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09

「何の用だ?」

「これ以上の蛮行は控えて頂くよう、お願いに上がりました」

「お願い?無数のドラゴンを供に連れてか?」

「はい。お願いを聞いて頂けない場合は、無理にでも出て行って頂きます」

「面白い!やってみるがいい!」

「・・・では」


レメスが恭しくお辞儀をすると、アッシェの目の前に火竜が降り立ち、口から業火を吐き出した。


「そんなもの!目晦ましにしかならんわ!」

「はい。目晦ましで御座います」


背後からレメスの声。振り返ると、全身を岩の様な外殻で包んだドラゴン・・・

オルメドが前足で砂を蹴っていた。

オルメドの突進がアッシェを吹き飛ばすが、その代償として自慢の外殻が砕ける。


「げぇっ!こいつ、ワシより硬いだとぉ・・・!」


起き上がろうとするアッシェの足に地中から現れたミミズのように

長い体をしたドラゴンが絡みつく。

すかさず巨大な顎を持ったドラゴンが噛みつこうと襲い掛かる。



代わる代わるアッシェに襲い掛かるドラゴン達。

それを尻目に立ち去ろうとするドラゴンが有った。

「オルメド様?どちらへ?」とレメスが嗜める。

「お、おぉ。レメス。だって、あいつワシより硬いぞ?勝てないぞ?」


最初こそ優勢だったドラゴン達も1匹2匹と蹴散らされ、アッシェを囲んで二の足を踏んでいる。


上空で様子を見ていたドラゴン達も、いつの間にか居なくなっていた。


溜息をつくレメス。普段は好き勝手に生きているドラゴン達で徒党を組んでも、所詮はこんなものか・・・。


「どうしたドラゴン共!次はどいつだ!?」


たじろぐドラゴン達。そんなドラゴン達を掻き分けて何者かが進んでくる。

その者は足元に倒れたドラゴンが死に瀕している事に気付くと傍で立ち止まった。

息も絶え絶えだったドラゴンの傷が癒えてゆく。

それを見届けると、また歩きだし、遂にアッシェの前に立つ。


「また、お前か黒竜」

「あぁ。これで最後だ」


アッシェがラコットの竜玉が光を発している事に気付く。


「それが貴様の竜玉の力か・・・。他者を癒す力とは・・・その禍々しい姿には似合わぬ力だな。その力で傷ついたドラゴンどもを癒すか?」


「残念だけど、ここに居る傷ついた者の全てを癒すだけの力は残っていない。それよりも、災厄の元を絶った方が早そうだ」


眩いほどに光を放っていた竜玉は、その力を納めラコットの胸の中に消えてゆく。


「ははは。そうか、だが、どうやって?」

「どうやってでも倒すさ」

「無策か。何度でも立ち向かってくる姿に少しは感心していたのだが・・・ここまで来ると鬱陶しいだけだ。細切れにして、ばら撒いてやる!」


そう言うとアッシェは右手で左手首を掴む。

そのまま、まるで鞘から剣を引き抜くかのような動作で、左腕を付け根から引っこ抜く。

引き抜かれた左腕は瞬時に剣に変化した。


「頭を垂れれば首を切り落としてやる。楽に死にたければ、そうするが良い」


アッシェの言葉に応えず、咆哮を上げながら突進するラコットをアッシェの剣が切りつける。鋼鉄の剣も跳ね返すはずのラコットの体が、まるで、暖められたバターのように

剣を受け入れてしまう。


「さぁ、バラバラにしてやる!バラバラにだっ!」


猛然と切りつけるアッシェ。

ラコットの再生力が無ければ、言葉通りバラバラになっている所だが、すんでの所で急所を外している。

切り裂かれた箇所が瞬時に復元する為、まるで水を切っているかのようだ。

肉を切らせながらも刀身を掴もうとするが、掴んだ瞬間、指がバラバラになってしまう。

(くっ!近付けない。何とか近づかなきゃ・・・でも、他の場所ならともかく、頭を切り落とされたら、流石に行動不能になってしまう)


ラコットは斬撃を躱しながら思案する。

アッシェの左目は潰れたままだ。左腕は今は剣になって失われている。

やるなら左側だ。・・・と、普通なら思うだろう。

裏の裏をかくドラゴンなんて居ない。と、アッシェも思うだろう。

だから右だ。右から行く!


