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プロローグ





 暗転していた。

 何が?

  

 意識が。


 僕と言う自我を持つ意識。

 そう僕の意識が。

 意識が戻る。


 開いた目に映る景色に僕は混乱した。


「ここはどこだ?」


 先程まで僕は地獄で亡者を苛む極卒のバイトをしていたはずだ。

 なのに何故か今、地獄ではなく現世に居る。


 しかも見知らぬ空の下に。


 スタッ。


 空に顕現した僕は見知らぬビルを見定め、その屋上に降り立った。


『さてな……此処は天国か地獄か或いは異世界か』

「悪ふざけはよせ相棒」

『無明……此の景色をどう思う?』

「……」

『一番近い例えは現世の並行世界という所か』


 相棒の声を聴きなが僕は超高層ビルの屋上から下界を見下ろす。

 高さ七千メートルのビルの屋上から。

 唯の高層ビルではない。

 呪術的な守りを込められた梵字を至る所に刻まれている。

 それだけでは無い。

 ビル自体が鉄タングステン合金製という超鋼材で建てられている事が僕の目には分かる。


 他のビルも同じかと思い周囲を見渡す。

 この一棟だけではない。

 複数の同じ構造を持つビルが所狭しと建造されている。


「うん?」



 影が僕を覆う。

 何かの影が。


 その時だ。

 周囲に響く声が聞こえた。


『ようこそ魔都多村に 我々は貴方たちを歓迎します』


 飛行船だ。

 巨大な飛行船が更に上空を飛んでいる。

 東狂ドーム何個分だろうか?


『仕事をお探しなら多村ハローワークに』


『多村派遣をよろしく』



 飛行船は悠々と過ぎ去っていく。


「多村? 此処が?」

『君の地元の面影は無いな』


 見知ったはずの地元の変貌に僕は目を丸くする。


『これはやはり並行世界と考えて良いかもな』

「何で平衡世界なんかに偶然来てるんだよ僕達」

『分からん』

 

 


 その時だ。


 異常が有った。

 異常が。


 周囲に異常が。


 その周囲には異常が有った。

 異常と言うより異形。

 異形が闊歩していた。


「は?」


 炎を纏った豹。

 蝙蝠の様な羽を生やした鬼。

 などが一緒に飛んでいた。


「プロ野球は何処のファンだい?」

「阪魔タイガーだな」


 大きな顔を取り付けた空飛ぶ牛車。

 羽を生やした女性達。



 闊歩と言うか空を飛んでいるのだが。


「人ならざる者が陽のあるうちから闊歩してるだと?」

『あり得んな』


 元人間とはいえ今の自分は妖怪。

 いや現代妖怪とも言うべき「都市伝説」だ。


 陽の当たらぬ世界に居を移し数年経過したまでは覚えている。



 『都市伝説』という物が有る。




 口裂け女。

 トイレの花子さん。

 カシマさん。

 霊界ラジオ。

 ベットの下に潜む殺人鬼。


 近年生まれた妖怪を扱ったマスコミや書籍では「現代妖怪」と称してる。

 だが僕達一般人ははこう呼び変えた。



「都市伝説」



 ……と。



 都市伝説。

 現代妖怪。

 等と言うべきそれらを。


 古くから存在する妖怪と区別するべく付けられた名称だ。



 その中には少年の風貌を称した「都市伝説」も伝わっている。



 「ラジオを持った災厄を振りまく少年」



 という比較的新しい「都市伝説」だ。



 気が付いたらそこに現れ。

 いつの間にか消え去っていく少年。

 後には悲惨な現場だけが残されていく。

 等と言われ伝わる「都市伝説」だ。



 それが僕だ。


 ならば僕のやるべき行動は決まっている。

 何らかの理由で都市伝説や妖怪が陽のある世界を闊歩してるならそれは僕の出番だ。

 亡者や妖怪に都市伝説達を力で捻じ伏せ服従させ再び夜闇の世界に押し込める。


 それが僕の役目だろう。

 

 地獄の極卒たる僕の。



 まだバイトだけど。


「さあ~~て……ここからがお楽しみの時間だっ!」



 僕の姿が激変した。

 漆黒から赤く変質する絹の様な髪。

 目は一重。

 赤目と白目がハッキリわかれる眼。

 鼻は変身前より更に低く。

 あまり痩せすぎず頬の肉がついていて丸顔。

 肌の色が黄色人種から浅黒に変化。


 そして一番大きく変貌してるのは額から伸びている角。

 悍ましく捻じれた大きな角。


 もう明らかに人間ではない姿。


「悪鬼変身」


 

