戦いの所作を。勿論本だけで全て学べるとは思っていないながらもそれを基にして毎日素振りを行っていた。勿論それだけでなく己を鍛え上げるため様々な負荷を取り入れたトレーニングにも手を出していた。

 そんな生活を続けたためか、オークの肉体は同種とは比べ物にならないくらいシャープになり脂肪どころか、本当にオークか疑わしい位の筋骨隆々の肉体を手に入れた。もう他のオークは相手にしないことを決めたのか向こうから嫌がらせをされることも無く無視されるようになった。変わり者もオークの集落を避けるように若干離れた場所に居を移した。

 あるときオークの集落に人間の軍隊が押し寄せてきた。近隣の村々を襲っていたつけが回ってきたのだ。あっという間にオークの集落を壊滅に追い込んだ軍はその近くに奇妙なものを発見する。オークのようではあるが、知性の感じられる瞳、鋼のような肉体。人間のように畑も作っているのだ。最初はオークはオークと数名の兵士が襲いかかった。しかしオークはそれを木刀一本で叩きのめしたのだ。

「大丈夫だ。命までは取っていない。」

オークが手加減したのにも驚いたが、人間の言葉まで発するとその隊は混乱に陥った。そしてそれが軍を率いていた将軍にまで話が行き、将軍はオークに尋ねた。

「君は、他のオークとは違うようだが君の欲求は何だね?」

オークは暫く考え込んで答えた。

「昔は狩られたくない一心で。今はもっともっと学びたい知識欲が一番かも知れぬ。もう辺りの本は全て読みつくしまった。」

それに興味を覚えた将軍はそのオークを国にまで連れて行き、学ばせることになった。

 そのオークが紆余曲折、様々な困難に立ち向かいながらその国の英雄になるその第一歩であった。

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