意を決して、アッシェの左側面に向かって牙を剥いて襲い掛かる。

待っていましたとばかりに剣がラコットの首を目掛けて走る。

・・・が、ラコットが急停止し、それは空を切る。

剣は振り下ろされ、その隙にラコットはアッシェの右側面に移動し、

右腕に噛みつく。

・・・はずだった。


「あれ?」


ラコットの視界が歪む。膝をつくラコット(何だ?何が起きた?)


アッシェの膝が、ラコットの顎を蹴り上げていたのだ。


「惜しかったな。これでも戦神の端くれ。そう言った駆け引きは得意なのだ。さぁ、約束通り、その垂れた頭に断頭の刃をくれてやろう」


アッシェは満足そうな笑みを浮かべながら剣を振り上げた。

しかし、振り下ろそうとするアッシェの手が止まる。

ラコットの背に隠れていたメルレーンに気付いたのだ。


メルレーンの体に刻まれていた無数の傷がひとつ残らず消えている。

メルレーンはラコットの竜玉の力で万全の状態となっていた。


メルレーンはラコットを守るように槍をアッシェに向けて立っている。


「そうか、黒竜の癒しの力で力を取り戻し、背に隠れて、我の意表を突く作戦か。嬉しくなってしまうな。そういうのを見ると。・・・まとめて真っ二つにしてやろう!」


(メルレーンだけでも何とか逃がさなくては!)


何とか顔を上げ、まだ歪みの消えない視界をアッシェの剣に向ける。

アッシェの剣が振り上げたまま止まっている。

良く見るとアッシェの腕に何かが絡みついている。

その先を辿って見ると、先ほど、癒しの力で命を救ったドラゴンが立っている。

そのドラゴンの鞭のようにしなやかな尾がラコットへの処刑を止めていた。


(この機を逃すわけにはいかない!)


ラコットの目がギラリと光る。

両手でアッシェの首を掴み、渾身の力を込める。後ずさりするアッシェ。

腕に絡みついた尾の力も相まって、遂に仰向けに押し倒される。

「ぐぅぅ。離せ下郎が!」剣が何度もラコットの腹部を突き刺すが、ラコットは怯まない。


「瀕死の彼女をボクの力で治した時に思ったんだ。お前に唯一、手傷負わせたのはメルレーンだって。その時、彼女は満身創痍だった。では全力の彼女なら?・・・彼女は凄い。だからボクはメルレーンに賭けたんだ」


「な、何だと?」


ラコットの肩の上に槍を構えたメルレーンがアッシェを見下ろしていた。


「よ、よせ」

「でぃやぁぁぁぁぁぁ!」


絶叫するメルレーン。真っ直ぐにアッシェの左目に目掛けて突撃する。

踏切の際にラコットの巨体が揺らぐほどの力と針の穴を通すような正確な突撃は落ち窪んだ左目の穴を通ってアッシェの頭蓋の内部を破壊した。


「ぎいやぁぁぁぁあ!!あ、あっ!あぎっ!ぎぃっ・・・」


アッシェは苦痛から逃れようと暴れるが、それをラコットが押さえつける。

手にしていた剣を落とし、声にならない絶叫を断続的に上げている。



そして・・・。


「・・・ぁ」


体全体がビクンと跳ね上がったかと思うと、そのまま動かなくなった。


神が死んだのだ。





「おめでとうございます。まさか、人とドラゴンが手を組んで神殺しを成すとは

思っていませんでした」

「あぁ、レメスか・・・。君たちが助けに来てくれなければ無理だったよ」

「その点についてはケラーネに感謝しなくてはなりませんね」

「ケラーネに?」

「はい。今はアリュメット様の館で傷を癒しています。私たちはアリュメット様の館でアッシェを迎え撃つ準備をしていたのですが、あのドラゴンがアッシェがここに来ている事を知らせてくれたのです。それが無ければ私たちは今も待ち惚け、貴方達も無事では無かったでしょう」