 鬼。



 悪鬼。



 少年の服を着た鬼。

 ラジオを持った鬼だった。


 今の僕は。

 鬼の手が妖怪たちに伸びる。

 



 筈だった。



 赤い月が顕現した。



 赤い月が。


 澄み切った晴天に。




 その瞬間空気が変わった。



「何だこれは?」

『馴染みのある空気だな』

「おい相棒」

『何だ?』

「この匂い……なじみ深い香りだな」

『考えてることは分かる』

「地獄の空気だろこれ?」

『ああ…見ろっ!』

「まさか……」




 そこに黒い染みが滲んでいた。


「あれ……これ?」


 初めに気が付いたのは近くを歩いていた学生だった。


 染みは何もないとこに顕現した。


 黒く。

 黒く。


 一切の闇を飲み込むような黒い染み。



「まさかこれ……」


 学生らしきの少年が呟いた。

 そこには若干の焦りが感じられる。



 黒い染みは大きな横断歩行のど真ん中で顕現した。

 地上に突如顕現する黒い空間。

 そこから何かが現れる。



「ああ~~」

「ううう~~」

「あ~~」


 白い衣服を着た人影。

 それはユラユラと体を揺らしながら歩く。



 人だ。

 人。



 しかしアレを人と呼んでいいのか。

 眼下から目が無い者。

 胸部から下の肉が無い者。

 左半身が腐ってる者。


 明らかに死人だった。

 死人。


 亡者。



 あの世から彷徨って出てきた亡者だ。


 不味い。


 この状況は不味い。

 

 


「いやああああっ!」

「死にたくないいいいっ!」

「亡者だあああっ1」



 地上は阿鼻叫喚の地獄絵図だ。

 罪を犯した亡者は何故か地上に出ると人を襲う。


 何故か分からないが。


 幸いなら、亡者が出現した時点で逃げ出せば全員助かるのだが。

 普通は、その場で何が起こったか分からず何人か食い殺されてから逃げ始める運命だ……。


 まあ良いか。


『ちいいっ!』

「相棒っ! この地上の亡者共を地獄に送り返す」

『異論はないっ!』


 そうして僕らが地上に降り立とうとした時の事だ。

 


「朧車さん達っ! 民間人の避難誘導を最優先で対処して」

「おうともっ! おばちゃん達はどうする?」

「それは当然っ! 亡者の撃退よっ!」

「流石魔法少女っ!」

「元よ」

「なら魔法マダムだなっ!」

「それいいねっ!」

「マダムで良いんだ」




 力強い声がした。

 近くから。


 炎を纏った豹。

 蝙蝠の様な羽を生やした鬼。

 などが一緒に飛んでいた。

 大きな顔を取り付けた空飛ぶ牛車。

 羽を生やした女性達からだ。


「『は?』」


 僕と相棒の口から唖然とした声がでた。


 何?


 この状況?



「いくわよおおおっ」

「ええっ!」



 地上に急降下する羽を生やした女性達。

 いや。


 現マダムで、元魔法少女と言うべきか。


「がんばれっ!」

「頼むぞっ!」

「いけえええっ!」



 元魔法少女達を応援する異形達。

 炎を纏った豹。

 蝙蝠の様な羽を生やした鬼。

 大きな顔を取り付けた空飛ぶ牛車。


 みんな心の底から応援していた。


「何? この状況?」

『理解できん』



 僕と相棒の唖然とした声が出続ける。


「「「マジカル~~ビーム」」」

「「「ぐああああああっ!」」」



 うん。

 何だろうな此れ?


 ビームの様な魔法で撃退される亡者って何?


 僕らはまだ唖然としていた。

 眼前の非常識に。


 並行世界?



 これはそんな次元の話では無いと思う!


「何だ此れ?」

『何だろうな』





 チャリン。




 そんな僕らを遥か遠くの地上から見上げる人影。

 ママチャリに乗る異形。


 挿絵(By みてみん)



 異形は、そのままママチャリのペダルに足をかけその場から離れていった。






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― 新着の感想 ―
魔法マダム……。 新しい言語を創造しよりましたな……。
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