第三話 開闢
炎と煙の中で、エメは二つの人影を見つけた。
一人は、隣に座っていた金髪の少女。
もう一人は、前方の席にいた背の高い少年。
奇跡のように──彼らも生きていた。
「……君たちは……?」
震える声でエメは呼びかける。
「無事だったのか……! よかった……他に生き残った人は……?」
少女は煤にまみれた顔で、ただ首を横に振った。
その瞳は、炎の揺らめきの中でなお強くこちらを射抜いてくる。
「……ヒルダ。君も……無事でよかった」
エメは深くうなずいた。
英雄の息子として父の活動に同行してきた日々で、何度も顔を合わせていた相手──
米大統領の娘、ヒルダ。
ただの旅の隣席ではなく、確かに知る相手が生き残ったことに胸が震える。
次に、背の高い少年が重い声を発した。
「……俺はラシード」
煤に汚れた顔に鋭い光を宿し、二人を見渡す。
「……あんたの父さんには世話になった」
父の名が出た瞬間、エメの胸は締めつけられた。
それでも彼は小さく息を吸い、かすれ声で答えた。
「……ありがとう、ラシード」
その直後、ヒルダが一歩踏み出し、炎の向こうを指差した。
「そんなことより……さっきの、あれは何?
空から流星が降ってきたと思ったら……今度は流星が、空に登っていった……!」
息を呑むような問いに、エメは口を開きかけ──だが言葉は出なかった。
左手に残る熱の感触だけが、胸の奥で脈打っている。
「……」
彼はそっと視線を落とし、ゆっくりと首を横に振った。
その仕草には、知らぬふりをしながらも答えを抱え込む苦しさが滲んでいた。
ヒルダはそこでエメから視線を外し、隣の少年へ顔を向ける。
「……あなたも、何か知らないの?」
ラシードは一瞬の間も置かず、食い気味に、素早く首を横に振った。
迷いも逡巡もなく、ただ「何も知らない」という事実だけを示すように。
その反応は、エメのゆっくりとした首振りとはあまりにも対照的だった。
こうして──惨劇のただ中で三人の名が揃い、同時に不可解な謎が刻まれた。
機体の残骸が大きく崩れ、炎が夜空へと舞い上がる。
三人は思わず駆け出し、瓦礫をかき分け、外の空気へと飛び出した。
夜の風が肌を撫でた瞬間、エメは思わず膝をつき、胸いっぱいに息を吸い込んだ。
焦げた煙の匂いすら、今は確かに“生”を示す証だった。
焼けついた肺に冷たい空気が流れ込み、ようやく実感がこみあげてくる。
──自分はまだ、生きている。
震える肩を押さえながら、大きく、もう一度深呼吸した。
その吐息が白く揺れ、夜空の流星群に溶けていく。
見上げれば、暗い天蓋を無数の光が裂く。
流星群が尾を引き、大地へ降り注ぐ。
その輝き、軌跡は
新しい時代の幕開けを告げるかのように──
世界を、そして彼らの運命を照らし出すのであった
同時刻、世界中のニュースの見出しは
『光の礎らが乗る専用機 アラビア半島で消息を絶つ』
この一文が席巻していた