「・・・」

「今すぐにケラーネの元に行きたいようですね?」

「え?何で解るの?顔に出てるとか?」

「ドラゴンは意思疎通を思念で行います。貴方は、まだ不慣れな様子。思考が駄々漏れなのです。 ・・・あら、元は人間でしたか。どうりで」

「え?そうなの!?」

「はい。人間と同じく言葉を使うと思ってましたか?ドラゴンの声帯では大した言語は扱えませんからね」

「では、ケラーネの元に一緒に参りましょうか」


「あ、あぁ・・・」ラコットをじっと見上げているメルレーンと目が合う。


「ラコット様?」

「レメス。前に人と話せるかって聞いたことが有ったよね?」

「もしかして、そこに居る方がラコット様の話したい相手ですか?」

「そうなんだ。頼めるかな?」

「はい。結構ですよ。ただ、条件が有ります」

「条件?」

「というよりお願いですが」

「ボクに出来る事なら・・・」

「貴方にしかできない事です。聞き届けて頂けますか?」

「解ったよ。彼女・・・メルレーンとは、どうしても話したいことが有るからね」

「それは、”人間に戻りたい”ですか?」

「はは。それも駄々漏れ? それもあるけど・・・」

「では、通訳を請け負うわけにはいきません。私のお願いは貴方に”ドラゴンで居てほしい”ですから」

「っ!なんで!?」

「その訳は長い話になります。できればアリュメット様の館の方でお願いします。ケラーネの事も気になるでしょうし・・・」


「わかった。でも、メルレーンに一言だけ伝えてくれ」

「解りました」


怪訝な顔をしたメルレーンの前で恭しく礼をするレメス。


「初めまして。私、レメスと申します。ラコット様から伝言を頼まれましたのでお伝えいたします。”ありがとう。メルレーン。君は命の恩人だ”」


「そんなっ!私、私はラコットの力で命を救ってもらったけど、ラコットの方は私の力のせいで、そんな体にっ・・・」

「そんな体とは失礼ですね。訳あって人の姿をしていますが、私もドラゴンなのですよ」

「・・・あっ!あの、ゴメンナサイ」

「”やっぱり気にしていたんだ?”だそうです。彼は、貴女が気に病んでいる事だけが

気がかりだったようですよ?」

「そうだったんだ・・・。そんなおっかない姿になっても、やっぱりラコットは優しいね」

「では、そろそろお暇します」

「えっ!もう?」

「はい。待たせている方が居ますので。それに、黒竜とも今生の別れというわけでは、ありませんよ?」


「そう・・・ですか。そうですよね」

「では」レメスは、そう言ってラコットの背に乗る。

「え?レメス?自分で飛べるでしょ?」

「良いではないですか。私一人が乗っても大して変わらないでしょう?」

「そりゃそうだけど・・・」


ラコットが飛び立つと他のドラゴン達も後に続く。

ラコットが見えなくなってからも、ずっと空を見上げて佇んでいるメルレーンを砦の者達が迎えに来たのは、全てのドラゴンが飛び立ってから暫くしてからだった。


「凄いねラコット。傷があっという間に無くなっちゃった」

「あぁ。凄い力だ。この力がもっと早く使えていたら・・・」

「あっ!あのくらいの傷は本当に大したことないんだよ?ここまで飛んでくるのだって

ちっとも大変じゃなかったんだから。それに昔は、もっと沢山、怪我してたし・・・。そ、それより、私、初めて見たよ。竜玉の光を使えるドラゴンなんて。本当に凄いよ。ラコットは」


「ありがとう」慌てふためくケラーネに微笑みながら、その気遣いに礼を言う。


「ラコット様?そろそろ宜しいでしょうか?」

「あぁ、レメス。今いくよ」


レメスに連れられてアリュメットの待つ広間に入る。

アリュメットがいつものように食卓に着いている。


「ラコット様。アリュメット様に”供物”を」

「あぁ、わかったよ」


ラコットの竜玉の中身がスープ皿に注がれる。

初めは赤黒かった液体が、次第に透き通った緑や青に変わる。

それらが混じりあい、スープ皿に満たされた液体は混沌とした色をしていた。

黙々とスープを口に運ぶアリュメットをよそにレメスが語り始める。


「供物の元は人間たちの感情です。愛情や信頼。歓喜や安心。様々な感情が有りますが、その引き出し方を知らないのです。私たちが唯一、その引き出し方を心得ているのは”恐怖”のみ」


