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流星のエメ  作者: 西谷佳紀
第一部 第一章 エメロン
3/7

第三話 開闢


炎と煙の中で、エメは二つの人影を見つけた。

一人は、隣に座っていた金髪の少女。

もう一人は、前方の席にいた背の高い少年。


奇跡のように──彼らも生きていた。


「……君たちは……?」

震える声でエメは呼びかける。

「無事だったのか……! よかった……他に生き残った人は……?」


少女は煤にまみれた顔で、ただ首を横に振った。

その瞳は、炎の揺らめきの中でなお強くこちらを射抜いてくる。


「……ヒルダ。君も……無事でよかった」

エメは深くうなずいた。

英雄の息子として父の活動に同行してきた日々で、何度も顔を合わせていた相手──

米大統領の娘、ヒルダ。

ただの旅の隣席ではなく、確かに知る相手が生き残ったことに胸が震える。


次に、背の高い少年が重い声を発した。

「……俺はラシード」

煤に汚れた顔に鋭い光を宿し、二人を見渡す。

「……あんたの父さんには世話になった」


父の名が出た瞬間、エメの胸は締めつけられた。

それでも彼は小さく息を吸い、かすれ声で答えた。

「……ありがとう、ラシード」


その直後、ヒルダが一歩踏み出し、炎の向こうを指差した。

「そんなことより……さっきの、あれは何?

空から流星が降ってきたと思ったら……今度は流星が、空に登っていった……!」


息を呑むような問いに、エメは口を開きかけ──だが言葉は出なかった。

左手に残る熱の感触だけが、胸の奥で脈打っている。


「……」

彼はそっと視線を落とし、ゆっくりと首を横に振った。

その仕草には、知らぬふりをしながらも答えを抱え込む苦しさが滲んでいた。


ヒルダはそこでエメから視線を外し、隣の少年へ顔を向ける。

「……あなたも、何か知らないの?」


ラシードは一瞬の間も置かず、食い気味に、素早く首を横に振った。

迷いも逡巡もなく、ただ「何も知らない」という事実だけを示すように。

その反応は、エメのゆっくりとした首振りとはあまりにも対照的だった。


こうして──惨劇のただ中で三人の名が揃い、同時に不可解な謎が刻まれた。


機体の残骸が大きく崩れ、炎が夜空へと舞い上がる。

三人は思わず駆け出し、瓦礫をかき分け、外の空気へと飛び出した。


夜の風が肌を撫でた瞬間、エメは思わず膝をつき、胸いっぱいに息を吸い込んだ。

焦げた煙の匂いすら、今は確かに“生”を示す証だった。

焼けついた肺に冷たい空気が流れ込み、ようやく実感がこみあげてくる。


──自分はまだ、生きている。


震える肩を押さえながら、大きく、もう一度深呼吸した。

その吐息が白く揺れ、夜空の流星群に溶けていく。


見上げれば、暗い天蓋を無数の光が裂く。

流星群が尾を引き、大地へ降り注ぐ。


その輝き、軌跡は

新しい時代の幕開けを告げるかのように──

世界を、そして彼らの運命を照らし出すのであった


同時刻、世界中のニュースの見出しは

『光の礎らが乗る専用機 アラビア半島で消息を絶つ』


この一文が席巻していた

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