訪問
「はぁ~」
入学式が終わり、家に帰ると、少女は深くため息をついた。
と同時に、すぐ後ろの玄関でインターホンが鳴る。
――来るのはやっ!
そう思うと同時にドアが開き、飛び出してきた人物に抱きしめられ、少女は後ろ向きに倒れた。
「未理、高校入学おめでとー!」
開口一番にそう叫ばれ、抱きしめられた少女、深貝未理は困惑した。
「ちょ、ちょっと麻衣、やめてよ。大体、入学したのはアンタもでしょ」
未理がそう言うと、柿谷麻衣は「あ、そっか」と言って恥ずかしそうに笑った。
麻衣の天然っぷりにはいつも呆れてしまう。
「まったくアンタは全然変わんないんだから。幼馴染やってるこっちの気にもなってよね」
「あはは、ごめ~ん」
二人同時に立ち上がった瞬間、未理は思わずムッとした。
自分より頭一つぶん上に麻衣の顔がある。未理の身長は約150cm。麻衣の身長はどう見たって170cm以上。男子と比べたって越される方が少ないくらいだ。小さい頃はほぼ同じ身長だったのに、どうしてここまで差がついてしまったのか。
昔から未理は勉強でもスポーツでも、あらゆる面で麻衣に負けたことがない。それゆえに、ただひとつ身長だけが敵わないのを気にしていた。
「ん、どうしたの?」
顔に出ていたのか、麻衣が心配そうにきた。見下ろしながら。
「いや、別に……」
未理が言うと、麻衣は「そう、じゃ上がっていいよね」と訊いた。もっとも、訊いた時にはすでに靴を脱ぎ、未理の部屋に向かっていたのだが。
――返事聞く前に上がってんじゃん。
部屋に入るなり、麻衣は「おやつとかない?」と訊いてきた。
「テーブルの上」
「あ、ホントだ。やった、ポテトチップスコンソメ味!」
いつものパターンなので、ちゃんとお菓子は用意してある。というか、テーブルは部屋の真ん中、目の前にあるのに、なぜいつも気づかないのだ。
「ていうか未理、知ってる?」
本棚にあるマンガを取りながら、麻衣が訊いてきた。
「何を?」
「菊頭高校七不思議のこと」
「あったり前じゃん。ていうか、麻衣がそれ目当てで『面白そう、菊頭いきたーい』とかいうから菊頭にしたんでしょ」
「あ、そっか」
「まったく……」
未理達は高校を受験するとき、一緒の高校に入ると決めていた。二人ともまだ特に将来の目標が決まっているわけでもないし、幼稚園の頃からずっと一緒に過ごしてきたからだ。家も近く、一番の仲良し。お互い口にはしないが、親友だと思っていた。
菊頭高校を選んだのは、二人の家から2キロほどの場所で、歩いて行ける距離であり、学力的にも十分合格できそうな高校だったからだ。
しかし、もう一つだけ理由がある。
未理の母は、実は菊頭高校出身で(そのことはつい最近知ったのだが)、その高校に関するある噂を話してくれたことがあったのだ。
――菊頭高校七不思議について。