「なんでだよ。ドラゴンだって愛情とか有るんだろう?」

「しかし、種族が違います。姿が。性質が。人間たちは私たちの姿を見れば恐れ、時には襲い掛かってきます。私も人の性質を理解するために人の姿で人の中に紛れたりもしましたが、そこにあったのも怒りや恐怖だけでした」


「そうか・・・そうかもね。確かに街中で石を投げれば、当たるのはそういう感情だ」

「ですが、貴方は我々とは違うようです。供物が無ければアリュメット様は命を繋ぐことが出来ません。しかし、恐怖だけでは、それもままならないのです。それ故にアリュメット様の力は衰え、アッシェの様な神崩れの巨人に付け込まれる始末・・・」


「それでボクに”ドラゴンで居てほしい”か・・・」

「以前の・・・何千年も前に人々から崇拝されていた頃の力を取り戻せればこの地をアッシェの様な者から守る事も出来ます。人間たちの為にもなるのです」


「そういう事なら・・・」

「私は、それを望んでいない」


それまで黙々とスープを飲み下していたアリュメットが口を挟む。


「私は、このままを望んでいる。人間たちがどうなろうと知ったことではない」

「アリュメット様・・・」

「どうなろうとだって?・・・なんだよっ!?神様ってのは皆そうなのかよっ!」

「ラコット様!アリュメット様は・・・」

「レメス、悪いけど帰らせてもらう。さっきの話は無しだ!」

「待って下さい!通訳の件はどうするのです!」

「なんとでもするさ。そうだ!喋れなくたって文字が有る。それで十分だ」

「そんな!アッシェのような輩が、また現れたらどうするのです!?」

「人間だけで何とかなるさ。止めを刺したのが人間だったってレメスも知ってるだろ?」

「ほうっておけばいい。彼の助けは必要ないっ・・・ひ」

「それじゃ、レメス、世話になったね」

「さようなら。黒竜だった人間。ひっく。もう会うことは・・・」

「・・・アリュメット様?」

「人間と関わると、ろくなことが無い。三百年前もそうだった。ひっく。私は人間たちの為に様々な事を教えた。様々な力を使った。ひっ。そうしたら。どうなった?ひっく。私の力を独り占めしようと人間たち同士で争って。ひっく。私は止めようとしたのに。騙して閉じ込めて。ひっく」


