第7話 夜の輪
焚き火を囲む輪の中で、幼い子たちはすでに眠りにつき、かすかな寝息が残骸の布のテントから聞こえていた。
残ったのは、年長組十二人。炎が顔を赤く染め、影を揺らしている。
アーデルヘイトが火を見つめながら言った。
「……あんたたち三人、どうしてここにいるのか、教えて」
ラシードが短く息を吐き、淡々と答える。
「飛行機に乗ってた。ニューヨークに行く途中で……落ちた」
ざわめきが広がった。
「やっぱり……ニュースの……」
「本当に生き残りが……」
ヒルダが肩をすくめ、小さく続ける。
「私はNGOのお手伝い。だから一緒に」
その口調は冷静に聞こえるが、声はまだ震えていた。
エメは胸に手袋を抱え込み、必死に言葉を絞り出した。
「……父さんも、母さんも……あの空で死んだんだ」
火の爆ぜる音が響く。重い沈黙。
ラシードが切り込む。
「……じゃあ今度はお前らだ。どこから来た? どうして子供だけで?」
子供たちは視線を交わし合い、やがて年長の少年が答えた。
「……街から。ここから五十キロ先の」
「街……」エメがつぶやく。
「親はいない。孤児だ。街じゃ邪魔者扱いだった。だから群れを作った。生きるために」
アーデルヘイトがはっきりと言葉を結ぶ。
「大人なんて、頼れない。私たちには、私たしたちしかいない」
「これからどうするんだ?」一人の少年が尋ねる。明朝ラシードに投降をを呼び掛けた少年だ
名をハキムというらしい
エメは少し考え、真剣な顔で言った。
「飛行機のシステムで水は出せる。でも……食べ物はすぐなくなる」
子供らしい素朴さと、必死さが混じっていた。
ラシードはうなずき、すぐに返す。
「で、お前らは?」
「拾った物資があるから、明日か明後日には街に戻る」
ラシードは舌打ちをして低くつぶやく。
「……それ、もともと俺たちのだろ」
冷静な声だが、苛立ちが滲む。
空気が重くなる。
そのとき、ヒルダがぱっと顔を上げた。
「……じゃあ、一緒に確かめようよ。貨物庫を!」
「貨物庫?」ラシードが眉をひそめる。
「砂に埋まって開かなかった」
「でも今は人数がいる。みんなでやれば開けられるかも!」
ヒルダの声は明るく、火の輪に希望を灯すようだった。
夜明けの発見
子供たちは夜明け前、砂を掻き、瓦礫をどかし、錆びたハッチに群がった。
やがて重い音とともに扉が軋み、少しずつ開いていく。
乾いた空気が漏れ、松明の光が差し込む。
そこに並んでいたのは、整然と積まれた箱の列。
ひとつを開けた瞬間、誰も声を失った。
食料や医療品に混じり、銃、弾薬、装甲板、情報端末――
見たこともない兵器がぎっしり詰まっていた。
「……うそだろ」
「これ……全部武器……?」
コヴァルスキーが震える手で銃を持ち上げる。
「ニュースで見たやつだ。今年作られた最新の銃……。ここにあるの、ぜんぶ新しい兵器だ」
ざわめきが走る。
「じゃあ……救援物資じゃなかったのか?」
「なんでこんなに……」
アーデルヘイトは唇を噛みしめ、真剣な声を上げた。
「……理由はわからない。でも、このまま置いたら絶対に奪い合いになる。だから――あたしたちで見張るしかない」
ヒルダも必死にうなずいた。
「大人に知られたら、すぐ戦争になるよ。だから……ここで秘密にして、私たちで守ろう!」
ラシードは渋い顔をして吐き捨てる。
「……チッ。めんどくせぇ荷物だな。でも、他の奴らに渡すよりはマシか」
焚き火の輪の中で、互いの視線が重なった。
小さな同盟が、この夜に生まれた。