「アリュメット様・・・? ・・・っ!スープ皿が空に。あれほど有ったのに・・・まさかいっぺんに飲んだのですか!?」

「え?どうしたの?ボク、帰ってもいいんだよね?」

「百年くらい前もそうだった。ちょっと助けてあげようとして力を見せたら化け物だとか言って。・・・ひぃっく」


「さっきも突然、怒ったりして、体はドラゴンなのに、やっぱり人間だから・・・ひっく。うえぇぇぇぇぇぇん!!」


「・・・泣いてる」


「アリュメット様!アリュメット様ぁ!ラコット様!一緒になだめて下さい」

「え!?あ・・・。え?えーと。アリュメット様・・・?あの、本当は、そんなに怒ってないですよ?だから、その・・・」


「うぇぇぇぇぇん!うぇぇぇぇぇぇぇん!」


「あぁ!この感じ。懐かしい・・・。これです。これ!このお世話せずにはいられない

アリュメット様!私、これを求めていたのです!やはり、思った通りだった!”供物”さえ良くなれば以前のアリュメット様に戻るって信じてました!」


「え?えぇ!?その為?力を取り戻すとか、人間の為とかじゃなかったの?」

「そんなの!私には関係ありません。アリュメット様こそ私の全て!」








「へぇー・・・。あの時、そんな事が有ったの」

「あぁ、大変だったんだよ?レメスは人間の感情が理解できないって言ってたけど。

ボクにはレメスの感情の方が理解不能って感じだったなぁ。

泣きわめくアリュメット様より興奮するレメスの方をなだめる方が苦労したよ・・・。ドラゴンって皆そうなのかな?ケラーネと一緒に居て人間と変わらなく感じるけど・・・」

「そう?私にもラコットが理解できない部分が有るかもよ?まだ見せてないだけで」

「えぇ?そうかなぁ・・・」

「でも、アリュメット様と仲直りできて良かったわね。だって、そのままじゃラコット飢え死にしちゃうもの」

「あはは。でも、次に会った時にアリュメット様の方から謝罪してくれてね。レメスが取り持ってくれたのかも」


「ラコットの”供物”は特別だからね。・・・あ。始まるみたいよ」


2匹のドラゴンの眼下には人間同士の戦場が広がっていた。


「えぇっと、メルレーンはどこかな?」

「あそこに居るわ」


ケラーネが指差す方向には貴族達の圧政に不満を爆発させた反乱軍。

その中心にメルレーンは居た。

長年の圧政による困窮した民草の状況と砦の一件で救国の英雄として一躍有名になったメルレーンの名が短期間で反乱軍の規模を爆発的に拡大させた。

そして今、王国の正規軍を相手に幾度も勝利を重ね、雌雄を決さんとするのが、この戦場だった。


「メルレーンの方が勝つよね?」ケラーネが不安そうに聞く。

「当り前だよ。数だって国軍の倍は居るし、士気だって十分だ。圧倒的と言ってもいいくらいだ・・・。これでくだらない内戦は終わり、やっと、平和なアローニアが見れる・・・」


「そうなれば、アリュメット様も元気になるね!」

「あぁ!もう、突然泣き出したり、怒ったりするのにも付き合わなくて済むかもね」


コテラルの脅威が去った後、直ぐにそうなるはずだった。


その為にラコットは人とドラゴンが争わないようにする為に各地に点在するドラゴン達の元へ飛び回った。


”供物”を集めるのに人を害する必要が無い事を説明したり、ドラゴンを狙う人間たちを牽制したり・・・。


その努力の甲斐も有って、平和な時が訪れたかに見えた矢先に、この内戦が勃発したのだ。


「いや、だからなのかもしれないな・・・」ラコットは思い出す。

ドラゴンの脅威が去ったからこそ、その矛先が次の害悪”貴族”に向いたのかもしれない。


・・・では、その次は?

そこまで考えて、思考を止めた。

その先の事は直ぐに解る。それから考えればいい。

気を取り直して戦場に目を向ける。

・・・おかしい。反乱軍が押されている。

良く目を凝らしてみると、反乱軍の前線の兵達が戸惑っているのが見て取れた。

手にした武器を目の前の敵に向けるのを躊躇っているようだ。

原因は直ぐに解った。


「子供だ・・・」


国軍の前線で戦う兵士たちが年端もいかない子供たちで構成されていた。


「なんで、あんな子供たちが・・・!? ・・・!脅されているのか!」


ラコット達の居るのは戦場が見渡せる小高い場所だ。

だからこそ、子供たちを後ろから弓矢で狙う者たちの存在に気付いた。


「冗談じゃねぇぞ!国軍の奴ら!」

「・・・行くのラコット?」

「あぁ!あんな非道な真似、見過ごせないからね! でも・・・。くそう!あんな真似が・・・あんな真似ができるなんて!」


戦場に向かう黒い脅威は戦場の後ろでふんぞり返っている貴族達に降り注ぐ。


それにより戦線が崩れ、反乱軍は前線の子供たちを保護しつつ、本陣に雪崩れ込む。

それを見守るケラーネが独り言のように呟く。


「苦しそうなラコット・・・。例え敵でも同じ国の人間を牙に掛けるのは嫌だと言っていたものね・・・。でも、もうすぐ終わるよ。この戦争は終われば、アローニアを治めるのは黒竜の加護を受けた女王。そうすれば、人間同士で戦う事は無くなるわ・・・」


ケラーネの竜玉が光っている。その千里眼で彼女は少し先の未来を見ていた。




ドラゴンのスープ。

それは女神の神獣であるドラゴンによって届けられる人々の心。


冷たく黒いスープに沈みかけていた世界は、ひとまず竜になった少年によって救われた。

しかし、この先・・・世界が何色のスープに満たされるかまでは誰にも分からない。

ひとまずおしまいです。

少しモヤモヤします。何かが足りないような。


でも、その足りないものが、分かるような分からないような。

皆さんの感じた事を教えてください。今後の糧にしたいと思います。


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